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ヤフーの副業募集 ギグパートナーの人材から見えるその狙いと 「オープンイノベーション」

現在、大企業のなかで副業を認める動きが広がりつつあります。
中でも自社の社員に副業を認めるだけでなく、社外から副業者を募集する企業まで、出てきています。

ヤフーはそのうちのひとつで、副業者を自社に受け入れる「ギグパートナー」という枠を設けたところ、多くの応募が殺到し話題になりました。
社員に副業を認めることのメリット、あるいは副業者を雇い入れることのメリットなどについて紹介します。

 

10歳から80歳までの「ギグパートナー」と契約

ヤフーが「ギグパートナー」として副業人材の募集を開始したのは2020年7月です。事業プランアドバイザー、戦略アドバイザーとして100人程度を募集したところ、4500人以上の応募が殺到しました。
そして10月に、応募者の中から選出された104人との業務を開始したと発表しています*1。

ギグパートナーは、年齢も本業の職業もバラバラです。
発表によると、年齢層は

・10代:9名
・20代:26名
・30代:38名
・40代:12名
・50代:2名
・60代:1名
・70代以上:3名

という構成で、本業の職業は、例として

・現役高校生(16歳)
・自動車メーカー勤務(25歳)
・製薬会社勤務(25歳)
・旅行会社勤務(31歳)
・中国ネット総フォロワー数650万人、クリエイター兼番組プロデューサー(34歳)

他には芸人、現役医師、主婦、花火メーカー、社会学者、など実に多彩です。

ヤフーが今回、副業者の募集に踏み切った背景には、コロナ禍でリモートワークがメインになり、通勤時間が削減されるなど、時間に余裕を持って働く人材が増えたことがあります。
かつ、ヤフーが手掛けるサービスについて、いろいろな立場や考え方の人から意見を聞きたいという思惑もあります。
BtoCビジネスならではの、幅広い価値観を受け入れたいという思いも後押ししました。

また、今回ヤフーでの仕事がはじめての副業という人が、64%にものぼるようです。

 

副業の効能

ウィズコロナ、ポストコロナの働き方の方向性はどのようになるか、会社員を対象にしたアンケート調査では、このような結果が出ています(図1)。

図1 ウィズコロナ・ポストコロナの働き方の方向性(内閣官房・未来投資会議資料)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai39/siryou1.pdf p2

期待まじりの回答、という部分もあるかもしれませんが、企業内外を自在に移動する働き方、兼業・副業の一般化は企業にこのような効果をもたらします。

中小企業庁は副業のメリット・デメリットを以下のように分析しています(図2)。

図2 社員の副業のメリット・デメリット
(出所「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言〜パラレルキャリア・ジャパンを目指して〜」中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hukugyo/2017/170330hukugyoteigen.pdf p4

デメリットの克服は必要ですが、企業にとってのメリットとして中小企業庁はこのようなものを挙げています(図3)。

図3 従業員が副業をすることの企業のメリット(出所「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言〜パラレルキャリア・ジャパンを目指して〜」中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hukugyo/2017/170330hukugyoteigen.pdf p5

社内では得られない知識・スキルを、社内で教育せずとも獲得できるというのは最大のメリットでしょう。
また、自由な働き方を許容することで従業員にとっては良い環境になり、離職防止に繋がる効果も期待できます。

異文化の持ち込みで組織が変わることもあります。
筆者のTBS報道局在籍時のことですが、社会部では、事件や事故はニュースの時間に合わせて発生してはくれません。
よって、どんなにギリギリになっても必ず「オンエアに間に合わせる」文化が存在します。実際追い込み作業に強くなります。
それに対して当時の経済部は、放送事故を懸念して、無理をしてまでは間に合わせなくても良い、という判断をする傾向にある部署でした。

しかし、2008年のことでした。
ガソリンの暫定税率が一度失効した時に、日付変更と同時に深夜からガソリンスタンドの激しい値下げ競争が起きるという出来事がありました。
この現象を夜通し取材した後輩が、原稿を書くまでの作業に至らなかったものの、自分でテープ起こしをしたメモをデスクと私の席に残して退社します。

ここまでの努力をなんとか拾えないか、と思った筆者はデスクに
「これで短いVTRを作って昼ニュースに突っ込みましょう」
と提案しましたが、最初の反応は
「そんなことできる?間に合うか?」
というものでした。

