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職場のアルバイト・パートは大丈夫? 女性の貧困問題を理解して職場でできるサポートを!

女性の労働状況には厳しいものがあります。

雇用されている女性の58%が非正規雇用者で、そのうちの約43%が年収100万円未満だというデータがあります。
さらに、日本の女性は国際的にみて労働時間が長く、また無償労働時間の男女比(男性を1とした場合の女性の比率)が非常に大きな数値を示しています。

そうした中、一人親世帯の相対貧困率は深刻です。
職場にそうした女性はいないでしょうか。

働く女性がおかれているこうした厳しい状況を把握し、問題の在り処を理解して、職場でできるサポートについて考えてみましょう。

女性の労働状況

まず、女性の労働状況を概観しましょう。

■女性の社会進出

2019年の就業者数は、男性が3,733万人に対して女性は2,992万人で *1:p.9、女性が就業者全体に占める割合は約44.5%でした。
そのうち、企業に雇用されている雇用者をみると、女性は全体の45.3%を占めています(図1)。

図1 雇用者数と雇用者総数に占める女性の割合
引用)厚生労働省(2020)「令和元年版働く女性の実情」 p.12
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/19-01.pdf

数の上では、女性の社会進出は進んでいるといえるでしょう。

■雇用形態:女性は非正規の方が多い

では、雇用形態はどうでしょうか。
以下の図2は、非正規の職員・従業員(以下、「非正規雇用者)の割合を表しています。

図2 非正規雇用者の割合の推移
引用)厚生労働省(2020)「令和元年版働く女性の実情」 p.17
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/19-01.pdf

2019年のデータをみると、男性非正規雇用者は22.8%であるのに対して、女性は56.0%と男性の約2.5倍に上っています。
なお、女性の非正規雇用者のうち、アルバイト・パートが44.2%を占めます *1:p.16。

数の上では女性の社会進出が進んでいても、雇用形態では男女差が激しいことがわかります。

女性が非正規雇用者になる理由とコロナ禍の影響

では、女性はなぜ非正規として働いているのでしょうか *2:p.3(図3)。

図3 女性が非正規雇用者に就いた主な理由
引用)e-Stad 政府統計の総合窓口(2021)「労働力調査(詳細集計)2020年」 p.3
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf

2020年のデータをみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」と答えた人が 433万人(31.5%)と最も多かったのですが、前年から5万人減少しています。
次いで多かったのは「家計の補助・学費等を得たいから」と答えた人で、317万人(23.1%)と、前年から10万人の増加を示しています。

こうした状況にはコロナ禍の影響が反映しているものと推測できますが、コロナ禍の影響を最も受けたのは、女性の非正規雇用者であったことを如実に示すデータもあります *3:p.2(図4)。

図4 雇用形態別・性別 雇用者数の動向(2013年1月~2021年1月) 左図:男性、右図:女性
引用)厚生労働省「参考資料: 雇用形態別・性別でみた雇用者数の動向」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000755346.pdf

図4の左図が男性、右図が女性で、緑線が正規雇用者数、赤線が非正規雇用者数です。
この図から、コロナ下で雇用が悪化したのは主に女性の非正規雇用者であることがわかります。
2020年の女性非正規雇用者数は1,425万人で、前年の2019年から50万人の減少となりました *2:p.1。

では、どの年代が影響を受けたのでしょうか。
以下の図5は、女性の非正規雇用者数の推移(前年同時期との差)を表しています *4:p.5。

図5 女性の非正規雇用者数の推移(前年同時期との差)
引用)内閣官房(2021)「雇用等の現状について」 p.5
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/corona_hiseiki/dai1/siryou1.pdf

この図をみると、ちょうど育児期にあたる35~54歳の減少幅が大きいことがわかります。

先ほど図3でみたように、非正規として働く理由として、「家計の補助・学費等を得たいから」と答えた女性が317万人(23.1%)います。このことから、こうした状況が家計に与えた影響は大きかったのではないかと推測できます。

女性の貧困

ここで、日本の相対貧困率をみたいと思います。

まず、用語の説明をします。
「貧困線」とは、「等価可処分所得(総所得-拠出金-掛金-その他) ÷ √世帯人員数)」の「中央値の半分」を指します。
「相対貧困率」とは、貧困線に満たない世帯員の割合のことです *5:pp.44-45。

2018年の貧困線は127万円で、相対的貧困率は15.4%、「子どもの貧困率」(17歳以下)は 13.5%でした *6:14。

ここで注目したいのは、「子どもがいる現役世帯」(世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯)の世帯員のうち、「大人が二人以上」の世帯と「大人が一人」の世帯では、相対貧困率に大きな格差があるということです。

相対貧困率は、「大人が二人以上」の世帯員では10.7%なのに対して、「大人が一人」の世帯員では48.1%に上ります。
また、「子どもの貧困率」も、「大人が二人以上」の世帯員は11.2%なのに対して、「大人が一人」の世帯員では48.1%と大きな格差があります。

このことから、一人親世帯、特にシングルマザー世帯の家計の苦しさが窺えます。
実際に、女性の配偶関係をみると、2019年にはほぼどの年齢階級にあっても、配偶者のいない女性の方が労働力率が高かったことがわかります(図6)。

