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人手不足倒産を避けるーーアルバイトにやる気を出してもらうために知っておきたい3つの原則

人材不足が企業のアキレス腱になる時代。帝国データバンクの2019年の調査によると、「人手不足倒産」は6年連続で最多を更新したそうです。

2019年度の人手不足倒産は前年度比14.8%増の194件となり、6年連続で過去最高件数を更新するなど、人手不足が企業活動に及ぼす悪影響は深刻になっている(帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2019年度)」(*1)。

新型コロナの影響で2020年は旅館・ホテルを中心に人手不足は解消されたものの、「非正社員では、企業の16.6%で人手が不足していた」状況であることがわかっています。

目次

「人の確保」が生命線になる時代、人はお金だけでは動かない

「お金」だけでは人は動かない

論理が無茶苦茶だと人は疲弊する

反社会的な環境では人は働きづらい

人は感情で動く

「人の確保」が生命線になる時代、人はお金だけでは動かない

特に小規模の企業では「人の確保」が生命線になることも増えています。

アルバイトに仕事してもらいたいけど、どうもモチベーションを持ってもらえない。せっかく仕事を覚えてもらったのに、なかなか定着してもらえないーーそんな悩みを持つ会社も少なくないでしょう。アルバイトは「社員」と違い、長期的展望がないのも一因かもしれません。

実際に、最近の大学生や若者のアルバイトと仕事していて感じるのは、「お金だけで働かない人が増えている」ことです。
マイナビの調査(*2)によると、大学生のアルバイトの目的は、「将来の仕事や職業に役立つような経験をする(24.6%)」「どのような仕事が自分にあっているか理解する(13.1%)」「将来の仕事や職業についてアルバイト先の人と話をする(8.6%)」など、将来の仕事や就職活動を意識したものになっています。成長機会、人間関係の広がりなどいろいろなものを求めて働きます。

どうしたらアルバイトに気持ちよく働く職場を作れるのか。選んでもらえる職場を作るのか。長く働いてもらえるのか。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスが提唱した「説得の技術」を応用してみましょう。

「お金」だけでは人は動かない

お金だけでは人は動かない。何もアルバイトに限ったことではなく、大昔から人に動いてもらうために重要な原則です。

では人が真に納得して働くためには何が必要なのか? 
アリストテレスは著書『弁償術』で、他人を説得するのには、「ロゴス・エトス・パトス」が必要だと言いました(*3)。

「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50 」によれば、「ロゴス」はロジック=論理のこと、「エトス」はエシックス=倫理のこと、「パトス」はパッションー情熱のことです。

この3つがあって初めて人は動く気になれるというのです。

人は論理で納得し、感情を揺さぶられ、倫理的なものも気にする。これは現代社会でも十分通用します。終身雇用ならともかく、雇用形態が比較的緩やかなアルバイトではなおさらでしょう。

 

論理が無茶苦茶だと人は疲弊する

「論理だけでは人は動かない」。そうは言っても、まずは論理が通っていないと、人はフラストレーションを感じます。

論理だけで人を説得することは難しいと指摘はしたものの、一方で論理的にムチャクチャだと思われる企てに人の賛同を得ることは難しいでしょう。
(*4)

「昨日と今日と上司の言ってることが違う」
「上司によって指示の出し方が違うから混乱する」
「来週までに提出すればいいと言われたのに、『まだできてないのか』って怒られた。理不尽だ」
というようなケースです。

上司の機嫌によって左右されたり、好き嫌いによって扱いが違ったりーー「お金を払っているんだから、いいだろう」とばかりに、無茶な論理を振り回すと、例え短期アルバイトだとしても、人は疲弊してしまいます。

例えば、日本企業で働いていたある外国人のアルバイトの方が「事前に言われた仕事と、当日指示された仕事の内容が違う」と、すぐにやめてしまった例がありました。日本企業が現場の都合で職務内容を逸脱した業務を頼んだところ、「これはおかしい。働く必要はないだろう」と感じたようです。

 

反社会的な環境では人は働きづらい

しかし論理だけでは十分ではないのです。次に重要なのは、エシックス、つまり倫理です。

「自分の会社が環境破壊しているかも」
「うちの会社は人を搾取する会社かも」
「もしかしたら反社会的活動の片棒を担いでいるかも」

これだと人は「このままこの会社で働いていていいのだろうか」と不安になります。

「エトス」とは、エシックス=倫理のことです。いくら理にかなっていても道徳的に正しいと思える営みでなければ人のエネルギーを引き出すことはできません。
(*5)

なお、多様性のある環境だと「倫理」が異なるケースもあります。マレーシアでもある会社がお酒を取り扱い始めた途端に、やめてしまった方がいました。この方はイスラム教徒でした。マレーシアではこのように、宗教の違いによってやめてしまうことがよくあります。

このように、倫理は人によって異なるため、対話によって、相手のバックグラウンドを知っておくことも、ときには重要です。

人は感情で動く

最後が情熱です。

そして三つ目の「パトス」とはパッション=情熱のことです。本人が思い入れをもって熱っぽく語ることで初めて人は共感します。手を胸に当てて想像してみて欲しいのですが、もしシラけきった表情の坂本龍馬が、さもつまらなそうに維新の重要性を訴えていたとしたら、あれだけの運動を起こすことができたでしょうか? 
(*6)

人はパッション(情熱)で動くのです。

一方で、職場の雰囲気が悪かったり、関係がギクシャクしているために、やる気を失う人、「職場の人間関係」が原因で会社をやめる人もいます。

「上司が苦手で嫌い」
「職場の雰囲気が最悪」

これだと、結局は「この人のために働こう」「このチームで成果を出そう」と思ってもらえることが減り、やる気を失ってしまいます。

難しいのが注意やアドバイスをするときです。いくら正論を言っても、本人が傷ついてしまったり、「自分はダメなんだ」と思い込んでしまうと逆効果です。人は感情で動きます。

このほかにも、労働時間や就業規則、勤務形態などいろいろな要素が複雑に絡むのが人事の難しさですが、リーダーにとって、人を動かすための3つの要素を知っておくのは重要なポイントになりそうです。

 

参考文献)

(*1)帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2019年度)」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200104.html
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200510.html

(*2)
大学生のアルバイト実態調査(2021年)pdf p28

(*3)ー(*6)「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」より

 

のもときょうこ プロフィル
文筆家・編集者。早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)「マレーシア小・中・高校生留学の基礎知識: 進学方法と知っておきたいこと 」(キンドル版)。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。2013年ごろから、マレーシアの教育分野についての情報を発信している。

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