人材育成・マネジメント
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今どきの若者に「向上心がない」は本当? モチベーションを高める方法

向上心がある人というと、自ら高い目標を立て、全力でそれに向かって取り組む人というイメージがあります。

最近の日本の若者の傾向としては、海外の若者に比べると、あまり積極的に挑戦しないとの調査結果もあります。*1

若者の向上心がなくなったように感じることもあるのですが、果たしてそれは本当なのでしょうか?
データから「若者の向上心」について検証をおこない、やる気を引き出すにはどうすればいいのかを考えます。

目次

若者の意識変化が起きた3つの要因とは

今の若者の仕事観とは?

最近、注目を集める「ワーク・エンゲイジメント」とは

アルバイト従業員のモチベーションを上げるポイント

若者の意識変化が起きた3つの要因とは

若者に向上心がないと感じるようになったのは、いつからで、どのようなことがきっかけになったのでしょうか?
資料をもとに、若者の意識の変化について調べてみると、3つの要因が浮かび上がってきます。

1つ目の要因は、『1980年代から、「ものの豊かさ」よりも「心の豊かさ」を求めるようになってきた』ことです。

引用)厚生労働省「平成20年版 労働経済の分析」89P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/08/dl/02_0001.pdf

こちらの資料からも分かるように、1980年は、「ものの豊かさ」と「心の豊かさ」を求める人の差はあまりありませんでした。

しかし、年を経るごとにその差はどんどん開いていき、「ものの豊かさ」を求める人は3割程度なのに対し、「心の豊かさ」を求める人は6割程度に達しています。令和元年の「国民の生活に関する世論調査」においては、「心の豊かさ」を求める人は62.0%、「ものの豊かさ」を求める人は29.6%と、あまり数字に変化はありません。*2

欲求に関する心理学の理論としては、マズローの欲求5段階説が有名です。
この理論によると、人間の欲求は①生理的欲求、②安全欲求、③所属と愛情の欲求、④自尊と承認の欲求、⑤自己実現欲求の5つに分けられます。経済成長によって、すでに①と②の欲求は満たされているので、それより上の欲求が生じているということが、この資料から読み取れます。

筆者もアルバイト時代に、上司から「最近の若い子は、欲がない」と言われたことがあります。詳しく話を聞いてみると、昔は「いい車に乗りたい!」というように具体的に欲しいものがあって、それを手に入れるために必死になってがんばったが、最近の若い子には、そういうものがないとのことでした。

筆者自身も、心の豊かさが求められるようになってきた1980年代の生まれで、その影響なのか、欲張ることに対して、あまりいい印象を持っていませんでした。しかし、上司のこの言葉を聞いて、「欲しいものがあるからこそ頑張れるんだ」と、欲張ることに対する印象が少し変わったことを覚えています。

2つ目の要因は、『少子化による競争相手の減少』です。

引用)内閣府「選択する未来 -人口推計から見えてくる未来像-」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_2.html

図からも明らかなように、日本は1975年から、非婚化や晩婚化が進んだことにより出生率の低下が進みました。
少子化が進んだ分、同世代の競争相手も少なくなるのでそれだけ競争する必要も無くなったとも考えられるでしょう。向上心の低下は、このような少子化の影響も受けている可能性があります。

3つ目の要因は、『雇用情勢の変化』です。

グローバル化に伴い、企業は激しい国際競争にさらされるようになり、時間をかけて人を育てるという余裕がなくなってきました。平成30年度「能力開発基本調査」においても、「指導する人材が不足している」との回答が54.4%、「人材育成を行う時間がない」との回答が47.8%と、若者を指導する余裕がない状況が見られます。*3 21P

その結果、社会や企業が「失敗を許容する」という余裕もなくなってしまい、若者が積極的にチャレンジすることが難しくなりました。

これらの3つの要因が重なることで、「向上心がなくなった」、あるいは、「あるにも関わらず発揮しづらくなった」と考えられます。

今の若者の仕事観とは?

価値観は、世代によって大きく変わります。今の若者たちは、具体的にどんな価値観を持っているのでしょうか。

引用)内閣府「平成30年版 子供・若者白書」10P
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf

まず、仕事をする目的について見てみると、「収入を得るため」が84.6%と、生活をするための収入を重視していることがうかがえます。心の豊かさを求める傾向はあるとはいえ、収入は二の次というわけではないようです。

では、仕事に対する意識はどうでしょうか?

