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食品ロスの実態を正確に把握し、問題解決に向けて真剣に向き合おう

日本語の「もったいない」という言葉は他の言語に翻訳するのが難しいと言われています。モノを大切に扱い、とことん使い切る、そうした価値観や美意識がこの言葉には反映されています。
ところが、食品ロスに目を向けてみると・・・、その実態と影響は大変、深刻です。
今こそ食品ロスについて真剣に考えるべきときではないでしょうか。

 

食品ロスの実態

食品ロスの定義は、以下のように非常にシンプルです *1:p.5。

「本来食べられるのに捨てられる食品」

では、国内外の食品ロスは、現在、どのような状況なのでしょうか。

~日本の食品ロスの現状~
まず、日本の食品ロスからみてみましょう(図1)。

図1 日本の食品ロス量(2017年度)
出典:*2 農林水産省(2020)「食品ロスとは」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html

ここで押さえたいポイントは2つ。
ひとつは、家庭系と事業系の食品ロスがおおよそ半々であること。
もうひとつは、日本の食品ロス量は、国連世界食糧計画による食料援助量(約390万トン)の1.6倍にあたるほど多いということです *1:p.5。

~世界の食品ロスの現状~
次に、世界に目を向けてみましょう。
世界全体では、人間の消費向けに生産された食料のおおよそ3分の1、1年で約13億トンが捨てられています。

では、1人当たりの食料ロスはどのくらいでしょうか。


図2 各地域における1人当たりの食料ロスと廃棄量
出典:*3 農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」 p.14
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf

上の図2の上部、農業生産から消費までの連続した段階をフードサプライチェーンと呼びます。
バーのブルーの部分はサプライチェーンの途中の段階を、赤の部分は最終の消費段階を表しています。

この図のポイントも2つ。
ひとつは、開発途上国より先進地域の方が無駄にしている食料が多いこと。
もうひとつは、低所得国ではフードサプライチェーンの途中の段階で食料が失われることが多く、消費段階で捨てられる量はごく少ないのに対して、中・高所得国ではかなりの割合が消費段階、つまり消費者の手に渡ってから無駄にされているということです。

このことから、先進国の食習慣が食品ロスに影響していることが指摘されていますが *1:p.12、このことは、対策を考える上での大きなポイントです。

 

食品ロスの問題点

ここでは、食品ロスの主な問題点についてみていきます。

~環境問題~
環境問題は、2つに分けられます。

まず、食品生産の段階で多量のエネルギーが消費されるという問題です。
2019年8月に公表されたIPCCの報告書によると、食料の生産・製造に伴って排出されるCO2量は、人為起源のGHG(温室効果ガス)総排出量の21-37%を占めると推計されています。
食品ロスは、食品だけでなく、生産段階でのこうした消費エネルギーも無駄にし、さらに過剰なエネルギーを使ってより多くの食品を生産しなければならないという悪循環につながります。

次に、特に水分の多い食品を捨てる際に、焼却炉まで運搬したり焼却したりすることによってCO2が排出される点も問題です。
上述の報告書では、世界の食品ロスとその廃棄のために排出されたCO2は、2010-2016年の間に排出された人為起源のGHGの8〜10%を占めたという推計が報告されています。

こうした問題点が解決できれば、GHG排出量を大幅に低減することが可能です *3:p.6。

~食糧問題~
世界の食糧問題は楽観を許しません。
2018年に世界の栄養不足人口は8億2,160万人で、9人に1人の割合でした(図3)。


図3 世界の栄養不足人口とその割合
出典:*1 消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」 p.14
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf

今後はさらに厳しい状況が訪れようとしています。
2019年に約77億人だった世界人口は、2050年には97億人に達すると推計されているからです*1:p.13。

食品ロスの一方でこうした深刻な食糧問題があることを真剣に受け止める必要があります。

~食料自給率~
次に食料自給率と農産物輸入額をみたいと思います(図4、図5)。


       図4 日本と主要国の食料自給率     図5 主要国の農産物純輸出入額(2016年)
出典:*1 消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」 p.9
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf

これらの図から、日本は食料自給率が37%と非常に低く、農産物の多くを輸入に頼っていることがわかります。
地球上には必要な食料にアクセスできない人が大勢いる中で、日本は海外から多くの食料品を輸入しながら、多くの食品ロスを発生させているという状況なのです。

以上、食品ロスの主な問題点を概観し、それらの問題を解決することがよりよい社会の実現につながることをみてきました。
では、食品ロスはどうすれば解決するのでしょうか。

 

食品ロスの対策

ここでは、食品ロス削減のための対策について考えます。

~削減目標~
食品ロスが注目されるようになったきっかけは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)です。

