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「教えるのがヘタな人」の4つの特徴

私が訪問した会社の中には、アルバイトを活用している会社がちょくちょくありました。

多かったのは小売やサービス業でしたが、それだけではなく、例えばweb系の企業でも学生のアルバイトが数多く働いており「技能を身に着けたい」という学生が集まっていたと記憶しています。

そのような会社の多くでは、長く勤めたアルバイトが貴重な戦力であり、採用の候補でもありました。
実際、客観的に見て「アルバイトと言えど、厚遇されているな」と感じることも。

しかし、せっかくアルバイトを雇っているのに彼らを活用できていない、すぐに辞めてしまう、といったケースも散見されました。

一体、2つの違いは何から生まれているのでしょう。

参考のため、マイナビによる、大学生のアルバイト実態調査(2021年)を見ると、現在アルバイトをしている学生が、アルバイト先について感じている所感の1位~3位は、

・シフトの融通が利く
・自宅から近い
・やりがいを感じる

という回答です。

出典:マイナビ 大学生のアルバイト実態調査(2021年) https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210428_8699/
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf p23

1位、2位は、仕事の内容ではなく、アルバイトに通う負荷の話で、職場からはコントロール不能ですが、3位の「やりがい」は、企業側の仕事の与え方の話です。

そして、同調査によればそのやりがい実感を支える一番の理由は「自分の成長を感じたとき」です。

 

出典:マイナビ 大学生のアルバイト実態調査(2021年) https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210428_8699/
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf p23

つまり、「アルバイトだからやりがいは不要」ではなく、アルバイトでも仕事をする人にとって、成長実感も、そこから生まれるやりがいも重要なのです。

 

成長実感を与えるのは

では、「成長実感」とは、一体何なのでしょうか。
私が人事コンサルティングをやっていたころ、「成長」とは2つの事を指していました。

一つは、「考え方」の成熟。
すなわち、人間としての思考枠の拡大・成長です。

そしてもう一つは、「スキル・技能」の獲得。
これは、「今までできなかった仕事ができるようになる」事を指していました。

これらは、いずれも「教育」と「実践」によって実現されるものであり、どちらが欠けても「成長実感」は不完全なものにとどまってしまいます。
したがって、優れた「教育係」を適切に配置することが重要でした。

なお、「研修やマニュアルを用意すれば、教えられる人を配置しなくても大丈夫では」という方もいるかもしれませんが、少なくとも、現場での教育を全く不要とする研修やマニュアルを私は見たことがありませんし、おそらく、現実的にも作れないと思います。

現場の状況を細分化し、あらゆる状況に対応できるようにすればするほど、研修やマニュアルが肥大化し、使いこなせないものになるからです。

また、「やりがいを感じるとき」の2番目に、「一緒に働く人から感謝の言葉をもらった時」とありますが、教育係は成長を認め、彼らを鼓舞する役割も期待されてるのでしょう。

 

「教えるのがヘタな人」もいる

ところが、残念ながら、すべての人が教えるのがうまいわけではありません。

ほとんどの人は「教えるとはどういうことか」についての基本を習ったことがなく、我流で人に教えていることがほとんどです。

これは「教える」という行為に、唯一の正解がないためです。
同じことをやっても、人の相性、言い方、時と場所など、様々な要因によって結果は異なりますので、「こうすれば効果的に教えられる」という再現ができないのです。

中には「教えるのがヘタな人」が、社員のみならず、アルバイトのやる気を削いでいるケースも散見されます。

では、このような状況について、どう手を打つべきでしょう。

私の経験では、効果が出やすいのは「教えるとき、やってはいけない事」を、皆にきちんと伝えることです。

「うまく教える」のは難しいうえに、個人の資質にも大きく依存します。
しかし、「ひどい教え方」にならないようにすることは可能です。

「教えるのがヘタな人」の特徴を社内で共有し、「こういうのはダメですよ」と徹底するのです。

 

「教えるのがヘタな人」の4つの特徴

では、具体的に「教育係」がやってはいけない事とは何でしょうか。

1.手順だけ教えて「なぜこのような手順が必要なのか」を教えない

教える際に、「手順」だけ教える人がいます。

“これやって、次にこうやって、最後にこうして、おしまい。じゃやってみて。”

