マネジメント・育成
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アルバイトに辞めたいと思わせず、スキルアップさせるためには「任せる」のが効く

「人手不足できつい。」
このような思いは、飲食関連の仕事をしていれば、だれもが経験することではないでしょうか。

筆者はかつて、全国にチェーン店をもつラーメン店で店舗責任者をしていましたが、「店のすべての問題は人手不足から来る」と思えるほど、採用には苦労しました。

まさに「喉から手が出るほど人がほしい」という状況でしたが、特に深夜・休日の勤務や残業がしやすい大学生のアルバイトに対する需要は、今も変わらずどこの現場でも同じようです。

引用:参事官(経済財政分析―総括担当)付 上島大和、村上太志「人手不足感の高まりについて」2018年3月2日(*1)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2018/0302/topics_052.pdf

ただし、問題は採用した後でした。
採用後の大学生を、辞めたいと思わせることなく、スキルアップさせていかなくては、サービスの質は落ち、採用もやり直しになってしまうからです。

目次

アルバイトが辞めていく1店舗目と、アルバイトが大活躍していた2店舗目

大学生を辞めたいと思わせず、スキルアップさせるには「任せる」のがいい

「大学生アルバイトを戦力化できるかどうかは、コミュニケーション」という調査結果

まとめ

アルバイトが辞めていく1店舗目と、アルバイトが大活躍していた2店舗目

筆者は退職するまで、2つの店舗で勤務しました。
1店舗目は、会社創業後の早期に開店し、10年の歴史がある都心駅前店。
この店では、スタッフのポジションを固定していました。「〇〇さんは麺場(厨房)」「××さんはホール」というイメージです。
基本は社員が麺場に立ち、アルバイトはサブ(麺場の補佐)かホールという区分けになっていました。
「麺場は聖域」という言葉もあったくらいで、麺場に立つのは格式の高い、名誉なことだとされていたのです。

もちろん、「ラーメンがおいしいかどうか」はお客様満足度、売上に直接つながるので、「麺場は聖域」という考え自体は間違いではないでしょう。
しかし、この制度では麺場に立てるのは社員と、勤務歴の長いアルバイトに限られます。そのため、麺場以外のポジションのアルバイトに活気はなく、店の「一体感」が感じられなかったのが気になっていました。

よくない予感は的中しました。
赴任後数ヶ月すると、5人中2人の大学生が辞めることになったのです。
2人とも麺場経験はなく、勤務歴は1年でした。
現場店舗にとって、「アルバイトが辞めてしまう問題」は、まさに死活問題でした。

大学生が辞め、以下のような影響があったのです。

■ スタッフの育成がやり直しになる、純粋にスタッフが減る
■ 社員の休みが満足に取れない
■ 社員の長時間労働の慢性化
■ 一部のアルバイトが無理をしてシフトインするようになる
■ アルバイトの不満が高まる(辞めていく)

大学生2人が辞めて間もなく、もう1人、入って3ヶ月の大学生も辞めてしまい、「店長が店に寝泊まりするのが普通」という状況になりました。
アルバイトが辞めてしまったら、純粋に頭数が足りなくなるだけでなく、店の士気は落ち、他のアルバイトの退職にもつながりかねません。そうなってしまえば、人手不足を解消するには、次の採用の機会を待つしかないのです。

筆者は1年後、新たにオープンする店に異動しました。
2店舗目は、東京郊外のロードサイド店。立地は、1店舗目と大きく異なりますが、人手不足は変わりませんでした。
計算上16人のアルバイトがほしいところ、10人しか採用できず、本社から増員があったくらいです。

オープン当初「アルバイトのみんなに、希望ポジションを1ヶ月で覚えてもらうこと」を目標としていました。1店舗目に比べ、社員が少なかったこと、本社からの増員が長くても2ヶ月だったことから、アルバイトに早期に麺場を含む各ポジションを教える必要があったのです。

教育は、社員が各ポジションのアルバイトにつき、営業と同時に行うOJT形式でした。
月の売り上げが1000万円ほどの「オープン景気」、アルバイトのほとんどが未経験で、忙しさの極みではありましたが、スタッフの間では、社員がアルバイトに教え、アルバイトはわからないことは社員に聞くという関係性ができました。

オープンから1ヶ月~2ヶ月ほど経ち、アルバイトからは、以下のような声も聞こえるようになりました。

「次は〇〇のポジションをやりたい」
「どうすれば時給が上がるのか教えてほしい」
「進路に迷っているので、話を聞かせてほしい」

この店でも、1年ほど勤務しました。
当初、大学生は3人おり、途中で2人採用し、計5人となりましたが1人も辞めていません。

ここでは、以下のようなメリットを肌で感じました。

■ アルバイトが自ら学び、聞く姿勢
■ 育てたアルバイトが、新人アルバイトを教育、社員が監督
■ 社員がアルバイトの教育以外(仕事や休養)に時間を使える
■ アルバイトが希望のシフトに入りやすくなる
■ 相談事があれば、何でも相談する
■ アルバイトが責任感を持って勤務(辞めない)

