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コロナ禍で加速|出生率低下と少子化が人手不足に与える影響と対策を考えよう

少子化が止まりません。少子化の傾向は1970年代に始まりましたが、コロナ禍の影響がそれに拍車をかけています。
2020年には出生率が大幅に低下し、このままいけば日本経済はいずれコロナ禍による急激な人口減少の影響を受けることになるでしょう。
その結果、労働力のさらなる減少やマーケットの縮小など、さまざまな問題が生じるおそれがあります。
本稿では、コロナ禍による人口減少の状況を明らかにし、今後その影響によってもたらされる問題とその対策についてわかりやすく解説します。

目次

出生率低下の状況とその要因

少子化が経済に及ぼす影響

人手不足が加速する中で考えておくべきこととは

出生率低下の状況とその要因

まず、出生率の推移とその要因をみていきましょう。

~コロナ禍による出生数減少~
図1は1947年から2020年にわたる出生数の推移を表しています。

図1 出生数及び合計特殊出生率の年次推移
出典: *1 厚生労働省(2021)「人口動態調査 結果の概要」 p.4
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/kekka.pdf

2020年の出生数は84万832人で、前年2019年の86万5,239人より2万4,407人減少し、過去最少を記録しました。合計特殊出生率は1.34で、前年の1.36より低下しています。

さらに、2020年は婚姻数が減少しています(図2)。

図2 2020年における婚姻数の推移
出典:*2 日本総研(2020)「コロナ禍で加速する少子化~2021年には出生数が大幅減~」 p.1
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/12253.pdf

こうした婚姻数の減少などの影響で、2021年は出生数がさらに減少し、80万人を下回る見通しですが、これは以前の政府の見通しより10年早いペースです(図3)。

図3 出生数の将来推計(TFR:合計特殊出生率 別)
出典:*2 日本総研(2020)「コロナ禍で加速する少子化~2021年には出生数が大幅減~」 p.1
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/12253.pdf

図3は、合計特殊出生率(以下、「TFR」)別に出生数を推計したものです。
オレンジの線が2019年のTFR・1.36が続いた場合の推計で、2030年頃に出生数が80万人を下回ると予測されていました。

もし、先ほどの見通しどおり2021年に出生数が80万人を下回ることになれば(図3の薄い青線)、少子化はコロナ禍によってかつての想定より一気に10年前倒しで進むことになりかねない状況なのです。

~コロナ禍で出生数が減少した要因~
では、コロナ禍で出生数が減少したのはなぜでしょうか。

それは、主に女性の非正規労働者の雇用状況が悪化したからであると考えられます。
以下の図4は、雇用形態別にみた雇用者数の動向を表しています。

図4 雇用形態別・性別 雇用者数の動向(2013年1月~2021年1月) 左図:男性、右図:女性
出典: *3 厚生労働省「参考資料: 雇用形態別・性別でみた雇用者数の動向」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000755346.pdf

図4の左図が男性、右図が女性で、緑線が正規雇用者数、赤線が非正規雇用者数です。
この図から、コロナ下で雇用が悪化したのは主に女性の非正規雇用者であることがわかります。
2020年の女性非正規雇用者数は1,425万人で、前年の2019年から50万人の減少となりました *4:p.8。

以下の図5は、女性の非正規雇用者数の推移(前年同時期との差)を表しています。

図5 女性の非正規雇用者数の推移(前年同時期との差)
出典:*5 内閣官房(2021)「雇用等の現状について」 p.5
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/corona_hiseiki/dai1/siryou1.pdf

この図をみると、特に35~54歳の減少幅が大きいことがわかります。
コロナ下で結婚・出産を控える人が急激に増加した要因は、人と会う機会が減ったことや、感染リスクを避けて妊娠・出産のタイミングを遅らせた人が多かったことだと推測されていますが、それに加えて、このような雇用状況によって経済的な不安が大きく膨らんだことが影響しているとみられています *6。

特にサービス業などの女性非正規雇用者への打撃が大きく、休業に追い込まれた人や仕事のシフトを減らされた人もいます。また、学校の休校で家事・育児の負担が増え仕事をやめた女性もいます。

コロナ禍でのこうした女性の負担や経済的な不安が出生数減少につながっていると推測されますが、こうした傾向はさらにこの先も当面続くだろうと予想する専門家もいます。

 

少子化が経済に及ぼす影響

では、こうした少子化は経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

~生産年齢人口の減少~
少子化は生産年齢人口の減少に直結します(図6)。

図6 日本の人口の推移
出典:*7 厚生労働省(2019)「人材開発政策の現状と課題、 今後の見通しについて」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000566409.pdf

