アルバイト採用の現場では、給与や立地だけでなく「面接での印象」が応募者の意思決定を左右します。採用面接は応募者を見極める場であると同時に、「ここで働きたい」と思ってもらうチャンスでもあるのです。
就業意欲を高めるためには、応募者が安心して働ける環境の透明性が欠かせません。まずは現場スタッフの声を掘り起こし「なぜこの職場で働いているのか」「働いていて良かったと感じた瞬間はいつか」などを把握することから始めましょう。本記事では、現場のリアルな声を面接に生かすテクニックや、面接時に気をつけるべき法律上のポイントなど、すぐに実践できる採用面接のコツについて解説します。
目次
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面接で気をつけるべき法律:OK/NG質問
【労働基準法】
【職業安定法】
【男女雇用機会均等法】
【労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)】
【個人情報保護法】
【障害者差別解消法】
【最低賃金法】
OK質問例(業務に必要な範囲)
NG質問例(法令で制限される例)
面接の目的再定義:評価だけでなく「魅力を伝える場」
採用面接というと「応募者を見極める場」と捉えられがちですが、近年は「応募者に自社を選んでもらうための“情報発信の場”」としての役割も重視されています。
参考)株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2025年)」37p
マイナビが実施した「アルバイト就業者調査(2025年)」によると、求職者が応募時に不安に感じるのは「職場の人間関係(53.0%)」「職場の雰囲気(39.3%)」「急な休みに対応してくれるか(42.9%)」などの項目です。このことから、給与や立地よりも、“安心して働けるかどうか”が決め手となっていることが分かります。
そのため、面接では「応募者の評価50%・自社の魅力訴求50%」の意識を持って臨むことが重要です。応募者の関心が高い4要素「シフトの柔軟性」「人間関係」「成長機会」「働きやすさ」を中心に、現場の実情に基づいた説明を行いましょう。
厚生労働省では、入社後のミスマッチを予防する手段の一つとして、積極的な職場情報の提供を推奨しています。*1
*1 引用)厚生労働省「職場情報の提供制度」
現場の声から魅力を抽出する:スタッフヒアリング法
応募者が共感しやすいのは、採用担当者の言葉よりも“現場のリアルな声”です。まずは、実際に働いているスタッフへのヒアリングを行いましょう。
既存スタッフ向け:個別ヒアリングor 15分ミニワークで5つの質問をしましょう。
・なぜこの店舗(チーム)を選び、勤務し続けているのですか?
・初日に「安心した」瞬間はどんなときでしたか?
・成長や「任せてもらえた」という実感はありますか?
・シフトや人間関係で「助かった」と感じる具体例はありますか?
・友人に勧めるとしたら、どんな言葉で紹介しますか?
出てきた内容は「事実+仕組み+再現性」で整理します。例えば、「3カ月でレジから調理へステップアップし、時給30円アップした」など、数字で裏付けると説得力がアップします。
応募者中心の面接テクニック
面接の最初の3分は、応募者が「ここで働きたい」と感じるかを左右する重要な時間です。
信頼を築くための工夫は「時間を厳守し、笑顔で対応する」「応募者を名前で呼ぶ」「席は90度に配置し、対立構造を避ける」の3つ。面接冒頭に「本日は職場の紹介10分、お話15分、質問5分、次のステップのご案内という流れで進めます」と共有しておくと、安心感を与えられます。
また、「安心(研修)→柔軟(シフト)→成長(任せ方)→透明(評価)」の4要素をもとに、30秒で魅力が伝わる簡易的なプレゼンなどの資料を用意しましょう。なお、前述したマイナビ「アルバイト就業者調査(2025年)」でも、これらは応募者が重視するポイントと一致しています。
さらに、聞く力も面接の質を左右するため、重要なポイントです。質問は“未来の再現性”を意識して、「勤務可能な曜日」「通勤手段」「学業との両立」など、業務に関係する範囲にとどめましょう。
事実と解釈を分け、「いつ・どこで・どうした」を具体的に聞くことで、応募者の姿勢を正確に把握できます。
面接体験(CX)設計:応募〜内定後フォロー
採用活動を成功させるためのキーワードとして最近注目されているのが「面接体験(CX:Candidate experience)」です。これは、採用活動において、応募者の入社への意欲を高めてもらうために、企業が用意する一連の体験のことを指します。その中のポイントの1つが「スピード感」です。
参考)株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2025年)」8p
マイナビの「アルバイト就業者調査(2025年)」によると、アルバイト先を決めた理由の上位に「応募後にすぐに企業から連絡がきた(42.3%)」「すぐに合否通知の連絡がきた(32.3%)」が挙がっています。応募者のアクションに対して、企業側の連絡スピードが速いと、アルバイト先としての決め手になる可能性が高いです。
応募後30分以内に返答できるよう自動返信システムを活用したり、24時間以内に面接日程を確定させたりすることが理想です。
また、面接前後の小さな配慮も印象を左右します。例えば「前日・当日朝のリマインドを送信する」「服装・所要時間・持ち物・地図URL・遅刻時の連絡先について案内する」「待ち時間を5分以内に設定する」「ドリンク提供を行う」などにより、応募者に安心感や信頼感を与えられます。
採用後は、労働条件(時給・交通費・試用期間など)を明文化し、必要書類や制服採寸など初出勤までのタスクを共有しましょう。
なお、初出勤時にはウェルカムメッセージの用意や担当者紹介を行うと、スタッフの不安を軽減できます。
