新型コロナウイルス感染症の影響は私たちの生活を日々変化させています。感染予防の観点から人と人との接触を極力抑えるという「新しい生活様式」に則って生活する上でも、働き方や家族支援と仕事の両立という面で悩みを抱える人は少なくないのではないでしょうか。
元々利用していた介護関連施設・サービスがコロナ禍で一時休業する、時間短縮といった状況となり、家族のサポートと仕事の両立が難しくなった人もいると思われます。
そのような労働者を雇用する事業主を支援するために始まったのが、両立支援等助成金の「新型コロナウイルス感染症対応特例」です。
今回の記事では、この両立支援等助成金の概要と新たに始まった特例の内容についてご紹介します。
目次
「介護離職防止支援コース」の新型コロナウイルス感染症対応特例
両立支援等助成金の概要
両立支援等助成金は、厚生労働省が創設した制度の一つです。主に家庭と仕事の両立を支援することを目的としており、労働者のスムーズな家庭生活と職業生活の両立に取り組む企業に対し、5つの支援コースを通して支援をおこなうというものです。
この助成金の目的は、大きく次の2つとされています。
・職業生活と家庭生活の両立支援
・女性活躍推進
労働者が安心して働き続けるためには、円滑な家庭生活を守ることは不可欠です。このような助成金や制度を上手に活用し、家庭と仕事の両立を図る労働者を適切にサポートするために活用したいですね。
出典:厚生労働省「2020年度 両立支援等助成金のご案内」を加工
https://www.mhlw.go.jp/content/000623758.pdf
各コースの概要は以下の通りです。
(1)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
このコースは男性の育児休業取得を促進し、出生後のスムーズな家庭運営をサポートするためのコースです。
男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場づくりに取り組み、実際にこれらの休暇を取得した男性労働者が生じた場合に給付されます。
(2)介護離職防止支援コース
仕事と介護の両立を支援し、働きながら介護を続けられる環境を作るためのコースです。介護支援プランを作成した上で、プランに沿って介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ場合に、労働者の休業取得時と職場復帰時にそれぞれ助成を受けることができます。
(3)育児休業等支援コース
仕事と育児の両立を目的としています。育休復帰支援プランを作成した上で、プランに沿って育児休業の取得・職場復帰に取り組んだ場合、休業取得時と職場復帰時に助成を受けることができます。
休業する人員の代替要員を確保した場合や、業務改善によって業務をカバーした場合に、別途助成や加算を受けることもできます。
(4)再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
退職者の再雇用促進を目的にしたコースで、家庭との両立が難しく退職を余儀なくされた労働者の職場復帰促進に利用することができます。
家庭の都合で退職した労働者について、退職前の勤務評価に基づいた再雇用制度を整備・周知し、実際に再雇用を行なった場合に助成を受けることができます。ここでの家庭の都合とは、次のケースが該当します。
・妊娠
・出産
・育児
・介護
・配偶者の転勤
・配偶者の転居を伴う転職
(5)女性活躍加速化コース
社会における女性の活躍を推進するためのコースです。女性活躍推進法に基づき、具体的な数値目標を設定した行動計画を策定し、その数値目標を達成した場合に支給を受けることができます。
数値目標は、次の項目について自社の現状を把握し、課題に基づいて設定する必要があります。
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女の平均継続勤務年数の差異
・労働者の各月ごとの平均残業時間等の労働時間の状況
・管理職に占める女性労働者の割合
※厚生労働省:「事業主の方への給付金のご案内」より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
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「介護離職防止支援コース」の新型コロナウイルス感染症対応特例
今回、新型コロナウイルス感染症対応特例が設けられたのは、前項で紹介した5つのコースのうち、(2)介護離職防止支援コースです。
この特例は、新型コロナウイルス感染症への対策として、家族介護をおこなう労働者がより休みやすい環境を整備した中小企業事業主を対象としています。
支給要件となるのは、次の2つです。
・新型コロナウイルス感染症への対策として介護のための有給休暇制度を設け、社内に周知すること
(所定労働日の20日以上取得できる有給休暇で、法定の介護休業・介護休暇・年次有給休暇とは別の制度である必要がある)
・新型コロナウイルス感染症のため、この制度を利用して労働者が5日以上休暇を取得すること
労働者が「新型コロナウイルス感染症のため」に休暇を取得したとみなされるのは、次のいずれかに該当する場合です。
・家族が普段利用している、あるいは利用しようとしている介護サービスが新型コロナウイルス感染症による休業などで利用できない場合
・家族が普段利用している、あるいは利用しようとしている介護サービスの利用を、新型コロナウイルス感染症への対応のため控える場合
・普段家族を介護している人が、新型コロナウイルス感染症の影響で介護できなくなった場合
これらの条件を満たし、労働者が休暇を取得した場合に、その日数に応じて下記の金額を受け取ることができます。
・合計5日以上10日未満:20万円
・合計10日以上:35万円
※ 1事業主あたり5人まで申請可能
ちなみに、申請期限は支給要件を満たした翌日から2ヶ月以内となっています。申請先は各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。
※厚生労働省「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内」より
https://www.mhlw.go.jp/content/000644721.pdf
従来の「介護離職防止支援コース」について
労働者の、家族の介護との両立にあたり「介護支援プラン」を策定し、そのプランに基づいて支援に取り組んだ場合には、コロナ特例だけでなく、通常の介護離職防止支援コースの助成を受けることができます。従来の助成金とコロナ特例の助成金は合わせて受給することも可能です。
通常の介護離職防止支援コースには、次の3つの助成があります。
※厚生労働省「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内」を加工
https://www.mhlw.go.jp/content/000644721.pdf
介護休業取得時の場合は、介護支援プランを作成していること、労働者がプランに基づく合計5日以上の介護休業を取得することが要件となっています。職場復帰時の場合は、介護休業を取得した労働者と面談をおこない、その内容を踏まえて原則原職へ復帰させ、かつ3ヶ月以上継続雇用していることが必要です。
介護両立支援制度の助成を受けるには、介護支援プランを作成した上で、次のいずれか1つ以上の制度を整備、労働者が合計20日以上取得し、その後も引き続き継続雇用されていることが要件となります。
・所定外労働の制限
・時差出勤
・深夜業の制限
・短縮時間勤務
・介護のための在宅勤務
・法を上回る介護休暇
・介護のためのフレックスタイム
・介護サービス費用補助
※厚生労働省「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内」より
https://www.mhlw.go.jp/content/000644721.pdf
まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響は様々な場所で働き方の変化を生んでいます。家庭と仕事の両立もこれまでになかった課題が生じてくることも多いでしょう。これを労働者個人の問題とせず、社会全体で解決していくという視点が、今後はより重要になってくるでしょう。今回の制度のように、活用できる制度は積極的に活用し、労働者にとって安心して働ける環境作りに取り組んでいきたいところですね。
<参考>
厚生労働省:「事業主の方への給付金のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
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