「学生時代の思い出は?」と質問されて、一番に何を思い浮かべるでしょうか。
サークル活動や友人との旅行、ボランティア活動など、学生時代にしかできなかった様々なことを思い返し、ふと幸せな気持ちになる人も多いかも知れません。
そんな中、やはり初めての就労経験であるアルバイトが一番思い出深かったと思い返す人も、多いのではないでしょうか。
学生にとってアルバイトとは、お小遣いを稼ぐ場であり、学費の足しであり、社会に出る前の大事な勉強の場でもあります。
その一方で、日本では地域により極端に学生が偏在していることをご存知でしょうか。
総務省統計局のデータを見れば明らかですが、都道府県別の大学生の数を概観すると、都市部への学生の集中が顕著です。
出典:総務省統計局「大学生の数(都道府県別)(平成27年)」を元に筆者作成
https://www.stat.go.jp/naruhodo/c1data/19_01_stt.html
平成27年度のデータによると、全国286万人の学生のうち、実に74万人、4人に1人以上が、東京都で学んでいます。
そして、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、京都府の上位5都府県を合計すると151万9000人。
率にして53.1%の学生が、わずか5つの地域に集中していたことがわかります。
逆に下位の方を見てみると、富山から島根までの38位~47位の10県を合計してみても、わずか97,000人に過ぎません。
率にして3.4%で、これは9位である千葉1県の学生数にも遥かに及ばない数字です。
地方都市は、学生数の絶対数が少ないという意味でも、若い働き手を確保する上で非常に苦労している実態が窺えます。
これらの数字からはそのまま、地域の活力や過疎問題などの深刻な社会問題を感じ取ることができますが、それを述べることは本稿の目的ではありませんので別に譲ります。
数字から読み取れる事実の一つに、受験生たちは大学に合格すると、地方から都市部に移り住む傾向があることがわかります。
つまり、見知らぬ土地で初めての一人暮らしを始めて、初めてのアルバイトを始める学生が多いことが、数字から推測されます。
現役の学生の皆さんも、かつて学生であった人も、心当たりがある人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、初めての土地で初めて仕事をするというのはなかなか簡単なことではありません。
地域も違えば文化も違い、何をすれば怒られるのか、という怒りのポイントまで違うことすらあります。
筆者は学生時代を地元近くの京都で過ごしましたが、初めて耳にするごく普通の関西弁を「怖い」と言っていた同級生たちが印象的でした。
そこで本稿では、これら上位「学生の街」に移り住むであろう人、移り住んだ人、子どもたちが移り住んでいる人に向け、「地域柄」を、定量的な情報でご提供することを目的にお話を進めていきます。
ぜひ、いち早く「第二のふるさと」に馴染める材料の一つにして頂ければと思います。
目次
大阪ってどんなところ?政府統計資料から分析
学生数不動の1位である東京都についてはとても情報が多いため、ここでは割愛します。
2番手の大阪府について、様々な資料からその地域性を紐解いて見ていきましょう。
客観的な地域柄を知るためには、やはり総務省統計局の家計調査ランキングを参照するのが便利です。*1
その結果はランキング化され発表されていますが、例年「餃子日本一」などのような形で盛り上がっているニュースを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
なおこの調査は、全国の都道府県庁所在地に加え、政令指定都市、合計52都市の消費動向を調査するものです。
調査対象は地元住民の消費動向であり、観光客や昼間人口(ビジネスパーソン)を始めとした他府県からの来訪者の消費結果は関係ありません。
そのため、大阪府に住む人の特徴を知る手掛かりとして、大阪市の調査結果が役立ちます。
また以下のランキングは全て、同サイトから引用します。
早速見ていきましょう。
意外に食い倒れない?外食支出ランキング
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均)」を基に筆者作成
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
「食い倒れの街」として知られる大阪ですが、実は外食への支出ランキングでは全国52都市の中で15位であり、ほぼ全国平均ということになっています。
少し意外な結果ではないでしょうか。
であれば、お酒の消費量が多いのかといえば、そういうわけでもありません。
酒類の消費量ランキングでは52都市中ちょうど真ん中の26位であり、全国平均40,676円に対し41,107円です。
もともと大阪は、商人の町として栄えた歴史を持っています。
そのため、倹約的な住民気質があるのかも知れません。
ミナミを始めとした繁華街を上手にブランド化し、観光客などを誘致するために「食い倒れの街」として売り出している戦略がしっかりと根付いている結果と言えそうです。
「大阪の人って、食い倒れっていうくらいだからみんな派手に飲み食いするんですよね?」
という印象で地元の人とお話をしたら、
「なんでやねん!」
と言われてしまうかも知れませんので、気をつけましょう。
毎日お好み焼きを食べてるんですよね?
