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薬剤師のアルバイトと派遣|ブランクから復帰・転職をする時の注意点を解説

一般的に、薬剤師は出産・育児・介護などで一定期間ブランクが生じても、資格を活かして復職しやすい職種です。
しかし、復職を望んでいても、何らかの理由で職場復帰をあきらめている薬剤師も相当数いると考えられます。

少し古い資料ですが、平成12年末の薬剤師届出データによると、薬剤師の届け出をしていない人の割合は20~30代の女性に多く、その多くが無職であると推測されています*1。

引用)厚生労働省「政策について>審議会・研究会等>医薬・生活衛生局(生活衛生・食品安全)が実施する検討会等>薬剤師需給の将来動向に関する検討会>第1回薬剤師需給の将来動向に関する検討会議事次第>資料10.薬剤師需給の予測について(平成14年9月27日薬剤師問題検討会)」*2
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/s0528-3.html
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0528-3j.pdf P18

無届者の割合は30代半ばの40%弱がピークで、30代後半から徐々に減少しています。
しかし無届者の割合が20%を下回ることはなく、50代半ば以降は高齢になるにつれて無届者の割合が少しずつ増加しています。

無届者が必ずしも無職とは限りませんが、
「結婚・出産・子育てなどで離職する女性薬剤師の半数近くが薬剤師として復職しないこと」
「子どもが独立するころには復職自体が難しくなること」
が、この資料からは読み取れます。

しかし、「復職しない薬剤師」=「復職を希望しない薬剤師」とは限りません。

そこで今回は、復職の際にネックとなる知識やスキルのブランクを克服し、無理のない働き方で少しずつ現役復帰を目指したい方のために、職場選びのポイントや注意点などを解説します。

目次

ブランクのある薬剤師が働きやすい職場

ブランクのある薬剤師が避けるべき職場

本格的な職場復帰を視野に入れて働き方を考えよう

ブランクのある薬剤師が働きやすい職場

ブランクのある薬剤師が働きやすい職場は、アルバイトやパートとして働く場合と、派遣薬剤師として働く場合で異なります。

・アルバイト・パートの場合
アルバイトやパートとして働く場合は、研修制度が充実している大手の調剤薬局がおすすめです。

中途採用者向けの研修としては、
集合研修のような形で短期集中型の研修を実施するケース
慣れるまで先輩薬剤師が指導する体制が整っているケース
指導薬剤師を決めず、薬局全体でフォローする体制になっているケース
簡単な調剤から一包化・服薬指導など徐々に業務内容をステップアップするシステムになっているケース
など、企業によってさまざまです。

入社から数か月間のフォロー体制を確認し、安心して働ける薬局を選びましょう。

・派遣の場合
派遣薬剤師を求めている薬局は、人手不足で指導体制が十分ではないところも少なくありません。
ブランク明けで知識やスキルに自信がない場合は、未経験者可としている薬局を選ぶようにしましょう。
整形外科や眼科など、処方の内容が比較的シンプルな診療科の門前薬局もおすすめです。

ただし、派遣薬剤師の受け入れ実績がない薬局はおすすめできません。
派遣薬剤師の受け入れ実績が十分にあり、派遣薬剤師と正社員の役割分担がはっきりしている薬局。
例えば、最終監査は必ず正社員が担当し、派遣薬剤師は投薬あるいは調剤のみ、などであれば、安心して働くことができます。

ブランクのある薬剤師が働きやすい職場(アルバイト・パート薬剤師として働く場合)
 フォロー体制が充実している大手調剤薬局

*中小薬局は、人材育成の手間がないベテランを求めていることが多い。
*ドラッグストアは、土日・深夜勤務を求められる可能性がある。薬剤師の人数を抑えているドラッグストアでは、先輩薬剤師の十分な指導を期待できない事が多い。
*病院は即戦力を求める傾向があり、中途採用者の研修制度が未整備のところが多い。

ブランクのある薬剤師が働きやすい職場(派遣薬剤師として働く場合)
 未経験O.K.の薬局
 処方内容がシンプルな診療科の門前薬局
 派遣薬剤師の受け入れ実績がある薬局
 派遣薬剤師と正社員の役割分担がはっきりしている薬局

*派遣薬剤師の受け入れ実績がない薬局では、社内ルール(業務や責任の範囲)が定まっていないことが多い。

ブランクのある薬剤師が避けるべき職場

上記のような薬局が見つからず、ほかのタイプの薬局に就職する場合であっても、以下のような職場は避けたほうが無難です。

・アルバイト・パートの場合
薬剤師数、特に正社員の薬剤師が少ない薬局は避けましょう。
パート薬剤師のほうが勤務歴が長く、しっかりしているという薬局もありますが、何らかのトラブルが生じたときにフォローが期待できるのは正社員や管理薬剤師です。
また、子どものいるパート薬剤師が多いと、学校イベントなどが重なった場合に希望通りの休みが取れない可能性があります。
公私ともに、正社員のフォローが期待できる薬局を選ぶようにしましょう。

