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人手不足?有能で優秀な人材は、夕方のスーパーにたくさんいるよ!

わたしは怒ってる。
そう、もう何年も、ずっとずっと怒ってるのだ。

超有能なパートのおばちゃんTさんが、相当な仕事量をこなしながらも、学生バイトのわたしと同じ給料をもらっていたことに。

 

同じ時給で働く超有能なパートのおばちゃん、Tさん

学生のとき、わたしはとある家具屋でアルバイトしていた。

社員とアルバイトの比率は半々くらい。とはいえ、アルバイトも基本みんな週5日フルタイムで働いている……という感じの店だ(わたしも週2日大学、週5日バイトしていた)。

アルバイトはわたし含め20代が数人いたが、主に子育てを終えた主婦のアルバイト、いわゆる「パートのおばちゃん」がメイン。

わたしが担当していたリビング・ダイニングエリアにも、40代後半くらいの主婦、Tさんが働いていた。身長が高くすらっとしていて、落ち着いた声で話す、物腰の柔らかな素敵な人だ。

そしてこのTさん、めちゃくちゃ仕事ができる。

お客様対応にソツがなく、丁寧で細やかな接客をし、確実に販売ノルマをこなす。お礼状も欠かさないし、人間関係でも敵をつくらない。

しかも、事務処理能力がハンパじゃない。

新家具のカタログをきれいに整理したり、お客様にお渡しする資料を定期的に補充したり、納期が変更された家具がないかチェックしたり……とにかく気が利く!

「うっかりまちがい」や「記入漏れ」なんて話をいっさい聞いたことがないし、他の人が気づかない雑務をそれとなくやっておいてくれる。

どんな仕事でもきっちりちゃんとやる人で、社員たちがその気配りに甘えていたくらいだ。

うっかり連発で気が利かないわたしは、そんなTさんの仕事ぶりを見て、毎回「すごいなぁ」と思っていた。

 

Tさんは大手企業でバリバリ働けるスペックの人だった

そんなある日、Tさんが昔、超一流大手企業で働いていたことを知った。

もともとはそこで働いていたが、子育てを機に退職、子どもが大きくなったから週5日働ける場所を探してこの家具屋を見つけたそうだ。

そりゃまぁ、そんな大きな会社で働いていたのであれば、お客様対応や事務処理なんてお手の物だろう。仕事もできるわけだ。なるほど、納得する。

……あれ?

じゃあTさんって、そんなに仕事ができて、大手企業で働いていた経験もあるのに、わたしのようなたいしてなにもできない学生バイトと同じ時給で働いてるの!?

いやいやいや。
わたしなんて、まともな社会経験もないし、要領も悪い。勢いでお客さんと仲良くはなれるけど、事務処理能力が壊滅的で、20万のソファーの決済やらかしかけた人間だぞ。

そんなわたしと、仕事が丁寧で事務処理が得意、社会人経験がある有能なTさんが、同じように扱われるなんておかしいよ。

Tさんの能力は、時給950円で買っていいものじゃないって!

そう思うと、なんだか腹が立ってきた。
有能なTさんにも、その家具屋にでもない。

「めっちゃ仕事ができるTさんが、その能力と貢献に見合った給料をもらえない環境で、パートのおばちゃんをしている」という、その現実にムカついたのだ。

 

高い能力を持て余し、安い給料でアルバイトする主婦たち

これはなにも、Tさんにかぎった話じゃない。焼肉屋のキッチンで働いていたSさんもそうだし、結婚式場で働いていたOさんもそうだ。

わたしが出会った有能なパートのおばちゃんたちは往往にして、以前どこかの企業で事務や総合職として働いた経験をもっていた。

基本的な顧客対応はもちろん、言葉遣いが柔らかく丁寧で、電話応答なんて朝飯前。書類仕事もお手の物。

そりゃそうだ、きちんとした企業でちゃんと研修を受け、前線で働いていた人たちなんだから。

そのうえ、そういった主婦の人たちは、マルチタスクがすごくうまい。

いくつもの作業が同時発生しても、「じゃあわたしはこれをやってこれをやるから、あなたはこれをお願い」と焦らずに処理してくれるのだ。

「女性だから」「母親だから」という言い方はこのご時勢よくないのかもしれないが、子どもを起こしつつ朝ごはんとお弁当をつくり、スーパーの特売品を見ながら数日先の献立まで組み立てて買い物し……という長年の経験があるからなのかな、なんて思う。

