人材育成・マネジメント
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接客における話術向上は自分磨きのトレーニング

日々、お客様と向き合う接客業にとって、笑顔や身なりと同等に大切なものは「話術(会話力)」です。特にサービス業においては、購買意欲や食欲、興味の増進に直結するため、会話力は重要な要素と言えます。

図1は、販売購入形態別にみた消費生活相談割合の変化を表したものです。インターネットを利用した商品購入(ウェブサイトの利用料やオンラインゲーム等のデジタルコンテンツ含む)や取引が、より身近で日常的なものとなってきたため、「インターネット通販」での相談件数が増加していますが、65歳未満の「店舗購入」での相談件数は27.7%と、全体の3割弱を占めています。店舗での商品購入の際、基本的には、店員と会話をした上で購入を決定しているはずなので、そこでの説明不足や認識の違いなどが、消費者センターへの相談件数が多い原因と考えられます。


図1:消費者庁/平成30年版消費者白書 第1章 消費者問題の動向と消費者意識・行動、販売購入形態別にみた相談状況(販売購入形態別消費生活相談割合の推移)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2018/white_paper_108.html#zuhyo-1-1-3-13

一方、最近では「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉を耳にすることがあります。これは、「顧客や取引先からの著しい迷惑行為」*1を指します。
完全なる「一方的な迷惑行為」の場合もありますが、店員側の対応(会話、態度)によっては、ある程度、激化をコントロールすることができるのではないかと思います。

クレームやカスハラへの対応に限らず、より質の高い接客技術を身に着けるためには、アルバイト従業員への教育が肝心です。アルバイト従業員を指導する際、会社のマニュアルには書かれていない「話術アップのテクニック」を使うことで、より良好な関係を築くことができます。まずは社内から話術(会話力)を向上させ、その先の接客力の向上へとつなげていきましょう。

目次

接客時の「会話」にまつわる悩み

話術(会話力)アップに欠かせないテクニック

話術(会話力)アップで顧客満足度もアップ

接客時の「会話」にまつわる悩み

私の顧問先で起きた、アルバイト従業員の接客(会話や対応)についての相談事例を、二つご紹介します。
まず一つ目は、介護事業所で働くAさんについて。20代前半のAさんは、週3日ほどデイサービスでアルバイト勤務をしています。介護職の業務内容はよく理解しており、食事の補助やトイレ・お風呂の身体介助といった通常業務をきちんとこなしていました。しかし、自分の年齢より50歳も上のご利用者との会話に困っていました。世代のギャップもさることながら、なかには認知症を患う方もいるため、どのように接したら良いのか分からず、最終的に顧問社労士の私へ相談がありました。

もう一つは、飲食店(カフェ)でアルバイトをするBさん(男性)について。9割が女性客という、人気のカフェで働くBさんは、お客様へ「おススメ商品」の提案ができず、店長から何度も注意を受けていました。「今がシーズンの飲み物など、提案したいおススメ商品はあるが、若い女性客たちが耳を傾けてくれないので、会話が続かない」と悩んでいました。前述の介護事業所と同時期の相談だったため、両事業所の代表とアルバイトの指導係たちを集めてミーティングを開きました。そこで、会話力向上につながるテクニックを交えながら、問題解決について協議しました。

話術(会話力)アップに欠かせないテクニック

職場での話術、すなわち会話力が必要なのは、ご利用者やお客様と接するアルバイト従業員だけではなく、そのアルバイト従業員へ指導や教育をする担当者にも求められています。今回は趣向を変えて、心理学的視点から話術アップの方法にアプローチしてみましょう。

ミラー効果/ミラーリング効果(Mirroring Effect)
心理学で使われる言葉で、「同調効果」とも言われます。会話をする相手と同じしぐさや行動をとることで、相手に好感や安心感を抱かせる心理学の法則の一つです。
たとえば、相手が話すスピードや話し方、言葉遣いなどを観察し、それを真似して相手に合わせます。すると、自分に対する相手の印象が変わる、というのが「ミラー効果」です。これは逆に、態度の悪い相手にも有効です。態度が悪いことを指摘すると口論になりかねない場合、相手の態度や話し方を真似することで、相手への違和感が和らいだり、相手が自分に親近感を抱く可能性もあります。態度の悪い相手に合わせることは、時にトラブルの原因となるので注意が必要ですが、相手を理解する上では知っておくと良いでしょう。