図6のブルーの部分が15~64歳のいわゆる生産年齢人口ですが、2019年以降の推計はTFRを1.44と設定したものです。
ところが、先ほどみたように、2020年のTFRは1.34でした。したがって、このままの出生率でいくと、総人口も生産年齢人口もこの推計よりさらに急速に減少していくおそれがあります。

~人口オーナスと縮小スパイラル~
次に、急速な人口減少が経済にもたらす影響をみましょう。

懸念されるのは、人口オーナスです。
人口オーナスとは、労働力人口減が経済にマイナスの負荷をかける状態のことで、労働力人口の増加によって成長率が高まっていく状態・「人口ボーナス」の反対の状態を指します *8(図7)。

図7 人口オーナスと縮小スパイラル
出典:*8 内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_3.html

図7のように、急速な人口減少は国内市場の縮小をもたらします。すると、投資先としての魅力が低下します。さらに、人々が集まり交流することで生まれるイノベーションが生じにくくなり、経済成長力が低下していきます。
こうした経済規模の縮小が始まると、それが更なる縮小を招き「縮小スパイラル」に陥いることも考えられます。
労働力不足を補うための長時間労働がさらに深刻化すると、ワーク・ライフ・バランスも改善されず、少子化がますます進行するという悪循環に陥るおそれもあります。

「縮小スパイラル」が強く作用すれば、国民負担の増大が経済の成長を上回り、実質消費水準が低下して、国民1人ひとりの豊かさが低下するような事態を招きかねません。

それだけではありません。財政の健全化が軌道に乗らなければ、国際的信用を失い、財政破たんリスクが急速に高まることも考えられるのです。

~社会保障制度の維持が困難に~
次に、世代間の扶養関係を考えてみましょう。
高齢者1人を支える現役世代(生産年齢)の人数は、このままの出生率が続いた場合、年々減少の一途をたどると推計されています(図8)。

図8 高齢者を支える現役世代(15-64歳)の人数
出典: 内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_3.html

図中の2060年以降の上段は2030年にTFRが2.07までに上昇した場合です。一方、下段は2014年のTFR・1.42が維持された場合を表していますが、先ほどみたように2020年のTFRはこれを下回る1.34でした。

こうした状況が続くと、医療・介護費を中心に社会保障に関する給付と負担の間のアンバランスが一段と強まり、現役時代の負担が増加することが予想されます。

以上のように、少子化は経済に大きな影響を与え、国民の負担を増大させます。

 

人手不足が加速する中で考えておくべきこととは

これまでみてきたように、コロナ禍による少子化の加速は将来の大きなマイナス要因となります。
それを防ぐためには、経済支援を含め、若い世代が安心して結婚、出産、子育てができる社会環境を構築することが不可欠です。
ただ、そうした政策が功を奏したとしても、その効果はすぐにはあらわれません。

したがって、「アルバイトは採用できて当たり前」という前提は非常に危険です。
危機意識をもち、方策を練るべきでしょう。

折しも2021年6月19日に、「経済財政運営と改革の基本方針2021」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されました *9。
その中には、「民間部門におけるDXの加速」p.11、「女性の活躍」p.20、「外国人材の受入れ・共生」:p.28、「兼業・副業の普及・促進」をはじめとする多様な働き方:p.23 などが盛り込まれています。

デジタル化を進めて効率化を図り、ダイバ―シティを推進して多様な人材を確保する。さらに、働き方の多様性も取り入れる。
現在はそうした取り組みが必要な時代であるという認識をもち、変革に向けて動き出すことが必要です。

*1
厚生労働省(2020)「令和2年版厚生労働白書:図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html
*2
日本総研(2020)「コロナ禍で加速する少子化~2021年には出生数が大幅減~」
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/12253.pdf
*3
厚生労働省(2021)「参考資料: 雇用形態別・性別でみた雇用者数の動向」
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000755346.pdf
*4
総務省統計局(2021)「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf
*5
内閣官房(2021)「雇用等の現状について」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/corona_hiseiki/dai1/siryou1.pdf
*6
NHK(2021)「持論公論:新型コロナで加速する少子化」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/444627.html
*7
厚生労働省(2019)人材開発統括官「人材開発政策の現状と課題、 今後の見通しについて」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000566409.pdf
*8
内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_3.html
*9
内閣府(2021)「経済財政運営と改革の基本方針 2021 日本の未来を拓く4つの原動力 ~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 

 

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