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外国人学生アルバイトの絶体絶命を救った社長の話

こんにちは。
鬼滅の刃経営研究会です。

以前こんなドキュメンタリー番組を見たことがあります。

アジア系の男性が大きな借金を抱え、何十年も借金を返すための生活を送っていることを悲しげにテレビスタッフに語り、その借金の原因は日本へ出稼ぎに出たことだったというものです。

日本への渡航費を作るために母国で借金をし、日本で働いて返済し家族に楽をさせるはずが、日本で働き始めてまもなく訳も分からず帰国させられ借金だけが残ったというのです。

私はこの番組に出てきた人のように意図せず帰国を余儀なくされる外国人を実際に目の当たりにしたことがあります。

「帰りたくないです」

打ち合わせ室でしばらく沈黙していた外国人学生A(以下、Aさん)が震える声で言いました。彼も大きな借金をして日本に来ており、学業の道半ばで帰国する無念は耐え難いものに違いありませんでした。

お話は数日前にさかのぼります。懇意にしている会社の社長からAさんについて相談がありました。

「新しく雇用した外国人学生なんだが、日本にいられなくなったらしい。どうにかならないか。」

つい先日その会社にアルバイト雇用されたAさんは在留資格が更新できずに帰国しなければならなくなったというのです。

入国管理局からの通知には日本語と英語で
「あなたの在留状況が良好とは認められません」
と書かれていました。

在留状況が良好とは認められない理由は、Aさんが留学生に認められた労働時間の上限を超えて働いてしまったというものでした。

 

外国人留学生は原則週28時間までしか働けない

私「社長、外国人学生の労働時間は週28時間までです。以前、語呂合わせまでしてお伝えしたことがあると思うのですが」

社長「いやいや、うちじゃないよ。前の会社が28時間を超えて働かせていたらしい。」

確かにこの社長の会社は以前から外国人学生アルバイトを雇用しており、その扱いは十分に慣れていました。

外国人学生アルバイトの雇用の仕方はほとんど日本人と変わりませんが、以下の3つを押さえるのが肝要で、社長はそれをきちんと実行していました。

前職でAさんをアルバイト雇用した会社はこういったことを軽視してしまったのだと思います。また、Aさん自身が進んで週28時間を超えて働いたのではないかという見方もありますが、そういうケースは実際は少ないと思います。

 

外国人学生アルバイトの実態

私たちは、外国人がルールを守らないと聞くと、とかく外国ヘ来て好き勝手をする外国人を想像しがちです。

しかし、少なくとも外国人学生の大半は日本で好き勝手出来るような余裕はありません。

日本学生支援機構の平成29年度私費外国人留学生生活実態調査によれば、外国人学生の75.8%が日本でアルバイトに従事しているということです。外国人学生の月の平均収入は146,000円、そして月の平均支出も146,000円(学費を含む)となっており*1、大半がアルバイトをしながら日々カツカツの状況で苦学する姿が浮かび上がってきます。

外国人学生にとって、週28時間のラインは悩ましいもので、超えればAさんのように道半ばで帰国させられ、かといってアルバイトのシフトを減らされたら目の前の生活に影響します。いかに週28時間のラインの近くで働くかが彼らにとって重要なのです。

そして、そのバランス取りは、雇われの外国人学生一人でできるものではありません。必ず雇用をする側の管理と配慮が必要です。

会社は、週28時間の制限を知った上で、シフトを組む権限を持っています。もしAさんが制限を超えて勤務したとすれば、それは会社が制限を超えるシフトを認めたか、労務管理上の不手際があったかのどちらかだと考えられます。

とはいえ、決められた時間を超えて働いたAさんの行為は許されるものではありません。

 

社長の心意気とAさんの顛末

今回Aさんを雇用した社長は、叩き上げでトップに上り詰めた苦労人で、苦学する外国人学生のまじめな働きぶりはどこか社長の心に通じるものがあったのかもしれません。社長は外国人学生アルバイトの仕事への姿勢を普段から高く評価していました。Aさんに対しても同じ気持ちだったのだと思います。

「費用はすべて私が持つので、どうにかならないか。」

当初からそう言い切って私に相談をされた社長の心意気にほだされるように、私も真剣に専門の人を探しました。難しい案件ですから、ただ専門だというだけでなく情熱をもって対応してもらえるような人でなければなりません。多くの知人にあたる中でその界隈で「外国人の最後の砦」と言われる先生に繋いでもらいました。そして、社長とAさんにご紹介しました。