このSDGsのターゲット12.3 および 12.5には、以下の図6の右にあるような目標が掲げられています *4:p.22-23。

図6 SDGsの食品ロスに関するターゲット
出典:*3 農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」 p.4
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf

次に日本における食品ロスの削減目標をみてみましょう。

家庭系・事業系のどちらの食品ロスについても、食品リサイクル法が制定された2000年度比で2030年までに半減するという目標が、法律に基づいて設定されています(図7) *1:p.25、*3:p.19。


図7 事業系食品ロスの推移と半減目標
出典:*3 農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」 p.19
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf

では、こうした目標を達成するためには、どのような対策が必要でしょうか。
これから、主要な対策に絞ってみていきます。

~事業系食品ロスの対策~
まず、事業系食品ロスの要因のひとつ、日本特有の「3分の1ルール」の見直しについてみます(図8)。


図8 3分の1ルールの見直し
出典:*3 農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」 p.31
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf

このルールは、賞味期限に関わるものです。
賞味期限とは、決められた保存方法を守って保存した場合に「品質が変わらずにおいしく食べられる期間」のことです *5。

賞味期限が6カ月の商品をスーパーで売る場合を考えてみましょう。
図8の一番上が3分の1ルールです。
6カ月を3等分し、最初の2カ月までに商品をスーパーに納品できない場合、卸売り業者はその商品をメーカーに返品しなければなりません。

販売期間は次の2カ月までで、その期限になると、スーパーはまだ消費期限の残っている商品を卸売り業者に返品します。
このようにして、消費者の手に渡ってから最低2カ月の賞味期限を確保するわけです。

このルールは食品ロスを発生させます。
2017年に、卸・小売からメーカーへの返品は年間562億円、小売から卸への返品年間247億円だったと推計されています *3:p.29。

そこで、今後は図8の一番下のように、納品期限を3カ月に延長し、その後の販売期限を2カ月、
あるいは1.5カ月にすることによって返品を減らすような取組が望まれます。

また、消費者もこうした仕組みを理解し、店頭で賞味期限までの期間が長い商品を選ばずに、棚の一番手前に並べられているものを購入して、食品ロス削減に協力する姿勢が大切です。

~フードバンク~
食品ロスを削減する活動のひとつにフードバンクがあります。
その取組は、
「生産・流通・消費などの過程で発生する未利用食品を食品企業や農家などからの寄付を受けて、必要としている人や施設等に提供する」 *3:p.67。
というものです(図9)。


     図9 フードバンクの仕組み                 図10 活動開始時期
出典:*3 農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」 p.67
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf

アメリカで始まったこの活動には既に約50年の歴史がありますが、日本ではまだ広がり始めたところです(図10) *3:p.67。

まだ食べられるのに商品として売ることができない食品を必要な人に届ける―こうしたフードバンク活動を普及させていくことも有益です。

~消費者にできること~
では、私たちは消費者としてどのような取組ができるのでしょうか。
まず、家庭からの食品ロスの原因を探ってみましょう(図11)。


図11 食べられるのに捨てた理由(複数回答)
出典:*6 政府広報オンライン(2019)「もったいない! 食べられるのに捨てられる 『食品ロス』を減らそう」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

この図は消費者庁が2017年に行ったアンケート調査の結果です *6。

食べられるのに捨ててしまった理由は、どれも日常生活での「うっかり」ではないでしょうか。
でも、その「うっかり」が積み重なって、思いもよらないほどの食品ロスを生じさせています。
そのことを真剣に受け止め、まずは意識を変えることから始める必要がありそうです。

 

 おわりに

以上みてきたように、食品ロスは私たちの身近にある深刻な問題です。
でも、身近ゆえに、私たちの意識が変われば、解決に近づいていける問題でもあります。
生きるために必要な食べ物が世界中のすべての人に行き渡るように、また地球環境を守るためにも、まずは私たちの意識を変え、一人ひとりができるところから取り組んでいくことが必要ではないでしょうか。

 

 

*1
消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf
*2
農林水産省(2020)「食品ロスとは」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
*3
農林水産省(2020)食料産業局「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢 令和2年5月時点版」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-149.pdf
*4
外務省(2015)「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 仮訳」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf
*5
農林水産省「子どもの食育>消費期限と賞味期限」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html
*6
政府広報オンライン(2019)「もったいない! 食べられるのに捨てられる 『食品ロス』を減らそう」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

プロフィール

横内美保子

 

 

 

博士。元大学教授。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。
Webライターとしては、各種統計資料の分析に基づき、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

 

 

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