人材定着
/

「何のために働いていますか?」「お金のためです!」は本当?

「何のために働いていますか?」

こう聞かれたら、あなたは何と答えますか?
わたしなら、「お金のため」と答えます。

では、こう聞かれたら、どう答えますか?

「今、ここで働き続けているのはなぜですか?」

きっと「うっ………」と答えに詰まる方もいらっしゃるかと思います。
わたしたちは、何のために働いているのでしょうか。本当にお金のためなのでしょうか。
これがわかれば、スタッフが長く働きたい職場づくりができるはずです。

時給が上がったのに、従業員満足度が下がったできごと

ラーメンチェーン店の店舗責任者をしていたときのこと。
わたしは、ある女子高生アルバイトの時給を上げたことがありました。
彼女が定められた昇給基準を満たしていたのはもちろんですが、接客がすばらしく、アルバイトリーダーとしての役割も果たしていたからです。
彼女の接客は、新人アルバイトに限らず社員も手本にできるくらい明るく、元気で、丁寧で、彼女についてくる常連さんもたくさんいました。計算すると、彼女が月5万円以上売り上げに貢献しているという状況でもあったのです。

正直なところ、「時給を上げておけば、さらにリーダーシップを発揮してくれるだろうし、退職など、後ろ向きにはならないだろう」と心のどこかでは思っていました。
「だろう」という根拠のない楽観は、禁物でした。
数ヶ月後、彼女は「辞めたいかも」と相談してきたのです。

「んー、どうして辞めたいと思うの?」
「わかんないんだよね…なんとなく」
「…そうかぁ。何か別にやりたいこととかあるの?」
「はっきりとやりたいことがあるってわけじゃないんだけど。自分でもよくわからないんだよね」
「ここでのバイトが楽しくないってことかな?」
「そうね、楽しくは…ないかな。最近は特に」

彼女の言う「最近」というのは、時給が上がってからのことです。
驚きましたし、「時給を上げておけば大丈夫」と思っていた浅はかさが嫌になりました。

結局、辞めることにはなりませんでした。
話を聞いていくと、アルバイトが楽しくないと感じている原因は「マンネリ化」にあるようでした。

彼女に必要だったのは、昇給ではなく、成長できる環境だったのです。

「何のために働いていますか?」「はい、お金のためです!」は本当とは限らない

彼女はなぜ、「辞めたいかも」という気持ちになってしまったのでしょうか。
また、わたしはなぜ、彼女がそうなるまで気づかなかったのでしょうか。

理由は、以下の3つだと思います。
■ 彼女の「この店で『働き続ける』理由」を把握しようとしていなかった
■ 昇給が、モチベーションの維持・向上につながると考えていた
■ 以上のことを店舗運営に反映していなかった

「辞めたいかも」と言い出した彼女ですが、きっと、お金のために働いていたのは間違いないでしょう。

しかし、店舗責任者として考えるべきは、アルバイトの働く理由ではなく、「この店で『働き続ける』理由」だったのです。
このご時世、仕事はいくらでもあります。
働く先がいくつもある中から、この店を選び、働き続けるに値する職場づくりをしなければならなかったのです。
「昇給」は、あくまで数ある要素のうちのひとつに過ぎませんでした。

アルバイトの採用面接のときはみんな、「お金のためにアルバイトを始めようと思いました」と言います。
しかし、働き始めれば、「働く理由」は「働き続ける理由」になり、「お金のために」は「お金は当然として、〇〇のために」となるのです。

「〇〇のために」を知るためは、例えば以下のような方法で、継続的にアルバイトの心情把握をしていくしかないでしょう。
■ 定期的な面談、ミーティング
■ アルバイトリーダーからの聞き取り
■ 日頃のコミュニケーション
■ アンケートの実施
■ 食事会 など

繰り返しになりますが、大切なことは、3点です。
■ 特に採用後は、アルバイトが「この店で『働き続ける』理由」を把握することが必要
■ 昇給は、あくまでモチベーション維持・向上のひとつの要素
■ アルバイトの心情を継続的に把握し、店舗運営に反映させることが必要

お金は、働く上での必要条件ではあるが、十分条件になるとは限らない

各種データからも「お金は、働く上での必要条件ではあるが、十分条件になるとは限らない」ということがわかります。

まず、マイナビの高校生アルバイト調査(*1)では、「高校生のほとんどは、お金のために働いている」ということがわかります。


引用:株式会社マイナビ「高校生アルバイト調査」2019年11月
https://nalevi.mynavi.jp/data/8063/

赤枠は、貯金をするため(66.7%)、趣味のため(48.5%)、自分の生活費のため(29.5%)などであり、要するに「お金のため」と読むことができます(複数回答あり)。
なるほど、はやり、「お金のために働いている」というのはデータからも真実のようです。

