政府が推し進める働き方改革の一つに、副業・兼業の促進があります。
平成の終わり頃から話題になり、また大企業でも社外での副業を容認する事例が報じられるなど、既に目新しい考え方ではなくなってきました。
しかしながら、実際に副業をしている人はどのような働き方をしているのか。
どのような仕事で多くの収入を得ているのか。
なかなか正確に把握している人も少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、副業の実態を改めて確認し、無理なく多くの収入を得るための考え方について、再確認していきます。
これから副業・ダブルワークに取り組みたいと考えているビジネスパーソンの方は、ぜひご確認してみてください。
副業の実態 ビジネスパーソンが取り組んでいる副業・ダブルワーク
厚生労働省の調査によると、副業を希望している労働者の割合は年々増加していることがよくわかります。
出典:厚生労働省「副業・兼業の現状①」p1
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361727.pdf
背景には、減少傾向にある平均所得の推移*1に加え、終身雇用という考え方が失われつつある事があるでしょう。
会社が雇用を守ってくれないのであれば、ビジネスパーソンも会社への忠誠心を維持し続けるのは困難です。
また所得が伸びないのであれば、少しでも収入を補填しようと副業・ダブルワークを考えるのは自然なことです。
実際に副業に取り組んでいる人たちの動機を見ても、その傾向は明らかです。
出典:厚生労働省「副業・兼業の現状②」p9を抜粋・加工
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361728.pdf
1つの仕事だけでは収入が少ない、収入を増やしたい、ローンなど借金や負債を抱えているという、本業の収入が少ないことに起因する副業の理由が目立ちます。
令和の時代、ビジネスパーソンは自活するために、副業・ダブルワークを真剣に考える必要性に迫られていると言えるかも知れません。
では、実際にいち早く副業に取り組んでいる人たちは、どのような働き方をしているのでしょうか。
出典:厚生労働省「副業・兼業の現状②」p14
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361728.pdf
ご覧頂ければ明らかですが、副業の働き方の就業形態は主に2つです。
一つはパート・アルバイト。
そしてもう一つは、自由業などフリーランス、個人請負としての働き方です。
つまり、
・時間を売って(時間給)お金を稼ぐ働き方
・技術や知識を売って(成果報酬)お金を稼ぐ働き方
に大別できると言えそうです。
言い換えれば、専門的技能や知識のある人は成果報酬の副業で稼ぐ。
そうでない人は、時間給の副業で稼ぐという形です。*2
まずはこれが副業・ダブルワーク元年にある日本の状況ですが、このような中でビジネスパーソンは、どのようにして少しでも多くの報酬を効率的に稼げばよいのでしょうか。
「プロの世界で通用しない」とはどういうことか
少し筆者のお話をさせて頂きますと、私はメディア編集の仕事をメインにしています。
この仕事では、多くの専門家やライターの方とお取引をさせて頂きますが、メディアのニーズによっては広く書き手を公募することもあります。
そしてライティングやネーミングの仕事では、上場大手の公募サイトを少し探すだけで
・時間給制のアルバイト・パート
・1文字◯円の原稿買い取り(出来高)制度
・コンペ
と、多くの働き方やジャンルが毎日のように追加されています。
この仕事に必要なものはパソコンだけで、初期投資は必要ありません。
場合によってはスマホでできる仕事もあり、また成果物もただ所定の文字を打ち込めば良いような簡易な仕事も多くあるので、まさに、副業・ダブルワークの縮図と言えるでしょう。
私自身、これらネットメディアや紙媒体を利用し、ライターを公募することもあります。
そしてそのたびに、そのハードルの低さゆえに様々な年齢、経歴、力量・・・といった方と面談をするのですが、その99%がとても惜しい、あるいは残念な応募者です。