引用)内閣府「平成30年版 子供・若者白書」12P
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf

平成23年と平成29年に行われた調査を比較すると、仕事優先なのか、家庭・プライベートを優先なのかにおいて、平成29年では、家庭・プライベートを優先するという人が増えています。仕事は収入を得るための手段であって、目的ではないという意識が読み取れます。

このような意識を持った人に、いきいきと働いてもらうためには、それなりの工夫が必要になってきます。

最近、注目を集める「ワーク・エンゲイジメント」とは

それでは、人手不足感が高まる中でアルバイトにいきいきと働いてもらうには、どうすればいいのでしょうか?

働きがいのある職場を実現させるために、最近注目されるようになってきたワーク・エンゲイジメントというものがあります。*4
これは、バーンアウト(燃え尽き)と対局にある概念で、「活力」、「熱意」、「没頭」の3つが揃った状態と定義されています。

「活力」とは、仕事から活力を得ていきいきとしていること、「熱意」とは、仕事に誇りとやりがいを感じていること、「没頭」とは、仕事に熱心に取り組んでいることをいいます。
つまり、このワーク・エンゲイジメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあるわけです。

このワーク・エンゲイジメントを高めることによって、生産性や仕事に対する自発性もアップするとのデータがあります。

引用)厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」201P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

このデータを見ても、ワーク・エンゲイジメントのスコアが高いほど、指示・命令がなくても、自律的に仕事に取り組んでいると答えた人のスコアが高くなる傾向が出ています。

若者にいきいきと働いてもらうためには、ワーク・エンゲイジメントを高める努力が必要だということが、ご理解いただけたと思います。

アルバイト従業員のモチベーションを上げるポイント

アルバイト従業員の向上心を高めるためには、ワーク・エンゲイジメントを高めることが鍵になってきます。それでは具体的に、どのようにしてワーク・エンゲイジメントを高めていけばいいのでしょうか?

それには、「仕事の資源」と呼ばれる次の4つのものが重要になってきます。*4 190P

・ 就業条件(キャリア開発の機会、雇用の安定性など)
・ 対人関係や社会関係(上司によるコーチング、社会的な支援など)
・ 組織での仕事の進め方(意志決定への参加、コントロールなど)
・ 課題(仕事のパフォーマンスに対するフィードバック、正当な評価など)

これらの仕事の資源が豊富にあると、仕事の要求度の高さに関わらず、ワーク・エンゲイジメントが高まることが指摘されています。

ただ、これらの仕事の資源をそろえるのが理想だとしても、記事の冒頭でも触れたように、指導できる人がいなかったり、時間が無かったりといった問題もあります。

難しく考える必要はなく、ちょっとした声かけから始めるということも大事なのではないでしょうか。

筆者が税理士事務所で事務員のアルバイトをしていた時のことなのですが、毎月の会計ソフトへの入力業務というと、単調な作業の連続です。事務所の所長(税理士)は、計算書類一つで、経営者は銀行からお金を借りられるかどうかが決まってしまい、それによって人生も変わってしまうとの言葉に、身が引き締まる想いをしたことがあります。何気なくやっている単調な作業でも、その意味を知れば、仕事への姿勢も変わってきます。

また、心の豊かさを求める傾向があることからも、「ありがとう」という声がけも重要です。いくら頑張っていても、それを当然のおこないだと受け止められてしまい、ろくに感謝してもらえないとなると、燃え尽きの原因になりかねません。もともと日本の若者は自己肯定感が低い傾向があるので*1、そのような人に対して「ありがとう」という言葉は自己肯定感をアップさせ、やる気を引き出します。

どうしても若者とじっくり向き合っている余裕がないという方も、まずは簡単な声がけから始めて、ゆくゆくは仕事の資源をそろえ、ワーク・エンゲイジメントを高めるということを目指されてはいかがでしょうか。

*1 参考)内閣府 「平成26年版の子供・若者白書」
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html

*2 参考)内閣府 「令和元年 国民の生活に関する世論調査」
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-life/2-2.html

*3 参考)厚生労働省 「平成30年度 能力開発基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/000496285.pdf

*4 参考)厚生労働省 「令和元年版 労働経済の分析」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

 

黒田貴晴
コミュニケーションの問題や発達障害を専門的に扱う心理カウンセラー、フリーライター。NLPマスタープラクティショナー。
職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決をサポートしています。

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