人材育成・マネジメント
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この世には部下を成長させる褒め方と、ダメにする褒め方が存在する

こんにちは。
鬼滅の刃経営研究会です。

今回取り上げるテーマは、「部下の褒め方」です。

「部下は褒めて伸ばそう」という主張は良く聞きますが、この主張には落とし穴があります。
実は、心理学研究から、部下の成長を促進する褒め方と、部下の成長を阻害する褒め方が、特定されています。

今回の記事では、心理学での研究結果を紹介しつつ、部下をどう褒めたらいいのかを考察します。

 

部下の成長を促進するために知っておきたい心理学研究

我々が知っておくと良い心理学研究は2つあります。

1つ目は、そもそも、「人は才能ではなく、努力により成長できる」、という事実です。
「人は才能ではなく、努力により成長できる」。
実は、この考えは、ここ100年程で人類が獲得した考え方です。
今から100年程前は、「人は、元々持っている才能が発現しているだけで、努力では才能は覆せない」という人間観が主流でした。

しかし、この100年程で、哲学や科学の世界から、様々な研究が進み、私達人類の中での当たり前が変わっていきました。

例えば、フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン教授は、『超一流になるのは才能か努力か』という著書の中で、2歳から6歳までの子供達に対して、音感についてのトレーニングをすると、実験に参加した全員が、トレーニングが完了した時点で絶対音感を身につけた事を紹介しています。*1
つまり、適切な訓練さえすれば、誰もが能力を身に着けることができた、ということです。

また、ロンドン大学の脳科学者のエレナ―・マグワイア教授は、「(非常に複雑な道順を覚える)ロンドンのタクシードライバーは、記憶力に影響する海馬が一般人よりも物理的に大きい」事を発表しています。
脳の物理的な大きさまでもが、訓練により変化するという事はなかなか衝撃的です。*2

このように、先天的な才能よりも、後天的な環境や訓練の方が重要だという事を立証する証拠が数多く出てきています。

次に、我々が知っておくと良い心理学研究の2つ目は、「褒める時は、相手の努力を褒めるべき」というものです。

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授は、その著書の中で、何百人もの子ども達を対象に7回にわたる実験を行った結果、元々もっている頭の良さを褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると生徒の知能が上がったことを明らかにしています。*3

これは、頭の良さや能力を褒められた子供は、そこで満足をしてしまい、自分が失敗するかもしれない更なる挑戦をしなくなるためだそうです。
一方で、努力を褒められた子供は、一層難しい事に挑戦し、失敗しつつも努力し、能力を向上させていった、というものです。

 

職場において、どう実践するとよいか

これらの研究結果を、私達の職場でどう実践したいよいでしょうか。
まずは、「どんな部下であっても成長できるという事実を認識する」事です。

「この部下はだめだ、使えない、能力がない」、とあなたが思えば、あなたの部下の成長は阻害されるでしょう。

これは心理学的には「ピグマリオン効果」とも言われるもので、相手への期待によって、相手が影響を受けるという効果があります。

また、部下の成長を促進するためにも、大いに褒めてみましょう。
ですが、褒めるべきは、部下の優秀さ、頭の良さ、能力ではなく、その部下の「努力」を褒めましょう。
それによって、部下の更なる努力が促進され、結果的に部下は一層成長をしていく事でしょう。

『鬼滅の刃』でも、適切なタイミングで、部下の努力を褒める、というシーンがあります。
主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう/以下、炭治郎)は、更に高度な技術を体得するために、朝から晩まで自らに厳しい修行を課す日々。共に修行をしている仲間達が諦め離脱する中、一人修行を続けます。
ある晩、いつものように修行に励む炭治郎に対して、師である胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ/以下、しのぶ)は、「頑張ってますね」と、声をかけます。

引用) 吾峠呼世晴著 集英社 電子版『鬼滅の刃』6巻 第50話 P143

しのぶから声をかけられ、言葉を交わした炭治郎は自分が行っている日々の鍛錬が間違っていないことを確信し、さらに努力を重ねていきます。そういった努力の末に、炭治郎は高度な技術を体得します。

このように、部下が上司から努力を見てもらっている、応援されていると思えるからこそ、部下は安心して更なる努力に身を投じていけるのではないでしょうか。

 

しのぶと真逆の褒め方をしてしまった私の失敗

筆者には、部下を褒めるにあたり、今でも悔やんでいる失敗体験があります。

筆者には非常に優秀な部下のAさんがいました。彼は大学も一流大学で語学も堪能。人前で話す際も物おじひとつせず流暢に話します。
当時、筆者は全く勝手が分からない部署に異動したばかりで自分自身心細く、彼の優秀さに頼りきっていた面もあったため、その優秀な部下の「優秀さ」を褒め続けました。

「さすがだね、Aさん」
「Aさんは優秀だね」
「プレゼンもばっちりだったね」

しかし、1年後にふと気づくと、チームの中で彼だけが成長していない。
周りのメンバーが貪欲に仕事に取組み、挑戦し成長している中で、彼だけ変化がない。
仕事への取組み姿勢も、難しい仕事は周囲に任せ、彼は一人身を引いてやろうとしません。そんな彼は、周りからも「Aさんは仕事をしない」と見られ、職場で浮きがちになってしまいました。

正直に記載しますと、筆者も当時は、「彼は努力をしようとしないからだめだ」と否定的に見ていました。
ですが、この記事に書いたような心理学の知見を学んだ結果、努力をしない彼を私が創ってしまったかもしれない、という事を理解できました。

勿論、彼が努力をするかどうかは、私の褒め方だけによるものではありませんが、直属上司の私の関わりは、きっと彼に大きな影響を与えたことでしょう。

ぜひ、鬼滅の刃のしのぶの部下への関わりから学び、私の失敗体験を反面教師としていただければ幸いです。

 

まとめ

部下を褒めることで、部下の能力が伸びることは、多くの心理学研究で裏付けがされています。
しかし、褒め方には注意が必要です。
部下の「成果」、「才能」を褒めると、その部下の成長を止める事に繋がります。
一方で、部下の「努力」、「頑張り」を褒めると、その部下の成長を促進する事に繋がります。

上司の部下に対する接し方で、大きく部下の成長は左右される可能性があります。
ぜひ、職場で実践してみてください。

 

*1
参考)「超一流になるのは才能か努力か?」アンダース・エリクソン著

*2
参考) 「Acquiring “the Knowledge” of London’s Layout Drives Structural Brain Changes」Katherine Woollett and Eleanor A. Maguire

*3
参考)「マインドセット「やればできる!」の研究」キャロル・S・ドゥエック著

++++

著者
鬼滅の刃経営研究会
「鬼滅の刃」という物語は失敗を繰り返しながら学び成長していく中小企業の経営ストーリーそのものであると気づいた「組織と人」のプロが、「鬼滅の刃」を通してビジネスや経営を考察した記事を連載している団体です。各種SNSの総フォロワー数1万超。
創設者 公認会計士税理士 矢崎誠一  社会保険労務士 高橋謙一 

note:https://note.com/kimetsukeiei   Twitter : https://twitter.com/kimetsukeiei

 

 

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