ざっと分類すると、以下の3つに分類できます。
(1)目的に合わない
どれほど優れたキャリアや有資格者の方でも、メディアの求めるニーズに合わなければ意味がありません。
例えば大手銀行や証券会社など金融畑でキャリアを積んだ方が、条件に魅力を感じて住宅メーカーの建築士コラムに応募してくることもあるのですが、ご依頼に至ることはまずありません。
(2)評価が一致しない
応募をしてくる方の中には、
「大手商社の〇〇勤務です」
「〇〇大学院を卒業し、専門知識があります」
と言った形で、より多くの報酬を交渉してくる方もいます。
しかし公募の世界では、「ありふれた高学歴やキャリア」に希少価値はないため、それが報酬の上乗せに直接繋がることはありません。
自分自身のプロデュースの仕方を間違えていると言っても良いでしょう。
むしろ、聞いたことがない国で、思いもしない仕事をしていた経験などのほうが、コンテンツとして高く評価される可能性があります。
あらゆる仕事に言えることですが、高く売れるとはすなわち、何らかの形で希少価値があるということです。
(3)そもそも論
これとは別に、
・この仕事を始めたばかりですが熱意はあります。
・勉強にちょうどいい仕事だと思いました。
・最後までやり遂げます。任された仕事を途中で投げたことはありません。
という自己PRをされる方もいますが、これはプロの世界で働こうという人ではありません。
「頑張れば評価される」
「まじめにやることが何より大事」
という価値観では、プロの報酬を受け取れることはありません。
以上3パターンが、ざっと「プロとしての契約」に至らないケースの分類です。
そしてこれら3パターンは、副業・ダブルワークで効率的に報酬を稼ぎたいという方だけでなく、これからのキャリアをより充実したものにしていきたいというビジネスパーソンへのヒントそのものでもあります。
副業・ダブルワークで「知見の貯金」をしよう
副業やダブルワークに取り組む目的は様々ですが、圧倒的大多数が「収入のため」であることは先述のとおりです。
複数回答であっても、スキルやキャリアアップを目指して副業に取り組んでいると回答する方は多くありません。
いわば、プロ意識で副業に取り組んでいるという人は少数派と言えるでしょう。
出典:厚生労働省「副業・兼業の現状②」p9を抜粋・加工
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361728.pdf
そして、先ほどご紹介した「プロとしての契約」に至らない人の構図がこれに重なります。
個別に確認してみましょう。
(1)目的に合わない
応募者の方は、プロに支払われる報酬に魅力を感じて応募をしてきますが、その分野のプロとは言えない方の応募であれば無意味であることは先述のとおりです。
逆に言えば、これはプロとして、その成果物を提供できる分野で副業・ダブルワークに取り組めばよい、ということの裏返しでもあります。
先に見たように、副業・ダブルワークの働き方は
・時間を売って(時間給)お金を稼ぐ働き方
・技術や知識を売って(成果報酬)お金を稼ぐ働き方
がほぼ全てです。
そしてこのいずれの働き方でも、自分の「プロの部分」を見つけることは決して難しくありません。
経理としての能力に自信があるのであれば、土日の空き時間にレジ打ちのアルバイトをするよりも、会計事務所から記帳の仕事をもらったほうがより高い報酬を得られる可能性があります。
メディアの運営・開発の仕事をしている人であれば、webサイトの開発を公募している会社の仕事を直接請ければ、時間給制では考えられない報酬を得ることも難しくありません。
一足飛びに大きな仕事を請けることに自信がないのであれば、時間給制で仕事を募集しているweb開発の下請けをして経験を積めば良いでしょう。
分野にもよりますが、時間給制のアルバイト・パートという働き方は、キャリアアップのための経験値を稼ぐ場として強力に機能します。
その際に大事な考え方は
・目的を持って領域を定める(=目的に合わない仕事を求めない)
ということに他なりません。
(2)評価が一致しない
副業・ダブルワークで効率よく収入を得るために変えるべき大きな視点は、ここにもあります。
