新型コロナウイルスの影響で収入が減り、副業を検討する人も少なくありません。
こうした中、短時間で多額の収入を得られるとかたり、逆に申込者からお金を騙し取るような「副業ビジネス」業者が相次いでいます。
中には100万円、200万円を騙し取ろうとする業者もあり、消費者庁などが注意を呼びかけています。
これらの業者はどのような誘い文句で消費者に近づき、どのような手段でお金を騙し取るのか、事例と被害防止のための注意点を紹介します。
目次
「一日30分でプラス10万円の月収」
消費者庁は2020年10月に、「副業で儲かる」とうたう2業者についての注意喚起を呼びかける発表をしました。
「まずは月収+10万円」
「一日30分程度のお時間で+10万円を可能にするシステム」
などという売り文句で、転売の副業でお金を稼ぐためのサービスを提要する、とアプローチしてくる業者です。
SNSメッセージが送信されてくるのが始まりです。このような内容です。
「一日30分程度のお時間で+10万円を可能にするシステムをぜひ、明日から体験してくださいね(^^)」
「毎月の収入に+10万⇒一年以内に+30万円!!!」
「【再現性100%!デメリットを排除するツール】」、「自力で商品を検索する手間を大幅にカット!」「在庫を抱える心配も無し!」
<引用「毎月10 万円もうかるビジネスなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者2
社に関する注意喚起 」消費者庁>
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_201007_01.pdf.pdf p1
メッセージに書かれたリンクをクリックした消費者は、業者のウェブサイトへ誘導されます。
すると今度は、
「今の頑張りは未来のあなたの資産になる まずは月収+10 万円」
「再現性100%を達成できる仕組み 売値も仕入れ値も最初から決まっています
だから、誰がやっても同じ収益を上げることができます」
<引用「毎月10 万円もうかるビジネスなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者2
社に関する注意喚起 」消費者庁>
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_201007_01.pdf.pdf p2
といった売り文句で、この業者が提供する9800円のサービスに申し込むよう求められます。
9800円を払ってサービスを利用すれば転売ビジネスで確実にお金を稼げるようになる、と考えた人は、申し込んでしまいます。
ここで話は終わりません。「有料プラン」を勧められるのです(図1)。
図1 業者が勧誘する有料プラン
(出所「毎月10 万円もうかるビジネスなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者2
社に関する注意喚起 」消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_201007_01.pdf.pdf p6
非常に高額ですが、「40万円のコースに入れば、毎月10万円、年間トータル100万円は必ず儲かる「110万円払ってもそれ以上に稼げるから大丈夫」「78歳のお年寄りでも月30万円は稼いでいる」との売り文句を並べます。
しかし消費者庁によると、まず最初の9800円を支払っても何の情報も得られず、結局は有料プランに申し込まなければ情報は提供されないこと、そして高額の有料プランに契約しても、「確実に売れる」商品の情報などは手に入らなかった、というものです。
この件について、消費者庁はこのような注意喚起をしています。
・ 一般の消費者が短時間・片手間で「せどり」※をしてもまず稼げません。
・大手通販サイトの規約では、上記の無在庫販売は禁止されています。
※ 商品を安く購入して高く販売し、その差額でもうける転売ビジネスのこと。
<引用「毎月10 万円もうかるビジネスなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者2
社に関する注意喚起 」消費者庁>
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_201007_01.pdf.pdf p6
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後を絶たない「情報商材」トラブル
「料金を支払えば儲かるテクニックを紹介する」というこうしたビジネスは「情報商材」と呼ばれます。
何らかの「情報」をファイルや冊子にして「商材」として販売するものです。
情報商材を販売することが直ちに違法というわけではありません。
購入者にとって本当に有効なものであれば、それは商品として成立します。
しかし、上記の例に似たものとして「転売」についての情報を販売するというものもあれば、他の副業や投資について「必ず儲かる」とうたうものもあります。
この「必ず儲かる」といったものには注意が必要です。
情報商材に関する相談は急増しています。
2013年から2018年の5年の間だけでも10倍強に増えているという状況です(図2)。
図2 情報商材に関する相談件数の推移(出所「令和元年消費者白書」消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/white_paper_214.html
なお、相談の中で最も多い契約金額は10万円以上50万円未満となっています(図3)。ある程度高額にならないと、怪しいと感じられていない可能性があります。
図2 情報商材に関する金額別相談件数(出所「令和元年消費者白書」消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/white_paper_214.html
最近では、先に挙げた例の他には、
「先行モニター57名全員が月30万円以上稼いだ 食事や風景の写真を楽しんでいるだけ!毎日5千円~1万円が稼げる超次世代型錬金術」
「・モニター58名全員が月30万円達成
・本を1日5分音読するたびに日給1万円の入金が確定
・必要な作業は5分間スマホに向かって音読するだけ」「・前回のモニター参加者38 名全員が初月に50万円以上の報酬を獲得しました!