リフレーミング(Reframing)
これも心理学用語で、ある事柄・枠組み(フレーム:Frame)を別の視点・枠組みで見直すこと(Re-Frame)を指します。たとえば「忙しいからここまでしかできなかった」と「忙しい中、よくここまでがんばった」*2は、作業をやり終えた結果(ボリューム)は同じですが、この表現の違いだけで前向きな状況になり、捉え方が大きく変わります。
このように、意識的に状況や考え方を変化させることで、その先の選択の幅を広げ、対象者(言われた相手)が受けるストレスの軽減に役立つことができます。同時に、より効果的に物事を伝えることができるようになります。

皮肉過程理論/シロクマ効果(Ironic process theory)
アメリカの心理学者、ダニエル・ウェグナーが提唱した理論で、「何かを考えないように努力すればするほど、かえってそのことが頭から離れなくなる」という現象を、説明するために用いられました。同氏は、1987年に記憶力を試す「シロクマ実験」を行い、その説明のために皮肉過程理論を提唱しました。この実験は、3つに分けたグループ(「シロクマのことを覚えておけ」「シロクマのことを考えても考えなくてもいい」「シロクマのことを絶対に考えるな」の3つ)の実験参加者らに、シロクマの映像を見せ、一定時間経過後にシロクマについて尋ねる、というものでした。その結果、「シロクマのことを絶対に考えるな」と指示されたグループが、シロクマの映像を最も鮮明に覚えていた、という実験結果が得られました。
一般的には「皮肉なリバウンド効果」とも呼ばれていますが、過度な認知的負荷による思考の抑制(禁止されることなど)は、逆にそのことを想起してしまうのです。これは、業務上の重要な指示をする際に効果的な方法ではないかと思います。

話術(会話力)アップで顧客満足度もアップ

ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授、ジェラルド・ザルトマン博士の有名な言葉で「人間の脳は、5%の意識しか認識していない。残りの95%は無意識に生じている」というものがあります。この95%の「無意識下」では、いわば「習慣」や「なんとなく」といった理由によって意思決定が行われているとされています。前述の「ミラー効果」や「リフレーミング」、「シロクマ効果」と合わせて考えると、「相手の特徴やペースに合わせ、前向きな表現・肯定的な内容で会話をする」ことを繰り返すことで、お互いの印象が「なんとなく」良くなり、無意識のうちに良好な信頼関係が築けることになります。会社内での関係性に置き換えると、これらの方法でお互いに会話(指導や教育を含む)を続けることで、従業員同士の意思の疎通がさらに容易になるため、職場環境の改善にもなります。

お客様との接客時間は、業種によって異なります。店頭で短時間の接客の場合もあれば、一日中時間を共にする場合もあります。先の事例で挙げた、介護職員のAさんと飲食業のBさんでは、対象となる顧客(高齢者と若年層の女性)も、対応の仕方も異なります。しかし、いずれの場合も相手に合わせた会話ができれば、お互いが「楽しい気持ち」になれます。この「楽しい」という気持ちは、ドーパミン(ドパミン)*3の分泌を促します。ドーパミンが大量に分泌されると脳の能力が高まり、集中力や学習能力の向上に影響します。その結果、仕事に対するやる気も出てきます*4。

マイナビウーマンで、「会話が上手くなるトレーニング」*5という記事が掲載されています。そこでは「話し上手と会話上手は若干異なり、会話は相手との相互的なコミュニケーションである」と書かれています。どんなに接しにくいお客様だったとしても、話術のテクニックを駆使し、会話力アップの訓練を重ねることで、いつしかコミュニケーションに成功するはずです。お客様との「楽しい会話」を作り上げられれば、それはすなわち顧客満足度アップにつながるでしょう。

*1引用:厚生労働省/職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会・報告書p26
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11909500-Koyoukankyoukintoukyoku-Soumuka/0000201264.pdf
*2引用:マイナビウーマン/弱点を強みにかえる!あなたもまわりも元気にさせる心理術「リフレーミング」
https://woman.mynavi.jp/article/160327-32/
*3参考:厚生労働省/e-ヘルスネット(ドパミン)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-047.html
*4参考:マイナビ転職/仕事サプリ(脳科学者がアドバイス!「頑張りたいけどやる気が出ない」時の対処法
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/suppli/topics/048
*5参考:マイナビウーマン/会話上手な人の特徴とは。会話がうまくなるトレーニング方法
https://woman.mynavi.jp/article/140303-83/2/#anchor-6

【著者】
特定社会保険労務士
浦辺里香 (うらべりか)
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。

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