一方、同調査(*2)からは、「長く働きたい職場づくりのためには、むしろ、お金以外の要素の方が重要」だということもわかります。


引用:株式会社マイナビ「高校生アルバイト調査」2019年11月
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/11/%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%80%90%E9%AB%98%E6%A0%A1%E7%94%9F%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%80%91%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf

これは、就業中の高校生アルバイト(継続意向あり、継続意向なし両方)が、いつやりがいを感じるかについて回答した集計結果です。

長く働きたい職場かどうかの決め手となる要素を判断するには、各要素の「継続意向あり」と「継続意向なし」の差分を見ますが、青枠「給料が上がったとき」の差分は4.5と低く出ています。
(これは、「給料が上がったとき」が高校生の継続意向につながりにくいということを意味します)

他方、赤枠「感謝の言葉をもらったとき」(17.0)、「自分の成長を感じたとき」(16.8)、「仲間と楽しく仕事ができたとき」(13.2)、「仕事の成長を褒められたとき」(10.4)において差分が大きく出ています。
給料を上げてくれる職場よりも、感謝の言葉をかけてくれたり、成長させてくれたりする職場の方が継続意向につながりやすいということです。

また、グラフ右手「やりがいはない」と回答した高校生の多くが「継続意向なし」となっています。

まとめると、
「給料が上がったとき」は差分が低く、長く働きたい職場の条件としては弱い
むしろ、「感謝の言葉をもらったとき」などにやりがいを感じる高校生が多く、長く働きたい職場の決め手となりやすい
各要素のどれにも「やりがいはない」と感じている高校生の多くは、継続意向がない
ということになります。

ここでは、高校生アルバイトのデータを分析しましたが、大学生、主婦(夫)アルバイトにも同じ傾向が見られます。

大学生アルバイト調査(*3)からも「長く働く要因としては、お金よりも人間関係を重視するアルバイトが多い」ということがわかります。「自分が好きな事を仕事にできる」「やりがいを感じる」といったことも長期就業意向に深く関わっており、「単純作業である」に関しては長期就業意向を妨げる要因になりつつあります。

引用:株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

また、主婦(夫)アルバイト調査(*4)では、青枠「交通費が支給される」、「土日・祝日は時給がUPする」については、継続意向なしアルバイトの回答数が多いという結果になっています。


引用:株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/

それほど、「お金よりも人間関係の方が大事」と考える人が多いということでしょう。

以上のように、働き続ける上では、「お金以外のこと」を重視するアルバイトが多いのは明らかです。
アルバイトの就業動機や悩みは多様であり、「お金」では解決できないこともあるのです。

一歩踏み込み、かつ、継続的に心情を把握し、店舗運営に反映することが重要でしょう。

まとめ

アルバイトは「お金のために」働いていますが、働き続ける上では「お金以外のこと」を重視しています。
難しいのは、「お金以外のこと」と一言に言っても、それが多岐にわたるからです。

ただでさえ忙しい現場で、すべての要素を満たすのは厳しいかもしれません。
だからこそ、現場リーダーはひとりひとりのスタッフが重視する要素を把握すること、そして、その要素を満たしてあげる努力をするのがいいのではないでしょうか。

この記事を読み終えたら、ぜひアルバイトの方に聞いていただきたいことがあります。

「お金以外で、何のために働いていますか?」と。

 

(*1)
引用)株式会社マイナビ「高校生アルバイト調査」2019年11月
https://nalevi.mynavi.jp/data/8063/

(*2)
引用)株式会社マイナビ「高校生アルバイト調査」2019年11月
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/11/%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%80%90%E9%AB%98%E6%A0%A1%E7%94%9F%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%80%91%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf

(*3)
引用)株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://nalevi.mynavi.jp/useful/6809/

(*4)
引用)株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/

 

【著者】
めんおう

専業ライター。
大学卒業後、防衛省、民間企業を経てフリーランスへ転向。インターネット、働き方、英語、取材などを中心に活動。
ブログ:めんおうブログ(https://www.zinseitanosiku.com/
Twitter:https://twitter.com/mennousan

 

あなたにおすすめ記事


アルバイト採用のことなら、マイナビバイトにご相談ください。

0120-887-515

受付時間/平日9:30~18:00

当サイトの記事や画像の無断転載・転用はご遠慮ください。転載・転用についてはお問い合わせください。

掲載料金・求人掲載のお問い合わせ