年金制度が先細りの傾向にある中、将来の貯蓄について不安を覚える方も増えてきていることでしょう。
同時に働き方改革の流れも加速しており、一つの会社に縛られない働き方をする人々も増加傾向にあります。
こうした流れの中で、本業の会社勤めとは別に副業を行う人はますます増えていくことが見込まれます。
1か所から給与をもらっているだけであれば、税金は源泉徴収と年末調整だけで処理を済ませることができる場合が多いでしょう。
しかし副業をしている場合には、ご自分で確定申告を行う必要があるケースがほとんどです。
副業に関する税金のルールは、所得税法などの法律で決まっています。
専門的で分かりにくい部分もありますが、副業をする場合には避けては通れない道なので、この機会に大事なポイントを押さえておきましょう。
目次
副業収入は原則として確定申告が必要
本業の給与とは別に副業収入がある場合、原則として確定申告が必要です。
確定申告とは、毎年2月16日から3月15日までの間に、前年の所得を計算した上で税務署に申告し、所得税の金額を確定させることをいいます。
(なお、2020年は新型コロナウイルスの影響で申告期限が延長されました。)
確定申告の方法については、国税庁のホームページで詳しく解説されています。
(参考:「所得税の確定申告」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm)
●副業収入20万円以下の場合は確定申告が不要になることがある
本業の収入が給与所得である人について、副業収入が20万円以下の場合には、一部の例外を除いて確定申告が不要となります。
なお、副業収入が複数ある場合には、すべての副業収入の合計が20万円以下であることが必要です。
たとえば、2つの副業でそれぞれ15万円ずつを稼いでいる場合には、副業収入の合計が30万円となるため、確定申告が必要となります。
(参考:「給与所得者で確定申告が必要な人」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm)
ただし、所得税の確定申告が不要な場合でも、少しでも副業収入があるときには、住民税の申告が別途必要です。
住民税の申告方法は、各市区町村のホームぺージで解説されています。
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副業の収入がどの種類の所得に当たるかを把握しよう
所得税法では、どのような手段によって所得を得たかによって、所得の種類が10種類に分類されています。
確定申告時には、正しい所得区分に従った申告を行う必要があります。
所得区分によって、確定申告の方法や経費の取り扱いなどに違いがあるので注意しましょう。
副業収入が該当する可能性がある所得は、おおむね以下の3種類です。
●給与所得
副業先と雇用契約を締結し、それに基づいて給与や賞与を受け取っている場合には、副業収入は「給与所得」に該当します。
たとえば店舗などでの時給制のアルバイトなどは、その多くが給与所得に該当するでしょう。
副業収入が給与所得の場合、本業の給与収入とともに、それぞれの源泉徴収票を参照して所得の金額を申告すれば良いため、手続きは比較的シンプルです。
●事業所得
副業先の指揮命令系統に入らず、副業をする人が独立して事業を営んでいる場合には、副業収入は「事業所得」に該当します。
典型的には、副業先と締結している契約が「雇用契約」ではなく「業務委託契約」である場合や、在宅で案件ごとに仕事を受注して報酬を受け取っている場合などが考えられるでしょう。
事業所得は後述のとおり、雑所得に比べて節税の面でメリットがあります。
しかし、副業収入が事業所得と認められるためには、
「客観的に見て事業として成立していること」
が必要です。
これは非常に抽象的な要件ですが、収入金額や費やしている時間の長さなどを考慮して、税務署が判断することになります。
たとえば、本業に匹敵する副業収入がある場合や、本業並みに時間を割いて副業に取り組んでいる場合などは、副業収入が事業所得と認められる可能性が高いでしょう。
なお、事業所得を得ている人は、青色申告・白色申告にかかわらず、帳簿の作成・保存義務を負う点に注意が必要です。
●雑所得
給与所得にも事業所得にも該当しない副業収入は、「雑所得」に該当するケースがほとんどです。
たとえば在宅ワークで時々仕事を請け負っているものの、お小遣い稼ぎ程度で、それほど収入が大きくないケースなどが考えられます。
雑所得の場合、帳簿の作成・保存義務も発生せず、確定申告においても金額などを記載するだけで良いため、申告の手続きは非常にシンプルです。
その反面、青色申告ができない点で、事業所得に比べて節税のメリットは小さくなります。
事業所得の税金・確定申告に関する注意点
給与所得と雑所得の確定申告は比較的シンプルですが、事業所得の確定申告は、やり方によって税額が大きく変わる場合があるので注意が必要です。
また事業所得の場合、通常の所得税や住民税以外にも、個人事業税の課税が問題になるケースがあります。
どのような場合に個人事業税が課されるかについても、正しく理解しておきましょう。
●青色申告や必要経費の計上などにより税額を減らせる
事業所得の場合、確定申告の方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
このうち青色申告は、複式簿記の方法により記帳をしなければならないなどの手間がかかりますが、55万円(電子申告または電子帳簿保存を行えば65万円)の所得控除により大きな節税効果を得ることができます。
また、事業所得の確定申告においては、必要経費を計上することにより、課税所得を抑えて税金を減らすことが可能です。
特に在宅で仕事を請け負っている場合などは、家賃や光熱費などの一部を必要経費に計上できることがあります。
どのような費用が必要経費に算入できるかは、税理士などの専門家に確認すると良いでしょう。
なお、必要経費の計上については、雑所得の場合にも行うことが可能です。
●個人事業税も課税される場合がある
給与所得者の場合、給与に対して課税される税金は、所得税と住民税です。
しかし、副業で事業所得を得ている場合には、さらに個人事業税の課税が問題となるケースがあります。
個人事業税は、法定の70業種に該当する事業を営む個人事業主に対して課される地方税です。
税率は、業種によって課税所得の3~5%に設定されています。
ご自身が行っている事業が個人事業税の課税対象になっているかどうかは、都道府県のホームぺージで確認しましょう。
(参考:「個人事業税」(東京都主税局)https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ji.html)
まとめ
本業が会社勤めの方などは、確定申告について馴染みがないという場合も多いかもしれません。
しかし、副業を続ける限りは、確定申告は毎年行う必要があります。
最初は戸惑うかもしれませんが、しっかりとした申告を行っておけば、後から税務署からの指摘を受ける可能性も小さくなります。
安定して副業を続けていくためには、副業収入に関する税金や確定申告について正しく理解しておくことが必須です。
必要に応じて税理士などの専門家に確認するなどして、正しい知識を備えておきましょう。
弁護士YA
大手法律事務所にて企業法務、金融法務に従事。
退職後、現役弁護士としての活動と並行して、ライター活動を開始。
法律・金融分野を中心として、幅広いジャンルの記事を企業のオウンドメディア等へ寄稿している。
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