Aさんは先生に良いことも悪いことも正直に打ち明け、謝罪の言葉を口にしてしばらく沈黙しました。そして切実な心の叫びとして震える声で「帰りたくないです」と言ったのです。

Aさんの話し方は正直で、率直で聞く人の心を打つものでした。しかし、先生の横顔からはただじっとAさんの話に耳を傾けている様子だけが伝わってきました。それは現実問題としてAさんの在留資格は既にどん詰まりの状態にあり、本人の話を依頼として扱うかどうかはまた別の話であったためだと思われます。いくつものやり取り、持参した書類の確認の後、最終的に先生がAさんの依頼を受けることにされたのはAさんをサポートすると断言してはばからない社長の存在が大きかったように思います。

「私にできることなら何でもやりますから!」

社長はその言葉の通り、忙しい仕事の合間を縫って先生の指示に従い書類の作成や関係各所への連絡、費用の支払いなどどんなことも対応しました。
その後、先生は細やかな采配でAさんの前職の会社や語学学校等と連携し、入国管理局への申請を代行してくださいました。結果、Aさんは奇跡的に社長の会社で働き続けながら、日本で学業を続けることができるようになったのです。

 

最後に~日本人と外国人との絆~

Aさんが人生の窮地を奇跡的に脱することができたのは、社長の類まれな人徳によるサポートを抜きにして語ることはできません。しかし、その根本にはAさんがひたむきに仕事をし、その姿勢を社長が見ていたという背景があると思います。同じ職場でひたむきに働く姿を見て部下や同僚に信頼を置くことは万人が共感できることだと思いますし、そこに日本人か外国人か、社員かアルバイトかというフィルターはありません。

『鬼滅の刃』においても、仕事を通して相手を認め、信頼するようになるシーンがあります。
主人公の炭治郎は鬼になってしまった妹の禰豆子(ねずこ)を連れながら鬼殺隊の隊士として鬼を倒す任務をこなしていましたが、禰豆子は第三者から見ればただの鬼でした。あるとき禰豆子のことが鬼殺隊の幹部『柱』たちの知るところとなり、炭治郎は鬼を庇った隊士として隊律違反を問われ危うく妹の禰豆子もろとも処分されそうになります。

その場に現れた鬼殺隊のトップであるお館様のとりなしで処分は免れますが、柱たちは納得していない様子でした。
しかし、その後の任務において炭治郎とともに鬼の禰豆子は命をかけて鬼と戦いました。激しい戦いの中で、禰豆子の存在に否定的な立場をとっていた炎柱の煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)は禰豆子の働きをみて彼女を認めるようになります。

引用) 吾峠呼世晴著 集英社 電子版『鬼滅の刃』8巻 第66話 P93

共に任務を遂行する者に人も鬼もない、鬼殺隊の一員であると言います。任務を通して炭治郎と禰豆子を信頼するようになったのです。

職場においてひたむきに仕事をする人を人は信頼し、一員として迎えます。多少の言葉の訛りはあったとしても、それは国境を越えて自然と起こることではないでしょうか。

コロナ自粛後に通常営業となる時期において、またそもそも少子高齢化の日本において、若い外国人学生のパワーは貴重です。これから多くの事業において外国人学生アルバイトが活用され、採用の主な選択肢の一つになっていくと思われます。そのように変わりゆく企業の採用活動において、本記事が外国人学生アルバイトのことを知る一つのきっかけになればと願っています。

*1日本学生支援機構「平成29年度 私費外国人留学生生活実態調査」
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2020/10/seikatsu2017.pdf

著者
鬼滅の刃経営研究会
社会保険労務士 高橋謙一

「鬼滅の刃」という物語は失敗を繰り返しながら学び成長していく中小企業の経営ストーリーそのものであると気づいた「組織と人」のプロが、「鬼滅の刃」を通してビジネスや経営を考察した記事を連載している団体です。各種SNSの総フォロワー数1万超。
創設者 公認会計士税理士 矢崎誠一  社会保険労務士 高橋謙一 

note:https://note.com/kimetsukeiei   Twitter : https://twitter.com/kimetsukeiei

 

 

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