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失業保険はいくらもらえる?解雇、雇い止め、特例措置などケース別に解説

新型コロナウイルスの影響による解雇、雇い止めには歯止めがかからず、失業保険を頼りにする人も増えています。
こうした事態に対応して、10月以降、失業保険の給付制限期間が一部で見直されました。

失業給付を受けるための基本的な条件と、コロナの影響を受けた特例措置についてみていきましょう。
自己都合による退職についても、要件が一部変更されています。一方で注意点もあります。

目次

解雇・雇い止めは7万5000人を超える見込み

失業手当の基本的な受給要件と、いくらもらえるか

コロナによる特例措置と注意点

自分や家族をまもるために

解雇・雇い止めは7万5000人を超える見込み

厚生労働省の12月の発表によると、コロナウイルスの影響での解雇・雇い止めは見込みも含めて累積で7万5000人を超えました(図1)。

図1 コロナに起因する解雇・雇い止め(予定含む)
(出所「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(12 月4日現在集計分)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000702278.pdf p2

業種別にみると製造業、飲食業、小売業で人数が多くなっています。

ここ最近の雇用保険の受給資格決定件数は

2020年(基本手当、延長給付を除く)
3月:106,538件
4月:177,395件
5月:172,515件
6月:158,921件
7月:134,949件
8月:114,964件
9月:114,724件
10月:133,129件

となっており、4月に急増したのち一度は減少傾向を見せたものの、10月に入ってまた増加しています*1。

 

失業手当の基本的な受給要件と、いくらもらえるか

実際、失業保険はいくらもらえるのでしょうか。
これは、年齢やそれまでの収入などによって異なります。

失業手当として受給できる1日あたりの金額を「基本手当日額」といいます。基本手当日額はこのように計算されます。

離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。
<引用「基本手当について」ハローワークインターネットサービス」>
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

また、基本手当日額には、年齢ごとに上限が定められています(図2)。

図2 雇用保険基本手当日額の上限
(出所「基本手当について」ハローワークインターネットサービス)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

そして、この基本手当をいつまでもらえるかを分けるのが、「自己都合」「会社都合」などの退職理由です。

下の図3を見てください。

図3 基本手当の給付日数(出所「離職されたみなさまへ」厚生労働省パンフレット)
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7461/201822684837.pdf p3

会社都合であるにもかかわらず、離職理由を「自己都合」とするよう会社から迫られるというトラブルの話を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、離職理由によって基本手当の給付日数に違いが出てきます。

図3左上は定年や有期雇用の契約満了、自己都合で退職した人の場合の給付日数で、勤続年数が10年以上になって初めて120日間の給付日数になります。
一方右は、会社都合で離職した場合です。特定受給資格者というカテゴリに入ります。
こちらでは、勤続5年以上で120日間の給付を受けられるようになるなど、有利な条件が適用されます。

安易に自己都合としない方が良い、と言われるのはこのためです。

また、離職理由によって、支給開始日も異なります。
ただ、この点については、新型コロナの影響を受けて条件が一部改正されました。

 

コロナによる特例措置と注意点

失業保険は、申請してすぐに振り込まれるものではありません。

基本的な失業手当受給にあたっては、自己都合と会社都合とで、支給開始日が異なります(図4)。


図4 基本手当支給開始と期間(出所「離職されたみなさまへ」厚生労働省パンフレット)
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7461/201822684837.pdf p3

失業手当が支給されるまでには「待機期間」「給付制限」が存在します。
最初に7日間の待機期間があるのは会社都合、自己都合どちらの場合でも同じですが、自己都合の場合さらにそこから3か月待たなければ失業手当は支給されません。
この間、収入が途絶えることになってしまいます。

こうした点について、まず5月に条件の見直しがなされました。

「新型コロナウイルス感染症に伴う雇用保険求職者給付の特例」として、自己都合であっても、以下の場合は特定受給資格者として扱う、つまり早く支給されるうえ有利な条件が適用されることになりました。

・本人の職場で感染者が発生したこと
・本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること
・本人もしくは同居の家族が妊娠中であること
・本人もしくは同居の家族が高齢(60歳以上)であること

を理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合退職した場合です。

この場合は、同居家族に関しての証明書類として医師の診断書や住民票など、職場で感染が発生した場合は事業主の証明などの書類をハローワークに提出する必要があります。

また、2月25日以降の離職者についてはこのような発表もなされています。
以下の場合は、給付制限期間が適用されない場合があるというものです(図5)。


図5 2月25日以降の離職者に関する特例措置
(出所「新型コロナウイルス感染症に伴う雇用保険求職者給付の特例のお知らせ」厚生労働省)
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/000642457.pdf

5月以降の離職者と一部重なっている部分があり、複雑になっています。

また、10月1日以降の離職については、「正当な理由がない自己都合」の離職でも、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月に短縮されることになりました(図6)。


図6 給付制限短縮のイメージ
(出所「『給付制限期間』が2か月に短縮されます~令和2年10月1日から適用 ~」厚生労働省)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/000716670.pdf p1

自己の責めに記すべき重大な理由での退職である場合は引き続き給付制限期間は3か月となります。

 

自分や家族をまもるために

失業保険については様々な特例措置が出され、制度がやや複雑になっています。
どの基準で申請をするのが良いのか、ハローワークに問い合わせましょう。

また、「コロナウイルスの影響での離職」と一口に言っても、解雇ではないものの様々な事情が絡み合っての結果、ということもあるでしょうから、該当しそうな場合は直接相談するのがベストです。

また、解雇や雇い止めに関しては、もう1点注意すべきことがあります。
一般的に、解雇の場合は、30日前までに従業員に通知しなければならないという規定があります。
よって、突然の解雇については30日分の給与を請求できる可能性があります。

しかし、ことを大きくしたくない、訴訟など考えにくい、という場合には「ADR=裁判外紛争解決手続」の利用も検討できます。

ADRとは、裁判所に持ち込まないまま第三者を含めて話し合いができるというものです。非公開で実施されるため、外に対しては匿名性も担保できます(図7)。

図7 裁判とADRの違い
(出所「法的トラブル解決には、『ADR(裁判外紛争解決手続)』」政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201507/2.html

何よりも、まず、一人で悩まないことが重要です。
何かあればすぐに、自治体や各地の労働局、ハローワークなどに問い合わせるのが一番の手段です。

その他にある経済措置としては、所得税や住民税などには最大1年間の猶予、国民年金や国民健康保険には免除措置という制度もあります。
また、自治体独自での水道料金の割引や、民間の生命保険などの保険料も猶予の仕組みがあります。

解雇や雇い止め、離職となると動揺してしまうため、様々なことに対して冷静さを欠いてしまうことは珍しくありません。

こうした予備知識を持っておき、まずどこに相談するかを把握しておきましょう。

*1「雇用保険事業月報 第4表都道府県労働局別一般被保険者の求職者給付状況[A 基本手当(延長給付を除く)」厚生労働省(令和元年度および令和2年度分)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken21/150-1b.html (令和元年度)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken22/150-1b.html (令和2年度)

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka

 

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