先述のように、大企業でのキャリアや有名大学の学歴そのものは、付加価値に繋がるほどの希少価値があるわけではありません。
そこで役に立つ考え方は、「希少価値を生み出す掛け算」です。
例えば、有名大学を卒業し大企業で勤務をしているという人よりも、有名大学を卒業しアフリカの山奥で狩猟生活をしている人のコラムのほうが、読者の興味を誘うのは明らかです。
同様に、ライターの世界では「専門性×書ける技術」を身につけている人は、まだまだ希少価値があり、副業を求めている人にとってブルーオーシャンが広がっていると言っても良いでしょう。
なお、この場合の専門性とは弁護士や公認会計士と言った希少な資格を意味しません。
「モテない×書ける人」が、もしこれまで30人の女性にふられ続けたことがあり、その体験談をありのままに書けるのであれば、それはもはや読者を勇気づける素晴らしいコンテンツです。
「ダメリーマン×書ける人」が、自分のダメっぷりを情感豊かに表現できるのであれば、多くの人の共感を呼ぶでしょう。
失敗談がカッコ悪いというのは思い込みに過ぎません。
むしろ、失敗談を赤裸々に語れる人のほうがカッコイイのは、テレビやネットメディアを見ていても思いあたることが多いのではないでしょうか。
「惨めな失敗」や「思い出すだけで恥ずかしいカッコ悪さ」を素直に書ける方が、自分語りのカッコイイ話を書きたがる人よりもよほど希少価値があります。
そしてほとんどの場合、読み物としても価値があります。
あとはその希少価値をどのようにマネタイズするのか、という知恵の絞り方次第と言うことです。
まして、何らかの仕事に就いて成果を出しているのであれば、掛け算次第で必ず、自分の希少さをプロデュースすることができるでしょう。
自分がもつ技術やキャリアと何を掛け合わせたら、そこにさらなる希少価値が生まれるのか。
副業・ダブルワークで効率よく収入を得るためには、この視点を持つことが必ず必要です。
(3)そもそも論
そもそも論から学ぶことは一見何もなさそうですが、そのようなことはありません。
・この仕事を始めたばかりですが熱意はあります。
・勉強にちょうどいい仕事だと思いました。
・最後までやり遂げます。任された仕事を途中で投げたことはありません。
という考え方はいずれも、新しい分野に挑戦する熱意の表れであり素晴らしいことです。
ただ先述のように、これはプロではない方の働き方です。
しかし、「希少価値を生み出す掛け算」にトライするのであれば、誰もが必ず通る道でもあります。
自分の持つ専門性やプロと言える領域と何を掛け合わせれば、新たな付加価値を生み出すことができるのか。
試行錯誤の中で、
・時間を売って(時間給)お金を稼ぐ働き方
からトライアルすることは、副業・ダブルワークのあり方として非常に有効です。
収入を得ながら、自分の考え方をトライアンドエラーできるのですからこれほど魅力的なことはありません。
わかりやすく言えば、ラーメン屋さんを開業したいのであれば、まずラーメン屋さんで修行することは、受け取る給料よりも遥かに大きな知見になって、大きな資産になるということです。
いずれにせよ、副業・ダブルワークで効率よく収入を得るためには、何の積み上がりもない労働で目先の収入だけを目的に働くべきではありません。
「自分の売り物はなにか」という完成形を意識し、「そのための知見として積み上がるなにか」で日々、資産の貯金を意識してみれはいかがでしょうか。
5年、10年経った時、振り返れば自分の積み上げた知見の大きさに、きっと驚かれるはずです。
*1 厚生労働省「グラフでみる世帯の状況」p16
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28.pdf
*2 厚生労働省「副業・兼業の現状②」p8
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361728.pdf
【著者】
桃野泰徳(ももの・やすのり)
1973年滋賀県生まれ。
大和証券を経て、いくつかのベンチャー企業でCFOを歴任し独立。
個人ブログでは月間80万PVの読者を持つなど、経営者層を中心に人気を集める。