人材育成・マネジメント
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アルバイトをマネジメントする力をつけたい!カーネギーの「人を動かす三原則」をわかりやすく解説

アルバイトを雇ってみたものの、すぐに辞めてしまう、向上心がない、つまらなさそうにしている、どのような気持ちで働いているのかがわからない…
そのような悩みを抱えたことはないでしょうか。

アルバイトに気持ちよく働いてもらうためには、ちょっとしたコツが必要です。
アメリカの実業家であるD・カーネギーが残した「人を動かす」は、文字通り人を動かす立場にある人は読んでおきたい著書です。

そう難しいことが書かれているわけではありません。
ここではその一部を紹介しますので、アルバイトの管理に役立てていただきたく思います。

 

D・カーネギーという人と「人を動かす」

カーネギーは、非常に多くの職を転々としてきた人です。
州立学芸大学を卒業した後、雑誌記者、俳優、と職歴を重ね、講演会の講師として活躍するようになると、あっという間に人気講師としての地位を築き、やがて研究所を構えます。

「人を動かす」は、1936年の初版から1981年まで版を重ねるほど不動の人気を誇る書籍です。
しかし、そのエッセンスはシンプルです。

 

人を動かす三原則①盗人にも五分の理を認める(批判も非難もしない。苦情も言わない)

では本題に入りましょう。

まずカーネギーは、「人を動かす三原則」として、以下の3つを挙げています。

・盗人にも五分の理を認める
・重要感を持たせる
・人の立場に身を置く

まず、第一の項目から見ていきましょう。
カーネギーは、歴史上の人物のエピソードを連ねながら、このように述べています。

批判が呼び起こす怒りは、従業員や家族・友人の意欲をそぐだけで、批判の対象とした状態は少しも改善されない。
(中略)
人を批評したり、非難したり、小言を言ったりすることは、どんな馬鹿者でもできる。そして、馬鹿者に限って、それをしたがるものだ。
理解と寛容は、優れた品性と克己心を備えた人にしてはじめて持ち得る徳である。
<引用「人を動かす」(創元社)p14、26>

ひとつの立場に立てば相手が悪い、能力が足りない、と思っても、相手の立場にいれば相手なりの事情や考えがあるということです。
カーネギーは、罪人ということがあっても、罪人とされた人はまた自分なりの正しさを持っていることを紹介しています。

人はどうしても、物事を自分の価値観や枠組みのなかで見てしまいます。
そして、相手に意識的にも無意識的にも何かしらの期待を一方的に抱いてしまいます。

しかし、相手には相手の価値観があり、それに基づいた反応があります。必ずしも自分の期待通りの反応を示すわけではありません。
その時に、「あの人がばかなのだ」と投げ捨ててしまうことは最も楽な方法ですが、それは最も良くない方法でもあるとカーネギーは説いているのです。
アルバイトが自分の思いをわかってくれない、そんな時は相手が何を価値だと感じて行動しているのかを知りましょう。

 

人を動かす三原則②重要感を持たせる(率直で、誠実な評価を与える)

カーネギーは、人が「たとえほしいものはあまりないような人にも、あくまでも手に入れないと承知できないほどほしいもの」として以下を挙げています。

1)健康と寿命
2)食物
3)睡眠
4)金銭および金銭によって買えるもの
5)来世の命
6)性欲の満足
7)子孫の繁栄繁栄
8)自己の重要感

そして、

このような欲求は、たいていは満たすことができるものだが、一つだけ例外がある。この欲求は、食物や睡眠の欲求同様になかなか根強く、しかも、めったに満たされることがないのだ。つまり、八番目の”自己の重要感”がそれで、フロイトの言う”偉くなりたいという願望”であり、デューイの”重要人物たらんとする欲求”である。
<引用「人を動かす」(創元社)p34>

