コロナ禍によって雇用環境を取り巻く社会情勢は変化を続けています。変化の大きいこのタイミングにおいて、非正規雇用の給与はどのような動きを見せているのでしょうか。今回は2021年5月におこなわれたアンケート調査をもとに、非正規雇用の給与について最新の状況をお伝えします。
目次
非正規雇用の給与はどのように変わった?
まず、直近の給与変更の状況についてご紹介します。非正規雇用の給与額の増減について採用担当者に聞いたアンケート結果をみてみましょう。
直近半年間の給与については、全ての雇用形態において「変わらない」が最も多い結果となりました。割合で見ると、実に半数以上の担当者が「変わらない」を選択しています。一方、「上げた」を選択した割合は全ての雇用形態において前年比で減少しており、約4割に留まっています。
出典:株式会社マイナビ 2021年6月「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2021年)」
雇用形態別にみてみると、アルバイトは、2020年で「上げた」が54%で最も多く、「変わらない」が43.3%でしたが、2021年は「変わらない」が54.4%と最も多い回答です。「下げた」回答をみてみると、2020年の2.7%に対して2021年は5.6%と増加しています。派遣社員・契約社員では2020年においても「変わらない」が最も多く、「上げた」が続いていますが、やはり2021年は「上げた」の割合が減少し、その分「変わらない」「下げた」が増加している傾向はアルバイトと同様でした。2021年は長引くコロナ禍の影響による業績不振があり、給与額の底上げが鈍化したものと考えられます。
2020年より回答割合は減少していますが、給与を「上げた」と答えた担当者は2021年も約4割と半数に近い結果です。これらの企業において給与を上げた要因はどのようなものがあるのかみてみましょう。
出典:株式会社マイナビ 2021年6月「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2021年)」
まずアルバイトにおいては、「人材確保が難しくなったため」が最も多く約39%、次いで「既存社員のモチベーションアップのため」が36.7%という結果でした。一方派遣社員では「正社員との不合理な待遇改善のため」が最も多く、40.7%と4割を超えました。2番目に多かった理由はアルバイトと同様で、「既存社員のモチベーションアップのため」で39.8%と、こちらもほぼ4割という結果でした。契約社員の場合は「既存社員のモチベーションアップのため」が最も多く選ばれており、40.9%の担当者が挙げています。次いで「正社員との不合理な待遇改善のため」37.4%が続いています。
また、全ての雇用形態において「コロナウイルス感染拡大による特別手当」を挙げた割合が2020年より増加しており、アルバイトで10.8%→14.4%、派遣社員で15.8%→18.5%、契約社員では13.0%→17.0%と、いずれも3〜4ポイント程度の増加を見せています。
これらの結果から、コロナ禍の影響とともに、中小企業においても同一労働・同一賃金の施行が始まり、給与面にも影響が出てきたことがわかります。特に既存社員の待遇改善とそれによる雇用維持を目的とした給与の増額が多かった様子が窺えます。
離職防止・人材確保が給与アップの主な理由に
コロナ禍の状況も含め、先行きが不透明な点も多い2021年において、今後の動向はどの様に見る企業が多いのでしょうか。今後の給与変更予定に関するアンケート結果をみてみましょう。
出典:株式会社マイナビ 2021年6月「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2021年)」
全ての雇用形態において2021年は「上げる予定」が2020年を下回り、その分「変わらない予定」の割合が増えていることがわかります。「下げる予定」については前年比とほぼ同様の割合です。
ただし、業界別に見てみると「上げる」を選んだ割合が前年比プラスになっている業種もあります。「上げる」を選んだ割合が増えた業種としては、「飲食・フード」(+5.1ポイント)「事務・オフィスワーク」(+0.3ポイント)「介護」(+3.5ポイント)です。アルバイトの給与を上げると答えた割合が最も多かった業界は「飲食・フード」で29.9%、次が「警備」で25.4%でした。これらの数字から、2021年においては多くの業界・雇用形態において、従業員の給与アップについては慎重な企業が半数近いということがわかります。
給与アップを考えている理由については次の通りです。
出典:株式会社マイナビ 2021年6月「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2021年)」
最も多く選ばれた回答は全ての雇用形態で、「既存社員のモチベーションアップのため」でした。アルバイトで42.2%、派遣社員で46.1%、契約社員では43.4%と、いずれの場合も4割を超えています。
2番目に多く選ばれた理由はアルバイトと契約社員では「人材確保が難しくなったため」で、アルバイトで34.4%、契約社員では35.2%でした。派遣社員の場合は「正社員との不合理な待遇改善のため」が2番目で39.4%、こちらは契約社員でも3番目に多く選ばれており、34.4%でした。また、「コロナウイルス感染拡大による特別手当」を挙げた割合は全ての雇用形態で増加しています。
まとめ
2021年における非正規雇用の給与については、全ての雇用形態において「変わらない」「下げた」と消極的な態度を見せる企業が多いことがわかりました。給与を上げた企業においては、既存社員の継続雇用や満足度向上が目的となっているようです。コロナ禍が続く中で、様々な状況が変化を見せている2021年ですが、採用担当者においては情勢や自社の経営状況をみながら給与条件を考えていく必要があります。そのためには日々情報収集をしながら採用活動をおこなっていきましょう。
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