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「ブラックバイトの実態」を知ると、ヤバくて震える。

人手不足と言われる昨今であっても、一般的に、アルバイトは非常に立場が弱いことが知られています。

それは「アルバイト」という位置づけによるものではなく、単に学生や主婦、外国人など、一般的に「労働法に疎い」人たちがアルバイトの中核であり、「知らないこと」で、そこにつけこまれる人が出てしまうのです。

東京都労働局*1

東京労働局に寄せられる相談には、法令を知らないことにより、労働トラブルが発生している事例が少なくありません。
また、近年では、学生がアルバイトをする際に法令違反に巻き込まれたり、学業との両立に支障が出るようなケースが多く指摘されています。

そんなにトラブルがあるの?と思う方もいるかも知れません。
しかし、実態は思ったよりも深刻です。

例えば、厚生労働省が、学生アルバイトの実態を調査した2015年の報告書です。*2

3  学生1,000人が経験したアルバイト延べ1,961件のうち 58.7%が、労働条件通知書等を交付されていないと回答した。労働条件について、学生が口頭でも具体的な説明を受けた記憶がないアルバイトが19.1%であった。

4 学生1,000人が経験したアルバイト延べ1,961件のうち48.2%(人ベースでは60.5%)が労働条件等で何らかのトラブルがあったと回答した。トラブルの中では、シフトに関するものが最も多いが、中には、賃金の不払いがあった、労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかったなどといった法律違反のおそれがあるものもあった。

法律で決まっているはずの「労働条件通知書の交付」が、6割近くのケースでなされていないという事実があります。
口頭ですら、20%近くの学生が具体的な説明を受けていないとも回答しているのです。

また、労働条件にトラブルがあったと述べる学生は全体の60%。
驚異的な数字ではないでしょうか。

また、資料*3をもう少し詳しく見ていくと、業界別に「起きやすいトラブル」が見えてきます。

例えば賃金に関して多いトラブルは
「準備や片づけの時間に賃金が支払われなかった」
とあり、個別指導の学習塾の3人に1人が経験しているようです。

あるいは「1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった」、と回答した学生が居酒屋や結婚式場では2割前後存在しており、過酷な現場があることが窺えます。

中には「罰金を徴収された」「退職させてもらえない」「暴力や嫌がらせを受けた」などの悪質なものも含まれており、「ブラックバイト」は依然として根深い問題なのです。

こう聞くと、「ブラックな職場だったら、さっさとやめりゃいいじゃん」と言う方もいるかも知れません。

しかし、少なくない学生が「自分は仕事をやめることができる」という当然の権利を知らず、低賃金にも関わらず理不尽なノルマを課されたり、授業の出席に支障をきたしたり、テストを受けることもままならない事例すらあるのです。*4

中には
「少し待ってくれ」と言われなかなか給料を貰えない
「アルバイトに残業代なんか出せない」などの法律無視
「テストの日も入ってくれ」という無茶なシフト要求
「ノルマ未達の場合、それを自腹で買い取れ」と要求される

など、身震いするような事態も実際に発生しています。*4

厚生労働省・労働局が行っている啓発キャンペーンと、無料で手に入る情報の数々

こうした事態を受けて、各都市の労働局は啓発キャンペーンなどを行っています。

上で述べたように、東京都労働局は、「法令を知らないことにより、労働トラブルが発生している事例が少なくありません」との事態を重く見ており、以下のようなリーフレットを発行して、啓発活動に努めています。

アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント

東京労働局「アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000270380.pdf

また「労働条件通知書」も付属しており、チェックリストのような形で利用できるようになっています。


東京労働局「アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000270380.pdf

あるいは「まんが」で労働法の内容を啓発するコンテンツを発信しています。


厚生労働省「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/mangaroudouhou.html

こうした啓発活動は「労働者」のみならず、法律を守って「まっとうに」アルバイトを雇っている企業にとっても望ましいことでしょう。

なお、東京都労働局は、こうした注意事項の確認として、また就職前の準備として
「学生向け労働法制セミナー」を完全に無料で講師を派遣して実施しており、学校などで「授業」として採用することも可能だとしています。*1

さらに、今どきなのが「労働法を学べるアプリ」です。

厚生労働省「確かめよう、労働条件」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/winter2018/

「労働条件(RJ)パトロール!」というアプリ名でiphone、Androidで利用することができ、無料で各種労働関係の公的サービスを利用することが可能です。

繰り返しになりますが、こうした啓発活動は「労働者のため」だけではありません。

法律を守って「まっとうに」アルバイトを雇っている企業にとって、「ブラックバイト」の横行は、人材市場をシュリンクさせ、良質な労働力の普及を妨げる、大きな問題です。

ぜひ、アルバイトの担当者の皆様も、こうした労働法に明るくなり、労働者とともに「ブラックバイト」を撲滅していく活動が必要なのではないかと思います。

 

 

【著者プロフィール】

◯Twitterアカウント▶安達裕哉
https://twitter.com/Books_Apps

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

*1 東京都労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/_122864.html
*2 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000103577.html
*3 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000103625.pdf

*4 厚生労働省「確かめよう アルバイトの労働条件」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/arubaito/index.html

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