で、仕事がめちゃくちゃできる彼女たち「パートのおばちゃん」が、低い給料で高い能力を発揮しているのを見ると、なんだかこう、買い叩かれているというか、もったいないというか、複雑な気持ちになるのだ。

もちろんこれはわたしの個人的な経験の話であって、アルバイトをしている主婦の方が全員そうというわけではない。

でも逆にいえば、わたしの観測範囲内だけでも、「損してる有能なパートのおばちゃん」はたくさんいたわけで。日本全国に目を向ければ、同じ境遇の人は山ほどいるだろう。

そんなたくさんの人たちが、その能力を持て余し、貢献に見合わない給料しかもらっていないなんて……もどかしい気持ちになってしまう。

 

「家族に迷惑をかけない」を最優先にして働く人たち

もともとは企業でバリバリ働いていた。しかし子育てで退職、その後はパートのおばちゃんとして近所でアルバイトをする。

こういう女性は多い。本当に多い。

本人の能力は十分でも、10年もブランクがあるとなると、そう簡単に「古巣」には戻れない。しかもこの10年間で急速にデジタル化が進んだから、なおさら社会復帰はむずかしい。

しかも主婦の社会復帰は、「家庭に悪い影響がない範囲で」という制約がつきがちだ。それは家庭の方針かもしれないし、その人自身がそれを望んだ結果かもしれないけど、いずれにせよ「まずは家庭」。

だから自分の能力ややりたいことよりも、家から近いとか、お昼働けるとか、主婦が多くて子どもの急な用事も対応しやすいとか、そういう「条件」面で仕事を選ぶことになる。

結果的に、本来ならもっと高度な仕事をしっかりこなせるような人も、パートのおばちゃんとして、そこらへんの学生バイトと同じ仕事を、同じ賃金でこなすのだ。

……ほらやっぱり、おかしいじゃん!

本来できることよりもずっとかんたんな仕事をして、やっている内容より低い給料しかもらってないなんて、見ていてなんだか歯がゆいよ!

この人はこんなところでこんな仕事してるべき人じゃないんじゃないの!?

わたしは企業に勤めていないから関係ないといえばそうなんだけど、将来大切な友だちが同じ道を歩むかもしれないと思うと、腹の奥がムカムカしてくる。納得がいかないし、どうにかならないか、という気持ちになる。

 

買い叩かれているパートのおばちゃんをリクルートしてくれ!

もちろん、その人たち自身が「それでいい」というのであれば、わたしが口を出すことではないのはわかってるんだ。扶養控除もあるしね。

でも、あんなに仕事ができるTさんと、なにもできない学生バイトのわたしが同じ賃金なのはおかしくない?というのはずっと思っていて。

最近話題の「女性活躍推進」なんて言葉を聞くたびに、いま最低賃金付近で簡単な仕事をアルバイトとしてやってる有能な主婦の人たちをすくい上げてー!と言いたくなるよ。

まぁ、仕事での貢献が評価され、アルバイトからそのまま社員になった主婦の話もちらほら聞いたことあるけどさ。でもそれって、「もともと社員としてバリバリ働ける能力をもっていたのに、まずはアルバイトとして働くしかなかった」ってことでもあるからね……。

そういう人たちが、能力を発揮して、相応の対価を得られる環境を見つけられるといいな、と思うのだ。

もちろんこれは、アルバイトとして働く主婦にかぎらず、介護離職や病気での退職などでキャリアチャンスを失ってしまった、いろんな人に当てはまる。

いまの時代、60歳、70歳でも現役で働いている人がたくさんいるのだ。それなのに、ライフスタイルの変化や健康面での理由で、30代や40代でキャリアが閉ざされちゃうのは厳しすぎないか?

10年のブランクがなんだっていうんだ。10年働いて仕事ができない人より、10年現場から離れていた有能な人のほうが、よっぽど活躍できると思うぞ。

人手不足を嘆くなら、いま買い叩かれている有能なパートのおばちゃんたちを、ぜひリクルートしてほしい。

彼女たちは社会復帰してまたバリバリ仕事ができてうれしいし、企業は有能な人材ゲットできてウハウハだし、国は女性活用推進の成果として胸を張れるし、みんなハッピーだと思うんだけど、どうだろう?

 


雨宮紫苑

ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。twitter→@amamiya9901

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