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脱「ファミコン言葉」! 接客時の正しい言葉遣いを考えよう

私たちが社会生活を送る上で、敬語は欠かすことのできない文化です。お互いを尊重し、円滑にコミュニケーションをとるために誰もが正しい言葉遣いを身につけることが望ましいです。しかい、日常的に何気なく使われている表現の中には実は正しくない言葉遣いもあります。

特に接客時の言葉遣いについて、「ファミコン言葉」や「マニュアル敬語」と呼ばれる話し言葉特有の表現がしばしば問題となっています。(*1)そこで今回は、言葉遣いに対する人々の意識の変化を見ながら、接客の場面をメインによくある接客言葉と正しい言葉遣いを紹介していきます。

目次

言葉遣いに対する意識は高まっている

いわゆるファミコン言葉とは

アルバイトスタッフへの教え方

まとめ

言葉遣いに対する意識は高まっている

文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」では、2018年に「書き言葉も話し言葉も正しく整えて使うべきだと思う」と回答した人が約5割いました。2008年の調査から1割以上増加しており、以前と比べると日本語を正しく使うべきだと考えている人が増えていることがわかります。(*2)

2019年の調査結果では、国語について「関心がある」との回答が7割台半ばという結果であり、増加傾向にあります(*3)。一方、同年は日本語について「大切にしている」という回答が6割台半ばで、過去の調査結果と比べて減少しています。

また、2019年の調査では、国語に関して国に期待することは「家庭や社会で正しい言葉遣いが行われるようにする」が最も高く約4割でした。これらの調査結果からも、最近は正しい言葉遣いに対する意識が高まっているということが言えるでしょう。

いわゆるファミコン言葉とは

「こちら、〜になります」や「ご注文のほうはお決まりですか?」など、ファミリーレストランやコンビニエンスストアの接客でよく耳にする敬語を、それぞれの頭文字からとって「ファミコン言葉」といいます。ここでは誤った言葉遣いの例をいくつか紹介します。

■「こちら、〜になります」
「なる」は物事の変化を表したり、「ご覧になる」や「お召しになる」など動詞と組み合わせて尊敬語として使われたりする言葉です。「こちら、〜です」や「こちら、〜でございます」の言い方が自然でしょう。

■「〜のほうは」
「ほう」は方向や分野を漠然と示したり、二つ以上あるもののうちの一つを指し示す言葉です。「〜のほうは」とすると柔らかい語感になりますが、対象がはっきりとしている場合は付けないほうが無難であると考えられます。

■「よろしかったでしょうか?」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」など過去の内容を確認する表現です。しかし、「お弁当は温めてよろしかったでしょうか?」のように相手の意思を確認する前に未来のことを尋ねる形で使われることがあります。今回の例では「温めてよろしいですか?」と現在形で尋ねるのが正しい言葉遣いですが、温める/温めないのように選択肢がある場合は「温めますか?」とするほうがより適切でしょう。

■「〜円からお預かりします」
「から」は動作・作用の起点や物事の材料などを表す言葉です。たとえば、会計時に紙幣と硬貨を分けて順番に受け取るのであれば「(まず)1000円からお預かりします。続いて500円をお預かりします」とすると違和感は少ないでしょうが、一般的にはまとめて受け取るため「〜円(を)お預かりします」と言うのが自然でしょう。

2014年の「国語に関する世論調査」では、「お会計の方、1万円になります」の「〜の方」という表現が気になると答えた人が6割超、「千円からお預かりします」の「〜から」という表現が気になると答えた人が5割台半ばで、1997年の調査結果と比べていずれも増加傾向にあります。(*4)

いずれの表現も使う場面によっては必ずしも間違った言葉遣いであるとは限りません。しかし、双方の解釈に齟齬をきたさないようにするためには、簡潔かつ平易な言葉を使うように心がけるとよいでしょう。

アルバイトスタッフへの教え方

ファミリーレストランやコンビニエンスストアなどの増加に伴い、若者をはじめとした敬語に不慣れな人たちもアルバイトスタッフとして接客業務にあたる機会が増えてきました。彼らは、お客様に失礼のないようにと配慮しているにも関わらず、過剰な敬語表現によってかえって失礼になってしまうことがあります。このような問題を未然に防ぐためには、まず敬語についての基本的な考え方から指導することが大切であると思われます。

文化庁が文化審議会答申をまとめた「敬語の指針」では、周囲の人間関係や社会関係についての気持ちの在り方を主体的に表現し、相互尊重を基盤とする敬語使用の観点から、正しい敬語の知識や考え方を身につけることが必要とされています。(*5)相手や場面によって敬語の使用を固定的に考えるのではなく、その都度の人間関係や場の状況に応じて、適切な言葉遣いを用いようという考え方です。また、形だけの敬語ではなく、態度も含めて敬意を言葉で伝えようとする姿勢を持つことが何よりも大切だとされています。

アルバイトスタッフの接客時の言葉遣いを統一する方法は、接客時によく用いる言葉遣いを具体的にマニュアル化する、アルバイトスタッフの接客の仕方を客観的に見るなどが考えられます。ただし、「敬語の指針」では、接客時の言葉遣いのマニュアル化はその職場特有の表現の仕方に不慣れな人には有効となる一方、過度に画一的な敬語使用を示す「マニュアル敬語」への批判的な考え方も示されています。

敬語表現には世代や性別、また方言による多様性があります。「マニュアル敬語」に陥らないようにするためには、マニュアルを作成・指導する側がマニュアルに示した内容を絶対視せず、多様性を意識しながら工夫を重ねていくことが重要でしょう。敬語を習得しようとするアルバイトスタッフに対して相手や場に応じた典型例を指導することが大切です。そして、場面に即した言葉遣いを自主的に工夫する姿勢を養えるように実践を重ねていくことが正しい言葉遣いへの考えを深め、ひいては接客サービスの向上につながると思われます。

まとめ

今回見てきたように、正しい言葉遣いに対する意識の高まりは、お客様と会話する機会が多い接客業においても密接な関係にあります。職場の言葉遣いについて、今一度客観的に見直す必要性は今後さらに増していくでしょう。

「ファミコン言葉」や「マニュアル敬語」が広がった背景には、正しい敬語の知識を蔑ろにしたまま、敬語に不慣れな人たちでも接客サービスの水準を一定に保つためのマニュアルだけが独り歩きしてしまったという理由が考えられます。こうした問題を繰り返さないためには、マニュアルを基礎としながらも、一人ひとりが正しい敬語について学び、場面に即した言葉遣いを選び取る能力を養っていくことが大切なのではないでしょうか。

<参考>
*1 マイナビニュース「「ファミコン言葉」の意味は? どこがおかしい? 【ビジネス用語】」
https://news.mynavi.jp/article/20190529-831778/
*2 平成29年度「国語に関する世論調査」の結果について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/r1393038_01.pdf
*3 平成30年度「国語に関する世論調査」の結果について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/r1393038_02.pdf
*4 平成25年度「国語に関する世論調査」の結果について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf
*5 敬語の指針 – 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/sokai/sokai_6/pdf/keigo_tousin.pdf

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