新学期の開始に向けて、この秋から新しいスタッフを雇用するものの、早期離職に対して不安な気持ちをお持ちの採用担当者も多いのではないでしょうか。株式会社マイナビが実施した調査によると、現在アルバイトとして働いている求職者のうち、20.1%が「早期離職の経験がある」と回答しました。*1(ここでの早期離職とは、引越しなどのやむを得ない状況を除き、就業当初は長期勤務を予定していたアルバイトを1カ月以内に辞めることを指します。)
早期離職の原因を複数回答で尋ねたところ、「上司や先輩から理不尽な指摘や指導があった」が29.1%、「働き始めたばかりの際、受け入れ体制やサポート体制が不十分だった」が17.5%という結果が出ました。*2 これにより、入社直後の受け入れ研修がいかに重要であるかが分かります。
本記事では、心理カウンセラー監修のもと、採用を定着させ、早期離職を防ぐための受け入れ研修プログラムについて解説いたします。
*1 参考)株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」p47
*2 参考) 株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」p48
目次
※各目次をクリックすると、読みたい内容をすぐにご覧いただけます。
新人アルバイトが求める研修内容
研修プログラムを構成する7ステップ
1、オリエンテーション
2、基本事項の説明
3、言葉遣い・用語の説明
4、実作業の説明
5、シミュレーションとロールプレイング
6、フィードバック
7、研修プログラムのアップデート
まとめ
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新人アルバイトが求める研修内容
7割以上が「丁寧な研修」を希望
2024年5月から6月にかけて非正規雇用の仕事を探し、かつ、直近3年以内に非正規雇用の仕事を経験した人のうち、入社後研修(入社後おおむね半年以内に受ける初任者研修)を「丁寧にしてほしい」と希望した人は73.2%にのぼりました。年代別に見ると、10代が83.0%で最も高く、次いで30代が75.0%、40代が74.1%と続いています。属性別では、フリーターが80.9%で最も高い結果となりました。
引用)株式会社マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年5-6月)」p19
理想の研修期間は「14.1日」、現実の平均は「11.8日」
直近で受けた研修期間の平均は11.8日でしたが、理想とする研修期間の平均は14.1日となっており、時間をかけて研修を行ってほしいというニーズがうかがえます。現在、研修期間が14日未満の企業は、研修期間を14日まで延ばし、丁寧な研修プログラムに調整してみてはいかがでしょうか。
引用)株式会社マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年5-6月)」p19
理想の研修スタイルは「マニュアル指導メイン」「A:基礎スキル重視(基礎スキルを覚えたうえで実践へ移る)」
直近で受けた研修では、「A:口答指導メイン」が42.5%、「B:マニュアル指導メイン」が36.5%となり、口答指導が主流となっている様子です。しかし、理想の研修としては、「A:口答指導メイン」が36.6%、「B:マニュアル指導メイン」が38.5%となり、マニュアル指導が口答指導を上回りました。
また、直近で受けた研修では、「A:基礎スキル重視(基礎スキルを覚えたうえで実践へ移る)」が33.5%、「B:実践スキル重視(実務をしながら実践スキルを覚える)」が35.4%で、実践スキル重視型が主流となっている様子です。しかし、理想の研修では、「A:基礎スキル重視」が39.1%、「B:実践スキル重視」が30.0%となり、基礎スキル重視型が実践スキル重視型を上回りました。
引用)株式会社マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年5-6月)」p20
研修プログラムを構成する7ステップ
研修プログラムを構成する一例をご紹介します。研修プログラムの例は以下の7ステップです。
1、オリエンテーション
まず、入社初日にオリエンテーションを行うことをおすすめします。会社の歴史や事業内容、今後の目標・展望、組織体制・アルバイトスタッフの位置づけなど、自社に関する情報を紹介することで、具体的な行動指針についての理解を深めてもらいます。
もちろん、オリエンテーションの際は多くの新人スタッフが不安を感じています。初対面の相手と話す場合は、お互いがどのような人物か分からないため、雰囲気が硬くなりがちです。
そのため、いきなり本題に入るのではなく、最初に「アイスブレイク」を取り入れることがおすすめです。アイスブレイクとは、話すきっかけを作るゲームやクイズなどのことで、以下のようなメリットがあります。
・緊張を解きほぐし、話しやすい雰囲気を作ることができる
・参加者の本来のパフォーマンスを発揮しやすくなる
・お互いのコミュニケーションの促進に役立つ
・お互いの理解を深め、より良いチーム形成に役立つ
現在はたくさんのアイスブレイクがあります。ぜひリサーチして、会社の研修の目的や社内の雰囲気にピッタリのものを実施してみてください。
2、基本事項の説明