大阪といえば、やはりコナモン文化です。
お好み焼きやたこ焼きは大阪を中心とした関西人のソウルフードと言われることもあり、大阪人のアイデンティティでもあります。
そのため、各家庭でも小麦粉の消費支出は多いはず・・・。
と思われるかも知れませんが、実はそれも、数字の上からは意外な結果が見えてきます。
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均)」を基に筆者作成
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
大阪市の小麦粉消費量は全国52都市の中で実に43位であり、全国平均の82.3%に過ぎません。
「家でもたこ焼きを焼いて食べる」
「毎日のようにお好み焼きを食べる」
という、冗談で語られるようなイメージとは、少し異なる実態が見えてきます。
その一方で、「たこ」の支出金額ランキングでは、大阪堺市が1,779円で全国1位、大阪市が1,689円で全国2位となっています。
全国平均が1,299円ですので、これらの数字は圧倒的と言って良いでしょう。
たこ焼きそのものが小麦粉を多く消費するわけではないだけで、自宅でたこ焼きパーティーをする頻度で言えば、実は高いのかも知れません。
少なくともたこ好きな府民性があることは間違いなさそうですので、たこ焼きパーティーで地元の友達たちと仲を深めるというのは、やはりとても有効な方法と言えそうです。
しかしながら、小麦粉に対して極端な支出をしているわけではない実態は、少なくとも間違いがないところです。
他の都道府県から大阪に移り住んだ時、
「大阪の人って、毎日お好み焼きを食べてるんですよね?」
と真顔で言ってしまったら、
「そんなアホな!」
と厳しいツッコミを受けてしまうかも知れませんので、気をつけましょう。
肉といえば牛肉
なかなか特徴の見えない大阪の消費性向ですが、地域差がハッキリ見えるものの一つに、肉類の好みがあります。
以下をご覧ください。
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均)」を基に筆者作成
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
「関西は牛肉文化、関東は豚肉文化」という言葉を耳にしたことがある人も多いと思いますが、牛肉の消費支出は、関西を中心とした西日本が圧倒的であることがよくわかります。
なお、豚肉については以下のとおりです。
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均)」を基に筆者作成
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
こちらからも、「関西は牛肉文化、関東は豚肉文化」という説が事実であることを、読み取ることができます。
肉類の消費性向については、キレイに地域差が現れると言って良さそうです。
これは、東日本から西日本に引っ越す場合、あるいは逆の場合でも、覚えていて損はないでしょう。
ちなみに筆者の実家である滋賀では肉じゃがといえば牛肉ですが、妻の実家である静岡では豚肉だったそうです。
スペースの都合で多くは紹介できませんが、定量的な数字で見ると地域の意外な実態が見えてきます。
ほんの一部のご紹介でしたが、ぜひ詳細は引用元である総務省統計局の資料を研究し、知られざる地元の実態を把握する役に立てて下さい。
知っておこう、難読地名
最後に、難読地名についてです。
見知らぬ土地に移り住んだ時に、地名の読みを間違えたら、やはり気まずいものです。
しかし、難読地名をスラスラ読むことができれば、地元の人にも「お?」と思ってもらえる事があるかも知れません。
特に大阪は、難読地名が多いことで有名です。
以下のような地名はメディアでも取り上げられることが多く、読める人も多いのではないでしょうか。
逆に言えば、大阪に移り住むのであれば、この辺りはマスターしておきたいものです。
放出(はなてん)
十三(じゅうそう)
杭全(くまた)
中百舌鳥(なかもず)
住道(すみのどう)
その一方で、以下の難読地名は初見ではまず読めない、特にレベルが高い難問です。
毛人谷(えびたに)
立売堀(いたちぼり)
御幣島(みてじま)
喜連瓜破(きれうりわり)
住道矢田(すんじやた)
特に住道矢田は、住道の読み方を知っている人にとっては、逆に難易度が上がる罠が仕掛けられています。
ぜひ大阪に移り住む際は、一つでも多くマスターして地元の人と早く仲良くなる一助として下さい。
*1
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均)」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html