しかし筆者は、社会部時代にそんなことは山ほど経験しています。
せっかくの取材の成果を夕方まで出せないことを「もったいない」と考える習慣が身についています。

そこでデスクを説得し、オンエア数分前までギリギリの作業を続けなんとかオンエアに繋げたところ、他部署のデスクから
「経済部がこういうことやるの新しくていいじゃない!もっとやったほうがいいよ」
と声をかけられました。

それ以来、経済部でも長めのVTRを好んで作るようになりました。「やってみよう」という機運が生まれたのです。
それはその後、リーマン・ショックの報道の際にも大いに機動力を発揮し、生かされることになりました。

 

オープンイノベーションの広がり

このように、組織の壁を超えて他社のリソース、異文化・異業種の見地を取り入れることで新しい発想を生み出すことは、オープンイノベーションと呼ばれます。
自社だけで行うクローズドイノベーションの場合、開発そのものが閉鎖的になってしまったり、一定レベルの成長で止まってしまうのです。
日本ではオープンイノベーションの導入割合が欧米に比べて低いという特徴があります(図4)。

図4 日本と欧米のオープンイノベーション導入(出所「オープンイノベーション白書 第三版」NEDO)
https://www.nedo.go.jp/content/100918471.pdf p138

一方で実際、日本国内で研究開発・知財によるイノベーションを阻害する要因の一つとして「新しい技術・知見獲得の機会不足」があります(図5)。

図5 イノベーションの阻害要因(出所「オープンイノベーション白書 第三版」NEDO)
https://www.nedo.go.jp/content/100918471.pdf p130

まさにこの「技術・知見獲得の機会」を、外で副業してもらうことで得てくることが可能になるという部分に大企業は期待し、副業を許可しているのです。

「イノベーション人材」を一から育てるのは難しいことです。時間も予算もかかります。
であれば、餅は餅屋ということです。餅屋に学びに行き、そこで得たものを自社のなかで生かしてもらうことです。
あるいは逆に餅屋の人に時々来てもらうことで、餅屋の人もお客さんについて知ることができます。
そのような形での副業者の行き来は、人材が不足するこれからでは欠かせない視点です。

そして、オープンイノベーションを実施した企業はこのようなリソースを獲得しています(図6)。

図6 オープンイノベーションで得られたリソース(出所「オープンイノベーション白書 第三版」NEDO)
https://www.nedo.go.jp/content/100918471.pdf p141

調達先や販路の獲得にも繋がっているのは見逃せない副産物です。

 

行政によるマッチングサービスも

なお、関東経済産業局はオープンイノベーション推進のために、大手企業、中堅・中小企業、スタートアップ、自治体、産業支援機関、大学、専門家などの交流の場を設けています。
自社単独では解決できない課題を持つ企業と、解決のために新しい技術や屋サービスを提供する企業とのマッチングを行う仕組みです(図7)。

図7 関東経済産業局のオープンイノベーション促進(出所「オープンイノベーション促進に係る取組」関東経済産業局)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/open_innovation/index.html

専用サイトには多くの募集案件が掲載されており*2、企業や組織の枠を超えた共創を後押ししている形です。

 

殻にこもっていては殻ごと置き去りに

風土として、誰もがその弊害に気付きながら排除できていないものを抱える企業が少なくありません。「縦割り」というものです。

切磋琢磨、という意味ではこれまでは良かったかもしれません。しかし社内でいがみ合っているうちに時間はどんどん流れていき、現代はそのスピードが桁違いです。
スキルや技術の賞味期限が短くなっているとも言えます。

まずは「社内副業」「社内兼業」というものがあっても良いでしょう。
とにかく社内の換気をしなければそれ以上の成長はありません。

今回コロナ禍で働き方が変化し、従業員もまた自由な働き方をこれまで以上に求めるようになったことをひとつのきっかけと捉え、変革のチャンスにしてはいかがでしょうか。

*1プレスリリース「ヤフー、応募者4,500人以上から選出された、 10歳から80歳までのギグパートナー104名と業務を開始」ヤフー株式会社
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2020/10/28a/

*2オープンイノベーション・マッチングスクエア「ジェグテック」関東経済産業局
https://jgoodtech2.smrj.go.jp/lp/oi-matchingsquare

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka

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