会社紹介を行った後は、勤務時間や休憩時間、休む場合の連絡方法、服装・髪型の規定、社員割引の使い方など、勤務に関する基本的な事項を伝えましょう。従業員のルール違反やマナー違反などが問題となるケースがあるため、社会人にとって当たり前のことも丁寧に伝えてください。これまでの事例を動画や資料にまとめて視覚的に確認できるようにしたり、グループワークで話し合いを実施したりすると効果的です。
特に、アルバイトを休む場合のルールやマナーの伝え方について、アルバイトスタッフに共有するための具体例をお探しの方は、マイナビバイトTIMESのノウハウ記事をご活用ください。
関連記事:マイナビバイトTIMES
【バイトを休む理由21選】当日・事前に休む際の上手な伝え方
3、言葉遣い・用語の説明
社内で専門用語を使用することが多い業種の場合、分かっていることを前提にして説明すると相手に伝わりづらくなります。なるべく単語の意味や基礎的な内容から共有するようにしましょう。
また、接客業などでお客様と直接話すことが見込まれる業種の場合は特に、基本的なあいさつや、敬語などの言葉遣いについて正しい知識を伝えましょう。新人スタッフは、自分の使う言葉の誤りに気付いていなかったり、どのように改めれば良いのか分からなかったりすることが多いです。ただし、頭ごなしに「その言葉遣いはダメ」と否定しないようにしましょう。指導ではなく、本人の気付きを促す声掛けが必要です。
なお「尊敬語・謙譲語・丁寧語」などの敬語の使い方を新人に伝えたい方は、マイナビバイトTIMESのノウハウ記事も参考にしてください。
関連サイト:マイナビバイトTIMES
バイトでの正しい敬語の使い方一覧|間違いやすい言い方も解説
4、実作業の説明
業務の手順書やマニュアルをもとに、実作業について説明し、使用するレジや電話などの各種ツールの操作方法を伝えましょう。この時、一方的に伝えるのではなく、一つひとつの理解度を確かめることや、メモを取る時間を十分に確保することを意識しましょう。
特に、理解度を確かめる際には「あなたの言葉で説明して欲しい」と伝えることがポイントです。この言葉掛けにより、指示を出した上司と受け取った新人スタッフの認識のズレをすり合わせることができます。
5、シミュレーションとロールプレイング
操作方法を伝えた後は、いきなり実際の業務を行うのではなく、実際の業務を模したシミュレーションやロールプレイングを行い、伝えた内容を実践できるか確認しましょう。ロールプレイングの際は、スマートフォンで録画しておくと、振り返りの際に便利です。シミュレーションで問題ないと判断した場合は、教育担当が横について実務指導を行ってください。
この過程で得られた安心感が、現場に出た際の自信の一端になります。
6、フィードバック
研修内容に対するフィードバックも重要なポイントとなります。伝えた内容をどの程度実践できたかフィードバックするとともに、今後働いていくうえで不安なところがないか丁寧に確認するようにしましょう。
また、新人に対して「目標を10点満点として、今回は何点だったか?」とスケーリングクエスチョンを行い、自己評価をしてもらうことも効果的です。
なお、フィードバックの際には、本人のモチベーション維持のため「良い点や出来た点」も伝えるようにしましょう。一般的に、人は他者から最初と最後に提示された情報が印象に残りやすいです。従って、次の3つの順番を意識してください。
①最初にできた点を評価
②ミスをした点を指摘
③次回に活かせて前向きになれる言葉で締める
7、研修プログラムのアップデート
研修後には、アンケートを実施することをおすすめします。実際に研修を受けたアルバイトスタッフの意見をもとに改善点を抽出し、マニュアルについて加筆修正や調整を定期的に行うことで、企業に合った最適な研修プログラムを設計することができるようになります。
まとめ
アルバイトの早期離職にお困りの採用担当者に向けて、定着に繋げるための研修のコツを紹介しました。
求職者の73.2%が「丁寧な研修」を希望しており、特に10代やフリーターにその傾向が強いことが分かります。アルバイトの早期離職を防ぐためには、求職者のニーズに応じた丁寧な研修が重要です。理想の研修期間は14.1日であり、基礎スキル重視のカリキュラム設計が推奨されます。入社初日にオリエンテーションを行うほか、シミュレーションやロールプレイングを通じて実践力を確認したり、そのフィードバックを行ったりすることで、早期退職を防ぎ、長期的な雇用を促進することが期待されます。
<監修者プロフィール>
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
代表/心理セラピスト・心理カウンセラー
佐藤城人 氏
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長きにわたる心理学研究やカウンセリング、セラピストの実践と研究に基づき設立された「一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会」の代表を務める。同団体は、養成スクールとして心理カウンセラーや心理セラピストを養成・派遣している。また、自身も心理カウンセラーとして、悩みを持つ多くの方のカウンセリングを実施。対人関係・人間関係・コミュニケーションに関する悩み解決をサポートするスペシャリストとして活動する。
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