1店舗目とは異なり、麺場のできるアルバイトがたくさんおり、アルバイトが辞めてしまうこともなかったので、無理なく余裕を持った店舗運営を行うことができました。

大学生を辞めたいと思わせず、スキルアップさせるには「任せる」のがいい

1店舗目では「大学生が辞めていく」、2店舗目では「大学生が辞めず、スキルアップしていく」という状況でしたが、「大学生に『任せていた』かどうか」の違いがありました。

2店舗目で実践していた「任せる」の具体例は以下の通りです。

■ 麺場を含め、主要なポジションの仕事を大学生に教育する
■ 大学生を中心に、アルバイトだけで営業する時間帯を設定する
■ 別のポジションに入る際、アルバイト同士で教え合わせ、社員が監督する
■ 定期的に、アルバイトを含めた店舗ミーティングを行い、問題点や悩みを摘み取る

「任せる」は、もちろん丸投げとは違います。
スタッフのモチベーション管理、スキルアップ管理、店のサービスの質などについてきめ細かく、俯瞰的な目が必要になりますし、店の最終的な責任は社員が取ります。

教育の当初は時間がかかるので、「自分がやった方が早い」という気持ちにもなるものです。
しかしながら、一度「アルバイトが自走する文化、仕組み」を作ってしまえば、店長や社員が休みをつぶしたり、一部のアルバイトに負担が偏ったりなどの無理をなくしつつ、サービスの質を維持・向上することができるのです。

また、大学生に主要なポジションを「任せる」ことで教育を通したコミュニケーションが生まれました。
社員が教え、アルバイトはわからないことを社員に聞きます。
社員がアルバイトのモチベーションやスキルを管理する中で、各アルバイトを人として関心を持って見て、お互いに仕事以外の話題も話しかけるようになりました。

任せることでコミュニケーションが生まれ、これを通して、アルバイトは社員を「師」として、社員はアルバイトを「同志」として敬意を持って接する信頼関係ができていったのです。

 

「大学生アルバイトを戦力化できるかどうかは、コミュニケーション」という調査結果

各種データからも、「大学生アルバイトを戦力化できるかどうかのカギは、コミュニケーションにある」ということがわかります。

マイナビの大学生アルバイト調査(*2)では、大学生の多くが「アルバイト先の変更・退職を検討する不満」として「職場でのコミュニケーションの問題」を挙げています。

引用:株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

赤枠「職場の人間関係が悪い」(50.4%)はもちろんですが、青枠で囲った問題も、コミュニケーション次第で解決できる場合が多いはずです。
例えば、青枠「仕事がきつい」(26.1%)は、「体力的にはきついけど、店長は理解してくれている」という関係があれば不満は軽減されるでしょう。

また、「シフトの急な変更がある」(20.9%)についても、アルバイトに対して心から感謝し、「ありがとう」と伝えることでフォローできる場合もあるのではないでしょうか。
もちろん「ありがとう」と言えば何でも許されるわけではありませんが、同調査(*3)によれば、「感謝の言葉が大学生アルバイトのやる気に大いにつながる」ということがわかっています。

引用:株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

なんと85.6%もの大学生が、「感謝の言葉をもらったときにやる気を感じる」と解答しています。
一方で、「コミュニケーションがうまくいっている職場ほど、長期就業意向の大学生の割合が多い」ということがわかります(*4)。

引用:株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

赤枠「人間関係がよい職場である」(61.7%)以外の青枠の項目も多かれ少なかれ、コミュニケーションの成否に関係しています。
コミュニケーションさえうまくいけば、「万事解決」というわけではありません。しかし、コミュニケーションで解消、少なくとも軽減できる不満は幅広くあるはずです。

 

まとめ

「任せる」のは当初は時間のかかるもので、ただでさえ忙しい現場では「自分でやった方が早い」という気持ちになりやすいと思います。
責任のある仕事を「任せる」のは、勇気のいることでもあります。
しかし、「任せた」結果生まれた「コミュニケーション」は何にも代えがたいものでした。

すでに紹介したように、コミュニケーションの成否がアルバイトの進退やモチベーションに大きく関係することがデータからもわかっています。「任せる」ことを通して、「コミュニケーション」を積み重ね、「信頼関係」で結ばれた職場を作ることができれば人手不足の解消にもつながるのです。

思い切って「任せる」工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。

きっとアルバイトの皆さんも、それを待っていると思います。

 

*1
引用)参事官(経済財政分析―総括担当)付 上島大和、村上太志「人手不足感の高まりについて」2018年3月2日 
https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2018/0302/topics_052.pdf

(*2)
引用)株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

(*3)
引用)株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

(*4)
引用)株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

 

【著者】
めんおう

 

専業ライター。
大学卒業後、防衛省、民間企業を経てフリーランスへ転向。インターネット、働き方、英語、取材などを中心に活動。
ブログ:めんおうブログhttps://www.zinseitanosiku.com/
Twitter:https://twitter.com/mennousan)

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