時短勤務を希望している場合は、開業医の門前薬局も避けたほうが無難です。
開業医の門前薬局の場合、終業時間が決まっていても最後の患者さんの診察が終わるまで帰れない可能性があります。
家族の理解や協力が得られない場合は、避けたほうが良いでしょう。

また、仕事を始める時期にも注意が必要です。

冬期の内科・夏期の皮膚科・冬~春期の耳鼻科の門前薬局は処方せん枚数が非常に多く、受付枚数が通常期の1.5倍以上になるケースもあります。
繁忙期は、先輩薬剤師から十分なフォローが受けられないだけではなく、知識やスキルが不十分な状態であってもほかの薬剤師と同じレベルの働きを求められることが少なくありません。

できれば繁忙期の数か月前に就職し、繁忙期には一通りの業務がこなせる状態になっているのが理想です。

・派遣の場合
ブランクが長く、知識やスキルに自信がない場合は、即戦力を強く求める職場を避けるようにしましょう。

例えば、新規に開店する薬局の場合、派遣薬剤師は即戦力として働くことが強く求められます。
大手チェーン薬局の店舗であっても、先輩薬剤師や正社員のフォローを十分受けられるとは限りません。

処方せん枚数に対して薬剤師数、特に常勤の薬剤師数が少ない薬局も業務量が多くなりがちです。
薬剤師一人当たりの処方せん枚数が多ければ、当然のことながら余裕は少なく、派遣薬剤師のフォローに人手を割くこともできません。
状況によっては残業が長時間化するなど、重い負担を背負うことになります。

少しずつ知識やスキルを蓄積して仕事のカンを取り戻したい場合は、時給ではなく仕事内容を重視して派遣先を選ぶようにしましょう。

ブランクのある薬剤師が避けるべき職場
★アルバイト・パート薬剤師として働く場合
正社員が少ない薬局
開業医の門前薬局(終業時刻まで勤務する場合)
薬剤師一人当たりの処方せん枚数が多い薬局

★派遣薬剤師として働く場合
新規開店薬局
薬剤師一人当たりの処方せん枚数が多い薬局
残業を断りにくいなど正社員と同等の負担を強いられる薬局
派遣薬剤師の受け入れ実績がない薬局

 

本格的な職場復帰を視野に入れて働き方を考えよう

アルバイトやパート薬剤師として働く場合は、いずれフルタイムで働くことも視野に入れて職場選びをしましょう。
可能であれば、アルバイト・パートから正社員になるキャリアプランのある企業に勤めるのがおすすめです。

派遣薬剤師の場合は、基本的に数か月で職場を変わることが前提です。
復職直後は、単科クリニックや薬剤師一人当たりの処方せん枚数が少ない門前薬局からスタートしましょう。
自信がついてきたら、処方内容の複雑な科や処方せん枚数の多い総合病院の門前薬局へとステップアップしていくのが理想です。

「長期間働きたいけれど、職場復帰に不安がある」という場合は、紹介予定派遣を利用するのも選択肢の一つです。紹介予定派遣の求人件数は少なめですが、興味のある方は求人サイトなどで検索してみてください。

いずれにせよ、数年のブランクを経て復職を希望する場合は、人材派遣会社や大手の転職サイトなどを利用して就職先を探すとよいでしょう。
ブランクや職場復帰に対する不安、希望する働き方などが求人先に伝わりやすくなり、条件が合えば研修制度が充実している企業を紹介してもらうことも可能です。

復職で失敗し、職場復帰をあきらめてしまうと、今まで積み上げてきたキャリアが無駄になってしまいます。
上手に転職・就職をして、職能を発揮しましょう。

 

参考文献・参考サイト
*1
参考)厚生労働省「政策について>審議会・研究会等>医薬・生活衛生局(生活衛生・食品安全)が実施する検討会等>薬剤師需給の将来動向に関する検討会>第1回薬剤師需給の将来動向に関する検討会議事次第>資料10.薬剤師需給の予測について(平成14年9月27日薬剤師問題検討会)」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/s0528-3.html
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0528-3j.pdf P4
*2
引用)厚生労働省「政策について>審議会・研究会等>医薬・生活衛生局(生活衛生・食品安全)が実施する検討会等>薬剤師需給の将来動向に関する検討会>第1回薬剤師需給の将来動向に関する検討会議事次第>資料10.薬剤師需給の予測について(平成14年9月27日薬剤師問題検討会)」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/s0528-3.html
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0528-3j.pdf P18

・名前:中西 真理
・プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

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