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ダイハツが副業容認を本格検討、その狙いと新しい働き方とは?

大手企業の副業解禁が進んでいますが、自動車業界の状況はどのようになっているのでしょうか。
自動車業界では2020年に入って、ダイハツが社員の副業を解禁する検討を始めたと報じられました。
100年に一度、と言われる自動車業界の変革期の中でダイハツが副業検討を進める理由を、自動車業界の現状と照らして解説していきます。

 

過去には日産も副業を解禁したが・・・

日刊自動車新聞によると、自動車メーカーによる副業は、現時点で認めている企業はありません。
リーマンショックの影響で日産が2009年、従業員の所得確保のために国内の社員を対象に副業を解禁したということがありました*1。
ただ、このときはあくまで、賃金の目減りを補ってもらうという目的だったのです*2。
「臨時休業を実施している時に限って会社が定めたガイドラインをもとに個別に承認する」というもので、そう自由度の高い制度ではなかったと思われます。

そして今回、ダイハツが副業解禁を検討しているというニュースを聞くと*3、コロナの影響なのかと考える人もいるかもしれませんが、そうでもないようです。

ダイハツは自社の社員の副業解禁の前に、副業先としてダイハツで働く人材を他社から募集しています。
外部から副業者が関わり、自社の社員もまた副業者として外で知見を得る、となると組織内の人員はかなり流動性を持つことになりますが、そのことそのものが狙いということです。
「100年に一度」と言われる自動車業界の変革期に向けた対策でもあります。

 

100年に一度の変革期、「MaaS」「CASE」の本格化

自動車業界はいま、その根本的なあり方までをも再考する必要性に迫られています。
自動車の普及が進むにつれ、渋滞や温室効果ガス排出量の増加という課題を招きました。
また一方では、カーシェアリングサービスの普及でクルマを「所有しない」生活も有力な選択肢になりつつあります。
過疎地域ではマイカー以外の移動手段が限られているため、高齢になっても運転を続けなければならないリスクがあるといった問題も存在しています。

そこで、IoTやキャッシュレス決済の浸透もあり、盛り上がりを見せ始めているのが「MaaS(=Mobility as a Service)」の概念です。
自動車も含め、目的地までの移動を「ひとつのサービス」のようにしようというものです(図1)。

図1 MaaSの概念
(出所:政府広報「『移動』の概念が変わる?新たな移動サービス『MaaS(マース)』」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201912/1.html

これまでの移動方法としてマイカーのメリットは、交通機関の接続を調べたり、別々に手配したり別々に料金を支払うといった煩わしさがないことでした。しかしデメリットとして渋滞や駐車場不足などがあります。
これを解消すべく生まれたのがMaaSです。アプリ一つで目的地までの全移動手段をシームレスに一括予約・支払いできるというものです。

公共交通機関の積極利用を促すことで環境対策の面からも注目されるMaaSですが、自動車業界にとっては「マイカーを排除する」取り組みとも言えます。
この大きなうねりに対応できるビジネススタイルの構築が求められているのです。

こうした変化を捉え、今後の自動車が進化すべき方向として示されているのが「CASE」です。4つの単語の頭文字を取っています。

・Connected(コネクテッド)
・Autonomous(自動運転)
・Shared&Services(シェアリングとサービス)
・Electric(電動化)

CASEへの対応は自動車各社の急務ですが、ダイハツはその対策のひとつとして人材に目をつけました。
自動車を作ることを知っているだけの人材ではなく、サービスやITに精通した人材を外部から迎え入れ、また、自社の社員は逆に外に出て「市場ニーズ」を拾って来て欲しい、という狙いがあるのです。

 

農家で副業?ダイハツの副業解禁の「切り口」

ダイハツは「働き方改革」の一環として、従業員の副業を一部で試験的に導入しています。
そのうちのひとつが、工場勤務が体力的に厳しくなった中高年従業員が農家で働ける仕組みです*4。

なぜ農業なのか、これには理由があります。
ダイハツは長年のポリシーとして「地域密着」を掲げる企業です。
農業では軽トラックがよく使われるほか、地方山間部では軽自動車や小型車がよく見られ、まさにダイハツの大きな市場です。

農業も力仕事とはいえ、社員としては工場勤務よりも体力的負荷は減ります。
その一方で、自社製品のユーザーが集まる場所で働いてみることで、従業員は表向きの市場調査では得られない「生の声」に接することができるのです。
今回の副業解禁も「地域」の視点を重視する考え方に基づき*5、現場ニーズをすくい上げることが大きな目的と言えるでしょう。

実際、ダイハツは「国際オート アフターマーケットEXPO 2020」の「MaaSアワード」で大賞を受賞しました。
その内容は、通所介護業施設向けの送迎支援や福祉介護領域での共同送迎に向けた取り組みで、いずれも地域でのMaaSの具体的実践の成果です*6。

新分野では外部から経験者を募り、自社の社員にはその市場開拓のための外部での経験を積ませる形です。
車の提供が「所有物」から「サービス」に変化する時代への対応です。

 

自動車業界での副業は広がるか

ダイハツの副業検討についてここまで紹介してきましたが、自動車業界では、副業解禁についてほかには目立った動きはありません。
大企業の副業解禁にあたっては、人材の多様性を求める一方で社内情報の漏洩を懸念する企業も多く、自動車業界もこの懸念の方を強く持っている可能性が考えられます。

2021年に入って、日産自動車が本社研究開発部門の事務系の契約社員約800人を正社員化することが報じられています*7。
副業解禁とは逆で、経験を積んでいる自社の人的リソースを全て自社につぎ込もうという考え方です。

ただ、ダイハツの取り組みが成功を収めれば、部品メーカーも含めた業界の中では注目する企業が出てくるかもしれません。

 

 

*1、3「ダイハツ、社員の副業解禁検討 自動車メーカーで初 働き方改革を推進」日刊自動車新聞電子版
https://www.netdenjd.com/articles/-/241845

*2「日産自:今月から正社員の副業を容認-臨時休業日が対象(2)」ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2009-03-06/KG299C0UQVI901

*4、5「ダイハツ、多様な働き方の取り組み加速 農家への派遣や副業解禁」日刊自動車新聞電子版https://www.netdenjd.com/articles/-/243270

*6「『MaaSアワード2020』選考結果 ダイハツ工業(『らくぴた送迎』ほか)が大賞受賞」MaaSアワード
http://www.iaae-jp.com/maas/pdf/MaaS2020_release.pdf

*7「日産 契約社員約800人を正社員に 経験豊富な人材の確保ねらう」NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210119/k10012821401000.html?utm_int=news-new_contents_latest_001

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

 

 

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