図6 雇用者数と雇用者総数に占める女性の割合
引用)厚生労働省(2020)「令和元年版働く女性の実情」 p.5
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/19-01.pdf

さらに、男女の賃金格差は深刻です(図7)。

図7 非正規雇用者の年間収入
引用)e-Stad 政府統計の総合窓口(2021)「労働力調査(詳細集計)2020年」 p.4
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf

年収を比べると、左図の男性非正規雇用者では100万円未満が28.9%、100~199万円が27.9%なのに対して、 右図の女性非正規雇用者は、100万円未満が42.6%、100~199万円が38.9%と低い年収層の割合が高いことがわかります。

こうした労働状況の厳しさは、特にシングルマザーの家計に影響を与えていることが窺えます。

女性の貧困を取り巻く状況と職場での対応

では、こうした女性の労働状況の厳しさはどこからくるのでしょうか。

■男女の役割分担

ここで、OECDによる国際調査の結果をみてみましょう *7(図8)。

図8 男女別に見た労働時間(15~64歳、週全体平均、1日当たり)
引用)男女共同参画局(2020)「男女共同参画白書 令和2年版:図表1」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-c01-01.ht

このデータによると、日本人男性の有償労働時間は452分で参加国の中で最も長く、OECDの男性平均317分を135分、上回っています *8。

また、どの国も有償労働時間は女性より男性の方が長いのですが、日本の男女比(女性を1とした場合の男性の倍率)は1.7倍に上ります。

一方、無償の労働時間はどの国も女性の方が長いのですが、日本の男女比(男性を1とした場合の女性の比率)は5.5倍に上っています。

したがって、日本は、有償労働は男性に、無償労働は女性に大きく偏っているのです。
ここから、男性は仕事、女性は家事・育児という、「固定的性別役割分担意識」がみえてきます。

先ほど、女性が非正規雇用に就いた理由のうち、「自分の都合のよい時間に働きたいから」と答えた人が最も多かったことをみましたが、それも、家庭での家事・育児に差し支えない範囲で働くという女性の働き方のあらわれでしょう。

こうした意識が現在の社会構造を形成し、ここまでみてきた、労働に関する激しい男女差や女性の労働状況の厳しさに反映しているのではないでしょうか。

つまり、個々の女性が直面している仕事に関する厳しさは、決して個々人の問題ではなく、社会問題であるということです。

ただし、最近では、こうした固定的な男女の役割分担は変化しつつあります(図9)。

図9  「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に対する賛否
引用)内閣府(2019)「共同参画 2019年12月号 特集/2019年度男女共同参画に関する世論調査の結果」 p.3
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201912/pdf/201912.pdf

この調査では、 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、「賛成」は35.0%と過去最少の割合となり、逆に「反対」は59.8%と過去最多という結果になりました *9:p.3。

ここ数年で、意識は着実に変化してきているといえるでしょう。

■職場でのサポート

ここまでみてきたように、厳しい状況を抱えながら働いている女性は多いのではないでしょうか。
前述のように、女性の労働問題は、個々人に起因するものではなく、人々の意識が作り出した社会構造に根ざす問題です。

また、一人親世帯の貧困の問題は、子どもまでもを巻き込んだ深刻な状況を示しています。
もし、職場に心当たりのある女性アルバイトがいたら、どうやって支えたらいいのでしょうか。

それには、まず、状況把握が大切です。
時折、面談をするなどして状況把握に努め、経営者を巻き込んでサポート体制を整えましょう。

シフトの見直しといった身近なことをはじめとして、資質や能力に応じた昇給・昇進システムの構築や、正社員化も含めたキャリア・プランニングに至るまで、少しずつであっても改善に取り組めば、それは当該アルバイトの支えになるだけではありません。

最も弱い立場に立たされているアルバイトに寄り添い、職場を改善していくことは、結果として、全従業員にもメリットをもたらし、そのことによって従業員の信頼を高め、仕事へのモチベーション向上にもつながるはずです。

女性の労働問題、貧困問題の状況について理解し、目の前の女性アルバイトが何か問題を抱えていないかに留意して、職場でのサポート体制を整えていきましょう。

資料リスト
*以下はすべて2021年8月22日に閲覧

*1
引用・参考)厚生労働省(2020)「令和元年版働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/19-01.pdf
*2
引用・参考)e-Stad 政府統計の総合窓口(2021)「労働力調査(詳細集計)2020年」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf
*3
引用)厚生労働省「参考資料: 雇用形態別・性別でみた雇用者数の動向」
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000755346.pdf
*4
引用)内閣官房(2021)「雇用等の現状について」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/corona_hiseiki/dai1/siryou1.pdf
*5
引用)厚生労働省「用語の説明」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/07.pdf
*6
参考)厚生労働省(2019)「2019年 国民生活基礎調査の概況>Ⅱ各世帯の所得等の状況>貧困率」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf
*7
引用)男女共同参画局(2020)「男女共同参画白書 令和2年版:図表1」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-c01-01.ht
*8
参考)男女共同参画局(2020)「男女共同参画白書 令和2年版>生活時間の国際比較」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html
*9
引用)内閣府(2019)「共同参画 2019年12月号 特集/2019年度男女共同参画に関する世論調査の結果」 
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201912/pdf/201912.pdf

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 

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