人材育成・マネジメント
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「怒りっぽい人」が存在すると、会社は崩壊する

あなたの職場には「すぐに怒る人」がいませんか。
怒りっぽい人がいるために、職場の生産性が低下した経験はないでしょうか。

知り合いの職場に、社長の怒鳴り声がいつも響いていたオフィスがありました。
しかし実際に見ていると、社員の対応はさまざまでした。
怒りっぽい人がいると、みんなの態度が変わっていきます。

その会社には、例えば朝、なんだかんだ理由をつけて直帰や直行をして、出社を避けるようになる社員がいました。
席にいるときに怒声を聞くのが嫌だからと、わざわざヘッドフォンをつけてコミュニケーションを遮断する社員もいました。
「必要以上のことをやって怒られたら大変だ」と、最低限のことをやって、さっさと職場を去ろうとする人も出てきました。

聞くと、この社長は、体育会系出身。「良かれと思って」「みんなの成長のために」怒鳴ったり叱ったりしていました。決して意地悪な気持ちではなく、むしろ相手のことを思っていたのです。

でもこれだと逆効果です。

ある学校では「怒鳴る教員」のために不登校の生徒が続出したそうです。
こんな風に「怒る人」が新たな問題を作り出すこともあります。

 

「怒る人」がいると作業が遅れる

チームに1人、怒りっぽい人がいるだけで、作業が遅れることもあります。
特に上司が「怒る人」だと、迅速な作業が難しくなります。

世の中にはいろんな人がいます。怒られても平気な人もいれば、繊細なために叱責がずっと気になってしまい、実力を発揮できない人もいます。
中には、「叱責されないこと」を目的にしてしまう人もいます。「怒られないこと」が社員の第一の目的(プライオリティ)になるためです。

大事な報告書を、上司の機嫌がいいときを見て出したことはないでしょうか。
今機嫌が悪いみたいだから、後にしておくか、とか、あの人怒りっぽいから、完成度を上げてから出すかーーといつまでも自分一人で悩んだことはないでしょうか。

機嫌が悪いのがデフォルトだと、こんなふうに、報告を遅らせる人々が出てきます。

こういう上司には、ちょくちょく相談しづらいので、いわゆる「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」もできません。
怒りっぽいから、途中に何かトラブルが起きても、すぐ相談できません。

こうして、すぐに対処できないトラブルはどうなるか。トラブルは迅速処理が必要なため、別のトラブルに繋がります。生産性がどんどん下がっていきます。

 

「怒る」人は未熟であると考える人々がいる

フォーブズジャパンの記事「最悪の上司を持ったことを示す10のサイン」では、怒鳴る人を「最悪の上司」に分類しています。

——
職場で怒鳴ることはプロ意識に欠け、誰しも自制心に欠けた上司を相手にすべき状況に置かれるべきではない。上司が定期的に怒りを爆発させているようであれば、他の職務や企業を考えるべきときかもしれない。一方、それがたまに起きる程度であれば、問題に直接対処できるかもしれない。
(*1)
——

厳しいですね。

そうはいっても「叱ること・怒ること」は重要ではないか。例えば、学校の先生は叱るじゃないか。未熟な人は叱って「直してあげた」方がいいのでは?
と思うかもしれません。

ところが、世の中の人にはそう考えない人も増えています。
例えば、ベストセラーになった「幸せになる勇気」では怒りを「人間の未熟さである」と言います。

——
哲人 叱責を含む「暴力」は、人間としての未熟さを露呈するコミュニケーションである。このことは、子どもたちも十分に理解しています。叱責を受けたとき、暴力的行為への恐怖とは別に、「この人は未熟な人間なのだ」という洞察が、無意識のうちに働きます。

(*2)
——

つまり上司は「教育のために叱ってあげてるつもり」のはずが、逆に「未熟な人間である」とレッテルをはられる危険性があるわけです。

実は「怒りを見せてはいけない」とするのは東南アジアでも普通にみられる価値観ですし、「憤怒」をよくないこととする宗教もあります。

グローバルな職場では尚更です。

 

Googleが言い出した生産性向上

Googleは、効果的なチームには心理的安全性が必要と言い出しました。以下は、「効果的なチームに固有の力学を突き止める」という文章の一部です。

非常に有名なのですが、こんな文脈です。

——

その結果、リサーチチームは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。チームの効果性に影響する因子を重要な順に示すと次のようになります。

心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。(*3)
——

この文書は非常に有名になりました。今は多くの職場はこの方向に動きつつあります。
そして、最近では学校現場でも「頭ごなしに怒る」ことはしない方向になりました。
「アクティブラーニング」など生徒に意見を言わせることが重要視された現場では、心理的安全性がないと創造力も発揮できないというわけです。

「俺はずっと怒鳴られて育ったのに」と思うかもしれません。
工業化時代はそれでもよかったのです。しかし、昨今のクリエイティビティが必要な仕事ではそうはいかないのです。逆に軍隊など統率が命に関わるため、今でも「怒鳴る」コミュニケーションが有効な職場もあるかもしれません。

 

「怒り」はコントロールできるのか

「そうはいっても怒りは必要な感情ではないのですか」と思う人もいそうです。

実は、これもその通りで、怒りが湧いてしまうこと自体は仕方ない。
そして、アンガーマネジメントは「怒らないことではない」そうです。むしろ、「怒りを使わずにどう相手に伝えるか」に近いと感じます。

安藤俊介さんの「怒りが消える心のトレーニング」では、「怒りに振り回されずに、コントロールすること」としています。(*4)

怒りの感情は自然なもの。しかし重要なのは、怒りを感じた時に、上手に怒りを伝える方法だと言います。怒りはあってもいいのです。でも「どうコントロールするか」が重要なのです。

怒りは誰にでも起きる。けれども放置して怒りに飲み込まれるとビジネスが回らなくなる。そのため、「アンガーマネジメント」を学ぶことはいよいよ重要になっているのです。

 

ーーーー
出典)
(*1)
「最悪の上司を持ったことを示す10のサイン」
https://forbesjapan.com/articles/detail/44237

(*2)岸見 一郎,古賀 史健. 幸せになる勇気

 

 

 


【著者プロフィール】

のもときょうこ 

早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。

 

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