組織・チーム
/

アルバイトの採用や働き方でも意識したい、SDGsの考え方とは

国連で2015年に採択され、いま全世界で取り組みがなされている「SDGs」。
「持続可能な開発目標」のことで、社会に存在するあらゆる分野の課題解決を進め、同時に経済発展もしていこうというもので、わかりやすい例としては環境問題への取り組みといったものがあります。

SDGsについて聞いたことはあるが関心はない、あるいは何から始めて良いかわからない、という声が多いようです。
しかし難しく考えずとも、とても身近なところから始められるのです。
また、SDGsについて知らなかったという事業者の方もこれを機に、少し考えていただければと思います。

目次

SDGsで広がる企業活動の可能性

中小企業とSDGs

事業の中でのSDGs取り組み事例

「SDGs」という意識のないまま、行列ができた飲食店

アルバイト雇用とSDGsについて考えてみる

まとめ

SDGsで広がる企業活動の可能性

国連がSDGsで掲げているテーマは多岐に渡ります。
環境問題、貧困の問題、ジェンダーの問題、教育格差など様々です。

大きく17つに分類したのが下のテーマです。

図1 SDGs17のゴール
(出所:「すべての企業が持続的に発展するために-持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド-」環境省)
http://www.env.go.jp/policy/SDGsguide-honpen.rev.pdf p3

一方で日本国内、特に中小企業の場合、やはり「余裕がない」などの理由で二の足を踏んでいるところが多いようです(図2)。

図2 SDGsに対する認識(出所:「2019年版中小企業白書」中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf p344

また、「国連が掲げたテーマ」となると壮大な印象を受けますし、中には遠い国の話、のように感じてしまい「自社とは関係ない」と思ってしまうかもしれません。
しかし実は、身近なところから多額の費用を出費せずとも、自社の業務のちょっとした延長から始められます。

そして、SDGsに取り組むことで生まれるメリットとして、環境省はこのようなものを挙げています(図3)。

図3 SDGsで広がる企業の可能性
(出所:「すべての企業が持続的に発展するために-持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド-」環境省)
http://www.env.go.jp/policy/SDGsguide-honpen.rev.pdf

では、どのように始めれば良いのでしょうか。

中小企業とSDGs

SDGsが掲げる17つの「ゴール」の中で、中小企業が
「これなら自社が直接的に行動・貢献できそうだ」
と考えている項目の上位はこのようなものです。

「働きがいも経済成長も(ゴール8)」:13.4%
「全ての人に健康と福祉を(ゴール3)」:9.6%
「貧困を無くそう(ゴール1)」:8.4%
「住み続けられるまちづくりを(ゴール11)」:8.0%

<引用:「中小企業のSDGs認知度・実態等調査 結果概要」関東経済産業局)>
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/seichou/data/20181213sdgs_chosa_houkoku_gaiyo.pdf p4

この中でもっとも多い「働きがいも経済成長も」というのは、例えば自社の従業員に働きがいを持ってもらおう、そして会社としても成長しよう、という、ある意味では「当たり前」のことです。

そこにきちんと「社会としても必要なことなんだ」という意識があるかどうかだけの違いだとも言えます。

「全ての人に健康と福祉を」。
これも、まず自社の従業員にそのような環境を与えるというところから始められます。

世界や社会の問題にいきなり介入するのは難しいことです。
しかし、社会問題の解決というのは、まず自社の足元から、というのが基本です。
それだけで十分な取り組みなのです。
多くの企業が同じ意識を持てば、「少し」の積み重ねで変化していく物事は多く、その「積み重ね」の一員となることが大切です。

むしろ、張り切りすぎてそこにお金や人材を投入したはいいものの、やはり経営の負担になって「続けられなくなった」、これでは逆に意味をなさないとも言えます。

「できる範囲」であることは大前提なのです。「持続可能な」活動であることが重要です。

 

事業の中でのSDGs取り組み事例

政府は年に一度、「ジャパンSDGsアワード」として優れたSDGsの取り組みをした企業や団体を表彰しています。

その受賞企業のひとつ、横浜市の印刷会社では、大気汚染や化学物質の原因となる揮発性有機化合物を使わない「ノンVOCインキ」を積極的に使用することで従業員や顧客の健康を守る一助としています。
印刷機に使用する溶剤にも配慮し、人体に有害な有機溶剤の使用を注視しています。

納品時の容器もダンボールを使うのではなく、繰り返し使えるプラスチックコンテナを使用するなど、事業の範囲内でSDGsを実践しています。

また、社内で全従業員を対象にしたワークショップを行うことで、従業員全体に問題意識を持たせるといった身近な活動なども行なっています。

政府が評価している受賞理由はこのようなものです。

<引用:「ジャパンSDGsアワード」外務省>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/award2_9_ookawainsatsu.pdf