面接で気をつけるべき法律:OK/NG質問
面接を行うにあたり、関連する法令の内容を踏まえると、OK質問とNG質問があります。採用担当者が法律の基本を押さえておくことで、応募者との間の「トラブル防止」と「信頼関係」の両立が図れます。ここでは面接で守るべき主な法令と、それぞれに関する現場で「起きやすい誤り」「具体的対応例」「チェックポイント」を紹介します。
【労働基準法】
労働条件の明示義務を定めています(第15条)。雇入れ時には、賃金、就業場所、勤務時間、試用期間、休日などの条件は、書面または電子での交付が必須です。面接時に交付義務がないからといって「採用決定後に詳しく説明します」のようなあいまいな対応は、トラブルを防止するためにも避けましょう。
<起きやすい誤り>口頭のみで条件を伝えたが、後日、認識の齟齬が発生する
<具体的対応例>採用時に交付する書面テンプレート(賃金、就業場所、勤務時間、休憩、休日、契約期間、試用期間、更新条件、昇給/手当の有無を明記)を用意します。面接官はこのテンプレートに沿って質問を行い、各項目の内容について必ず確認しましょう。
<チェックポイント>説明した項目を応募者に確認して同意を得ること
【職業安定法】
虚偽・誇大表示の禁止を定めた法律です。例えば「正社員登用あり」と記載しても実績がない場合は、虚偽に該当する可能性があります。面接時にも「どのような条件で登用があるか」まで、正確に伝えることが重要です。
<起きやすい誤り>「昇給あり」「研修あり」「正社員登用あり」と曖昧表現を使う
<具体的対応例>求人票・面接で使う口頭表現を事実ベースに統一し、昇給や登用の実績がある場合は、具体的な数値や期間を明示しましょう。
例:「半年に一度の登用試験があります。2024年度は3名が正社員になりました。」
<チェックポイント>求人票の文言と面接中の説明が一致しているか
【男女雇用機会均等法】
性別を理由とした採用差別は禁止されています。面接で「結婚・出産の予定」「家庭内での家事分担の有無」などに関して尋ねるのはNGです。業務遂行に関係のない事項を質問することは避けましょう。
<起きやすい誤り>採用面接で結婚や妊娠の予定を尋ねる、性別に基づく配属想定を言及する
<具体的対応例>:面接質問リストから「結婚」「出産」「家事分担」などのキーワードを削除し、必要な場合は「勤務可能時間」などの業務適性に関する質問に置き換えましょう。
<チェックポイント>質問の内容を業務に直結する表現に言い換えているか
【労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)】
「採用時に年齢制限を設けること」を原則禁止している法律です。「若い人材を採用したい」などの表現も避け、募集要項に合理的理由(例:定年年齢や育成目的など)がある場合のみ明記が可能です。
<起きやすい誤り>「○歳以下限定」と記載する
<具体的対応例>年齢要件が必要な場合は合理的理由を文書化(業務上の理由、法的要件等)し、求人票に理由を明記しましょう。
<チェックポイント>年齢に関する発言や質問がないか
また、同法律では、ハラスメント防止が企業に義務付けられています。面接時も圧迫的な質問や威圧的な態度は避けましょう。例えば、退職経験のある応募者に「なぜ辞めたの?」などと責める口調で質問すると、パワハラと誤解される恐れもあります。
<起きやすい誤り>面接官の詰問態度や過度な圧迫面接
<具体的対応例>面接官研修でのNGワードをチェックし、適切な言い換えについてロールプレイを行ったうえで、面接評価シートに「受け答えの圧迫感チェック」を導入してみましょう。
<チェックポイント>面接官の態度評価を必ず他者がレビューする
【個人情報保護法】
本人の同意なく、病歴・家族構成・信条などの「要配慮個人情報」を聞くことはできません。面接シートを使用する場合は、記入項目が業務に関係する範囲に収まっているか、必ず確認しましょう。
<起きやすい誤り>応募書類に不要な項目(家族欄、宗教等)を含める、データの保存期間を定めていない
<具体的対応例>採用データの保持期間と破棄ルールを設定し、面接シートは業務上必要最小限の内容にします。また、電子保存時のアクセス権を限定することも忘れずに行いましょう。
<チェックポイント>面接で収集する情報は必要最小限になっているか
【障害者差別解消法】
募集・採用を含む雇用の全局面で差別を禁止し、合理的配慮の提供を義務付けている法律です。「勤務上、配慮が必要な点はありますか?」と応募者に確認し、必要に応じて適切に対応・調整しましょう。
<起きやすい誤り>「障害の有無」を直接尋ねる
<具体的対応例>応募者に「勤務上配慮が必要な点があれば教えてください」と表現し、必要な配慮内容を整理して社内で対応フローを作成します。
<チェックポイント>配慮要望があった場合の対応担当者と手順が明示されているか
【最低賃金法】
地域別最低賃金を下回る給与設定は違法です。面接で時給を提示する際は、最新の最低賃金額を必ず確認しましょう。
<起きやすい誤り>求人票の時給表記が古い
<具体的対応例>求人票作成時に、最新の最低賃金を自動参照するテンプレートを使用すると効率的です。
<チェックポイント>提示する時給が、最新最低賃金を下回っていないか
労働基準法に基づき、企業は応募者へ労働条件を明示する義務があります。採用決定時には、賃金、就業場所、業務内容、所定労働時間、休憩、休日、契約期間、試用期間、更新条件、昇給/手当の有無などを明示しましょう。相手が受領できる環境を配慮し、書面またはメールでの交付が可能です。
OK質問例(業務に必要な範囲)
前述した法律を踏まえて、面接時に聞いても問題ない質問例をまとめます。
・勤務可能な曜日や時間帯を教えてください。
・通勤手段や所要時間について教えてください。
・勤務にあたって、健康面で配慮が必要な点はありますか?