といった、教え方です。
これは「教えるのがヘタ」の代表的な例です。
なぜかと言えば、「手順の意味」を教えないと、例外に対応できなかったり、手順を無視して楽な方法を選び、事故を引き起こしたりするからです。

コンサルタントをやっていた時、この手の「意味不明な手順」は
極力なくすようにしていましたが、それでもしばしば、「何のために?」ということがありました。

「提案書は、データで送る時にも、必ずプリントアウトせよ」とか、
(モニターで見るよりも、誤植を発見しやすいから)

「自社の商品資料だけではなく、競合他社の資料も持ち歩け」とか。
(提案するものがなかった時に、競合であっても良い情報は提供したほうが、長期的に良い関係をお客さんと築ける)

こういう「一見無駄に見えること」には、それ相応の意味があることも多いのですが、そういったことが理解されるのは「手順の意味」を教えた時だけです。

2.自分の視点だけで語る

教えるときに、「自分の視点だけで」語る人は、教えるのがヘタなケースが多いです。
「相手の視点で語る」とは、例えば、テニスのコーチが

「ボールをよく見てラケットを振りなさい」という言い方をするのと、
「ボールは、どんな回転をしている?」という言い方をするのと、どちらが、教わる側にとって効果的かということです。

「ボールをよく見なさい」よりも、「どんな回転をしている?」と聞かれたほうが、より具体的な行動をイメージしやすいのは間違いがないでしょう。

「こうしなさい、ああしなさい、なんで私の言う通りできないのか」と、言いっぱなしにする人も、「むしろなぜ、私の言ったとおりにできないのか」という視点を持ち、相手の視点で教えられる人のほうが、圧倒的に「教え上手」です。

3.「わからないところがあったら言って」と伝える

教えるのがヘタな人は、しばしば、さっと教えて、「わからないことがあったら言って」と、放任するケースがあります。一見、親切に見えるセリフであり、
「習うより慣れよ」という話なのだとは思いますが、実効性は低い。

なぜかと言えば、しばしば教わる側は、「何がわからないか、わからない」という状況に陥りがちだからです。

質問ができる、というだけでも一つの高等なスキルであり、それなりの経験を積んで始めて、質問は可能なのです。

したがって、「わからないところがあったら言って」というよりも、「たぶんここで躓くだろう」という予想のもとで、最初は細かすぎるくらいの指導をするほうが、育成のスピードはずっと速いのです。

コンサルタントをやっていた時に、会社には「OJTの3社ルール」というのがありました。

1社目は、先輩にすべてやってもらう。それを一言一句書き留めておく。
2社目は、半分、自分で仕事をする。先輩のやっていたことを正確にトレースする。
3社目は、先輩の監視のもと、自分で全部一通りやってみる。

この際重要なのは、1社目の指導の時、「一言一句書き留めよ」と、かなり細かい水準で記録をさせることです。
あっさり教えるのではなく、細かく教え、むしろ質問には期待しないこと。
これが、教え上手の鉄則です。

4.教育効果の確認をしない

教えるのがヘタな人は、「効果の確認」を怠ります。
反対に、教え上手は自分が指導した結果について、必ず「事後確認」をして、うまくいったかどうかを聞き出します。
うまくいっていれば、もちろん、褒めて認めてやることも重要です。

ただし、これは、相手のためを思っての行動にも見えますが、実際にはそれだけではありません。自分のためでもあります。

実は、「自分の教え方が適切だったか」の振り返りにもなるから、事後確認をするのです。

なにせ、自分の教え方について、反省ができる状況はあまり多くありません。
大半の新人は、教え方が悪くとも、それを先輩のせいにはできません。むしろ「自分が理解できないのが悪い」と思ってしまう方も多いでしょう。

したがって「自分の教え方」に対するフィードバックは、唯一「教えた相手の仕事がうまくいったかどうか」から得るしかありません。
それを理解しているのが、「教え上手」であり、それを理解せず、「言いっぱなし」にしているのが、教え下手なのです。

以上、「教えるのがヘタな人」の4つの特徴でした。
教え上手になることはできないかもしれませんが、最低限、こうしたタブーをしないことで、及第点は取ることができるのではないかと思います。

 

 

 


【著者プロフィール】

安達裕哉

◯Twitter https://twitter.com/Books_Apps

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

 

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