・ただあなたのお気に入りの動画をご紹介していただくだけ!たったこれだけのビジネスです!
・あなたは毎日1万円から3万円、最大で10万円ほどの報酬を受け取ることが出来ます! 」
といった情報商材業者について、消費者庁が業者の実名をあげて注意喚起を発表しています*1。
いずれも、最初は1万円程度の情報商材を購入させ、その後執拗に高額な商材購入を勧誘するパターンです。
中には200万円の情報商材を購入するよう勧誘するものもありました。
「舞台装置の簡略化」で詐欺的勧誘は拡大
実態のない儲け話は以前から数多くあり、筆者も警察担当記者時代に多くの詐欺事件を担当しました。
当時の話ではありますが、自社が海外で財宝発掘プロジェクトを実施しているように装い、プロジェクトに投資すれば発見した宝を売った資金で利益を得られるとうたって金集めをしていたという事件がありました。
この事件では、逮捕された経営者は大手ホテルで説明会と称した記者会見まで行い、そこには「発掘した財宝」とするものを並べたショーケースまで持ち込むという手の込みようでした。
ニュースリリースやパンフレットも配布し、自らテレビのインタビューにも応じて見せて、全く新しいビジネスであることやどんなに価値のあるものを自分たちが世界の海で見つけているか、試算でいくら分位確保できているかを流暢に語っていました。
しかし実態はなく、出資者はお金を騙し取られていただけだということが判明しました。
SNSが普及した現代では、このような大掛かりな舞台装置の必要性がなくなりました。
スマホが1台あれば、架空の経験談や紛らわしい画像をいくらでも拡散できるようになったからです。
情報商材についての相談件数の急激な増加は、SNSの普及も一因と考えられます。
消費者側からしても、ネット上で取引が完結してしまう利便性があります。
被害を防止するために
まず気をつけなければならないのは、「絶対に儲かる」とうたうものの根拠を疑ってみることです。
消費者契約法では、将来どうなるのかわからない財産上の利得について「必ず儲かる」などと確実であるかのように決めつけて勧誘し、消費者を誤認させて結ばせた契約は消費者から契約の取り消しを主張できると定められています。
大手金融機関が販売する投資信託などの商品ですら「必ず儲かる」などとうたうものはありません。
しかし、法の網を掻い潜ろうと、言い回しを工夫したり、解約についてさりげなく条件を設けている業者があってもおかしくありません。
基本的には、お金を払う前に専門機関に相談するのがベストです。
また、怪しいと感じたときの相談先は以下です。
・消費者ホットライン「188」もしくは03-3446-1623
・警察相談専用電話「#9110」
インターネット上だけで完結する取引は、自己責任の色合いも強くなります。
楽に申し込めるからといって、安易に契約完了しないように気をつけましょう。
*1「最初に1万円程度の情報商材を消費者に購入させ、その後に執ような電話勧誘により著しく高額な情報商材を購入させる事業者4社に関する注意喚起」消費者庁
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_200318_0001.pdf
<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka
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