もう一つは、近隣の企業どうしが協力し、地域としてSDGsを実践している例です。

北九州市の商店街では、SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」形を模索しています。
飲食店のフードロス削減、規格外野菜の地産地消を日常的に続けているほか、利用客には公共交通機関を利用するよう呼びかけもしています。

また、「人」に対する取り組みもあります。
商店街内で空き店舗、空きビルになっている物件を再生し、若手起業家やワーキングマザーが利用できるスペースを作っているほか、ホームレスや障害者の支援、多言語マップの作成などその活動は多岐に渡ります。

受賞理由として挙げられてるのはこのような点です。


<引用:「ジャパンSDGsアワード」外務省>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/award3_1_uomachishoppingstreet.pdf

ひとつの店舗や企業では難しい規模の取り組みも、地域として協力することで可能になっているという良い事例でもあります。

 

「SDGs」という意識のないまま、行列ができた飲食店

さて、もうひとつ面白い事例を紹介しましょう。

奈良県のあるとんかつ店では、地域への貢献として、経済的に余裕のない人やその子供に無料で食事を提供するという取り組みを行なっていました。

それがある所で知られメディアで取り上げられると人が押し寄せるようになり、行列のできる店になりました。
無料で食べることを目的にして集まったのではなく、店の活動に共感した人たちの来店です。

次にこのとんかつ店が考案したのは、メニューの一部に日替わりのスポンサーをつけることです。
近隣の企業から5000円~1万円といった小口の寄付を募り、利用客にそのメニューを半額で提供するという仕組みです。
そして店内で、その日寄付をした企業名を紹介することで、企業側にもメリットが生じるというシステムです。

もともとこのとんかつ店の商品が好きだという企業から、地域の人々に気持ちだけでも恩返ししたいという相談があり、この形が始まったと言います。

貧困という課題解決は、「SDGs」という意識のないまま始まっています。
しかし結果的にはSDGsの理念に合致するものです。そして、スポンサー制度という存在が、取り組みを持続可能なものにしています。

 

アルバイト雇用とSDGsについて考えてみる

では、アルバイトを雇用するという行為の中でどのようなSDGsに取り組むことができるか、その可能性を探ってみましょう。

SDGsの「17のゴール」に照らせば、このような意識ができると考えます。

1)貧困をなくす
2)すべての人に健康と福祉を
3)ジェンダー平等の実現
4)働きがいも経済成長も

といった項目です。

あくまで例えですが、
1)貧困をなくす、という観点からみれば、例えばシングルマザーなどの片親世帯の採用にを積極的に考える、働きやすい環境を作るといったことが挙げられるでしょう。
2)すべての人に健康と福祉、という観点では、健康に関することに使うための手当を作る、外部講師などを依頼して健康に関するセミナーやワークショップを行う、といったことも考えられます。

3)ジェンダー平等という意味では女性の積極採用、
4)働きがいも経済成長も、というところでは、従業員が何をやりがいと感じているのかを定期的に聞き取り、よりモチベーションの上がる方法を考える、といったことです。

また、今回のコロナ禍では、業種を超えた「従業員シェア」で従業員の生活を少しでも良くしようという動きがみられました。
従業員の生活を第一に考えた時、できる限りのことをする、話し合うことも大切です。

そう大きな規模で考えず、自社の近隣で困っている人に何かできないか、従業員の生活を充実させられないか、といった身近なところから始めることができます。

近隣にある問題が社会や地球の問題の縮図である、といったことはよくあります。
そこに目をつけてみてはいかがでしょう。

 

まとめ

従業員や地域への「恩返し」の感覚から
企業は従業員や地域によって「生かされている」存在でもあります。

例えば今回のコロナ禍で、いつもランチに行っていた店が営業自粛を強いられた時、多くの人がテイクアウトを積極的に利用するようになりました。
美味しいものを食べたいということもあるでしょうが、地域で困っている企業を少しでも応援しよう、という心理は誰にでも生まれるということが良く分かる出来事です。
何十万円、何百万円といった寄付をできるわけではありませんが、それで良いのです。

同様に、多少なりとも地球の資源や人手、地域のおかげで企業が業務を続けられているとしたら、そこに何らかの「恩返し」をすることは必要です。
お金ではないけれども、地球環境や周囲の人に何かを返せないか、自社の業務の延長で何ができるか、そういったことこそがSDGsへの第一歩です。

無理をして資金や人手を使いすぎると、それは持続可能な活動ではありません。業務も資源もずっと持続可能な状態でいられることが必要です。

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka

あなたにおすすめ記事


アルバイト採用のことなら、マイナビバイトにご相談ください。

0120-887-515

受付時間/平日9:30~18:00

当サイトの記事や画像の無断転載・転用はご遠慮ください。転載・転用についてはお問い合わせください。

掲載料金・求人掲載のお問い合わせ