「我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない。」(※1)
”2025年の崖問題”が定義された経済産業省が日本企業のデジタル化についてまとめた「DXレポート(2018)」から2年。
新たに発表された「DXレポート2(2020)」の中で、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)はほとんど前進していないことが明らかになりました。
新型コロナウイルスの影響で、テレワークやITシステムの導入に注目が集まった2020年でしたが、柔軟に環境変化に対応している企業はまだまだごく一部であることを意味しています。
そのような中で、先行してDXを進めている企業にはどのような特徴があるのでしょうか?実際の事例とともに紹介します。
目次
録画面接ツールで採用工数を大幅圧縮
鍋ぞう、バルバッコアやロウリーズなどの人気飲食店を展開する株式会社ワンダーテーブル(以下、ワンダーテーブル)では人材採用においてのDXで成果を出しています。
ワンダーテーブルが導入したのが株式会社ApplyNowが展開する録画面接ツール「ApplyNow(アプライナウ)」(※2)。従来の対面での面接を行うことなく、応募者から提出された動画にて選考を行うことができるサービスです。(図1)
図1 ApplyNowを活用したイメージ
https://biz.applynow.jp/company/
実際に活用されているワンダーテーブルの西島氏と桐ケ谷氏にお話を伺いました。
ー録画面接ツール「ApplyNow(アプライナウ)」を導入して変わったことはありますか?
西島氏「圧倒的に採用工数が減りました。従来の対面での面接では実際に応募者の方と30~40分ほどお話をさせていただいておりましたが、「ApplyNow(アプライナウ)」を導入してからは数分で済んでいます。さらに加えると、応募者からの動画を拝見するタイミングに融通が利くのも嬉しかったですね。」
桐ケ谷氏「採用って面接以外にもやらなきゃいけないことが沢山あるんですよね。応募者との日程調整や書類の確認、そして、面接後の合否連絡など。そういったものがいい意味でガラッと変わりました。」
「ApplyNow(アプライナウ)」の活用によって、これまで対応してきた採用にまつわる業務が大幅に圧縮されたということでした。
これはワンダーテーブルの例に限った話ではありません。独立行政法人情報処理推進機構が公開している調査データ(※3)では企業が実感しているDXの成果として一番多いのは「業務の効率化による生産性の向上」となっています。(図2)
図2 デジタル・トランスフォーメーション推進人材の
機能と役割のあり方に関する調査
「アンケート調査結果③:DX推進に関する実施体制と取り組みの成果(12)>DXの取り組みに関する成果の状況 」https://www.ipa.go.jp/files/000073700.pdf p55
DX推進のポイントは「現場のクチコミ」
ー「ApplyNow(アプライナウ)」導入にあたり、社内からはどのような意見がありましたか?
西島氏「抱えていた膨大な業務の削減に期待しながらも、”動画では熱意や雰囲気が伝わりにくいのでは”等、不安だという意見がありました。現場はそれ以外にも様々な業務に追われる中での対応なので、最初はどうしても腰が重くなってしまうんですよね。」
このような社内の意見は時にDXの最大の脅威になる可能性があります。
ITシステムやツールの導入にこぎつけたとしても、実際に使用するのはその業務の担当領域のチームや現場の従業員です。DXで成果を出すには使う立場にある現場の意識改革が必要になっていきます。
ー社内への浸透、啓蒙活動はどのようにされましたか?
西島氏「まずはほんの一部のチームに「ApplyNow(アプライナウ)」を使用してもらいました。そして、使用を開始したチームから”これ、いいね!”という様な声が上がってきてから、他のチームが”なにそれ!使わせてほしい!”という流れに。現場の人に”これ使ってください”とバラまいてもなかなか使ってもらえないですからね。良いクチコミの連鎖によって現場が自ら”使ってみたい”と、思ってもらうことが大事なんだとわかりました。」
ー現場からポジティブな意見が出る確信はありましたか?
桐ケ谷氏「さすがに確信まではありませんでした。しかし、導入するツールのシンプルさにはこだわりました。コロナ禍において飲食店は配達や持ち帰り対応など、日々変化も激しく、多忙な毎日です。そこに新しく導入するものはシンプルでわかりやすいものでなければ”便利”だとは感じてもらえないんですよね。」
ワンダーテーブルは一部の現場を先行モニターかつ、ポジティブなインフルエンサーになるよう導入ツールの選定とリリースの工夫に尽力されたようです。
DXによる企業への恩恵
DXの本質について「DXレポート2(2020)」にはこのように記載されています。
単にレガシーなシステムを刷新する、高度化するといったことにとどまるのではなく、
事業環境の変化に迅速に適応する能力を身につけること、そしてその中で企業文化(固定観念)
を変革(レガシー企業文化からの脱却)することにあると考えられる。
これまで見てきたように、ワンダーテーブルでは従来の対面での面接を録画面接に切り替え、大幅な採用工数の削減を達成しました。しかし、それだけではDX推進の本質とは乖離があります。
ツールの導入やシステムの切り替えによって業務が圧縮されることで、環境の変化に適応する能力、つまりは新しい価値の創出につなげる必要があります。
新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店は様々な変化の波と同時に、これまで以上に安心安全な空間の確保が求められています。
ワンダーテーブルはそうした中でも環境に対応したサービスの提供と感染防止策を講じた店舗運営に余念がありません。(※4)
コロナ禍の厳しい状況にありながら、DX推進によって柔軟に変化に対応し、価値を創出している好例といえます。
まとめ
これまで見てきたことから、DX推進はITシステムやツールの導入がゴールではないことが明らかになりました。導入による効果を従業員が実感し、進んで活用する風土づくりがDX推進のキーポイント。そして、その積み重ねによって生み出された価値の創出にDXの本来の意義があります。
DXで成果を出せている企業がまだまだ少ない現状があります。逆に言えば、これは多くの企業に成長のチャンスがあるとも言えます。
ワンダーテーブルの事例を参考にDXの取り組みをはじめてみてはいかがでしょうか。
参考資料
※1 経済産業省|DXレポート2(中間とりまとめ)
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-2.pdf p4
※2 株式会社ApplyNow|ApplyNowを活用したイメージ
https://biz.applynow.jp/company/
※3 独立行政法人情報処理推進機構|デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査
「アンケート調査結果③:DX推進に関する実施体制と取り組みの成果(12)>DXの取り組みに関する成果の状況 」https://www.ipa.go.jp/files/000073700.pdf p55
※4 PR TIMES |「どんなときもWelcome」店内外の食事シーンを訴求するスローガン設定 コロナ禍で培った食関連サービスにて食卓を豊かに
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000330.000007752.html
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