※診断名の聴取は避けましょう。
・接客経験やチームで働いた経験を教えてください。
・急なシフト変更に対応できる範囲を教えてください。
質問の組み立て方にもコツがあります。まずは業務条件(時間・曜日)を確認し、次に業務に影響する外的要因(通勤・学業)について聞き、最後に経験や人物像を深掘りする流れが自然です。
応募者が答えにくそうな場合は柔らかい表現に言い換え、選択肢を提示して返答を促すと効果的です。
例:「週2~3日で午後から勤務できますか?」など
NG質問例(法令で制限される例)
次に、応募者に聞くべきではない質問例です。
・本籍や出生地はどこですか?
・家族の職業や家族構成を教えてください。
・結婚や出産の予定はありますか?
・あなたは若いけど、この仕事ができますか?(年齢によって採用を制限する質問)
・雑誌や新聞は購読していますか?購読している場合、どのような雑誌や新聞ですか?
・尊敬する人物はいますか?
・信仰する宗教はありますか?(思想、宗教、支持政党など、信条に関わる質問)
・SNSのアカウント情報を教えてください。
・過去に診断された病気はありますか?(既往歴・病名などの過度な取得)
NG例として前述したような直接的な質問は避け、本人に配慮した質問を行いましょう。代替質問例は以下になります。
・(NG)「妊娠予定はありますか?」→(OK)「勤務可能な時間帯に制約はありますか?」
また、下記の内容は禁止もしくは注意が必要な項目です。
・マイナンバーの提出(採用選考段階では目的外で不適切 ※入社手続き段階で取得)
・体験入店・職場見学の注意
応募者に実作業をさせる場合は「労働」に該当し、賃金支払い義務が生じます。無償で実作業を求める行為は禁止されています。なお、見学のみは可となっていますが、実施時は安全配慮・保険加入等を検討する必要があります。
・リファレンスチェック/録音・録画
リファレンスチェックとは、応募者の情報に関して現職(前職)の企業関係者などにヒアリングを実施することを指します。前提として本人の同意が必要で、行う際にはその目的・範囲を明確化することが必要です。面接の録音・録画をする場合は事前に相手へ明示・同意を得る必要があります。
なお、これらの内容は、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」にも明確に示されています。*2
特に、採用段階でマイナンバーを取得する行為は違法です。*3「何を聞けるか・聞けないか」を整理しておくことが、リスク防止につながります。
*2 参照)厚生労働省「公正な採用選考の基本」
*3 参照)厚生労働省「社会保障・税の手続き書類へのマイナンバー(個人番号)の記載について」
まとめ
応募者に「ここで働きたい」と思ってもらえる面接にするためには、次の3つのポイントに注意する必要があります。
①現場のリアルな魅力を把握する:スタッフの声を言語化して、短いエピソードで伝える
②応募者中心の面接を設計する:安心感のある導入、明確な採用フロー、スピード感のあるフォローを心掛ける
③法令を守る:OK/NG質問の基準を社内で共有し、面接運用に落とし込む
この3点を実践すれば、応募者の納得感が高まり、採用率・定着率の改善が期待できます。実務としては、質問テンプレートやチェックリスト、面接担当者研修を整備することが近道です。採用ルールを定期的に見直し、求人票や面接での説明が常に統一されているように徹底しましょう。
面接では、応募者に対して、誠実に自社の情報を伝えることが、相手の心を動かす第一歩となります。まずは、現場スタッフへのヒアリングを行い、職場のリアルな魅力を知ることが大事です。ぜひ本記事で紹介した内容をもとに、効率的な面接の実施につなげましょう。
<取材協力・監修>
溝手社会保険労務士法人
代表社員 溝手康暖(みぞて やすはる)氏
2014年、第46回社会保険労務士国家試験に合格。現在は、労働社会保険の手続きや人事情報管理(マイナンバー管理)、年金関係の手続き、労働問題発生を防止するためのコンサルティングなどを行っている「溝手社会保険労務士法人」の代表社員として活動。労働保険や社会保険、労務管理、雇用関係助成金などの業務に取り組む。
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