と述べています。

表向きではそう言いたがらない人は多くても、「食物や睡眠の欲求同様には強い」レベルの欲求であることを説いています。承認欲求と呼ばれるものでもあります。

そして、相手の欲求を満たす方法として、「率直で、誠実な評価を与える」こととしているのです。お世辞ではいけません。

お世辞の定義について、次のように述べた本を読んだこともある。
「相手の自己評価にぴったり合うことを言ってやること」
これは、心得ておいてよい言葉だ。
アメリカの思想家エマーソンは、「人間は、どんな言葉を用いても、本心を偽ることはできない」と戒めている。
もしもお世辞を使いさえすれば万事うまくいくというのであれば、誰でも皆お世辞を使うようになり、世の中は、人を動かす名人ばかりになるであろう。
<引用「人を動かす」(創元社)p45>

確かにその通りです。
では、どのようにすればお世辞を使わずに済むのでしょう。

カーネギーは、日頃から他人の長所を見つける習慣をつけることだといいます。
日頃から、食堂で出された料理が美味しかったらシェフにそれを伝えてもらい、接客がよかったらその場でその人を褒め、お礼を言う習慣を身につけるのが良いと説いています。

「お世辞でも嬉しい」「褒めて伸ばす」という日本語もありますが、お世辞ばかりではなんだか居心地が悪くなるのは誰でも同じではないでしょうか。
特に向上心を持つアルバイトの場合、お世辞ばかりではせっかくの向上心もなくしてしまうかもしれません。

 

人を動かす三原則③人の立場に立つ(強い欲求を起こさせる)

そして最後が、「強い欲求を起こさせる」というものです。

人が何か行動を起こす時には様々な動機があります。
アルバイトの場合、「やらないと叱られるから」「これさえやれば給料をもらえるから」といったこともあるでしょうが、自発的な行動の方がアルバイト自身の成長につながります。

では、どうすれば「自発的に、雇う側が思うように行動してくれるのか」となります。
カーネギーはこのような答えを出しています。

もちろん、我々は、自分の好きなものに興味を持つ。生涯持ち続けるだろう。しかし、自分以外には、誰も、そんなものに興味を持ってはくれない。誰も彼も、我々同様、自分のことでいっぱいなのだ。
だから、人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。
<引用「人を動かす」(創元社)p49-50>

例えば経営者の最大の興味は、売り上げです。
しかしアルバイトにとってはそうではありません。仕事が上手くなれるか、自分が役に立てるか、就職につながる経験ができるか…様々な思いで仕事をしています。

そこに売り上げの話を持ち出してモチベーションを上げようとしても仕方がないということです。

そして、仕事が上手くなりたい、自分が役に立ちたい、就職につながる経験をしたい、このような「欲求」を最大限引き出すことで、アルバイトは行動するのです。
相手の立場に立つ、というのはこういうことです。

 

まとめ 〜相手の立場に身を置くということ~

カーネギーが伝えたかったのは「常に相手の立場に身を置き、相手の立場から物事を考える」ということに尽きます。非常にシンプルです。

ところで、ソニー生命が社会人1年生、2年生を対象に実施した意識調査があります。

この中で、失敗など落ち込んでいる時に先輩に言われたらやる気に火が付くセリフが紹介されています。下のようなものです(図1)。

アルバイトにも当てはまるでしょう。

図1 社会人1、2年生のやる気をアップさせるセリフ
(出所「社会人1年目と2年目の意識調査2019」ソニー生命保険株式会社)
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_190418.html

承認欲求を満たすものが多いと言えるでしょう。
また、「ノウハウやコツを教える」というのは、アルバイトによっては「仕事が上手くなりたい」という、カーネギーのいう「強い欲求」を引き起こすキーワードになるかもしれません。

一方で、やる気を奪うセリフはこのようなものです(図2)。

図2 社会人1、2年生のやる気を奪うセリフ
(出所「社会人1年目と2年目の意識調査2019」ソニー生命保険株式会社)
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_190418.html

こちらは社会人らしい部分もありますが、「ゆとり世代」「私が若いころは」「そんなことは常識」「女/男だから」というのは、完全に個人の枠組みの中でしか物事を考えていない発言です。
自分と異質であることに対して苦情を言っているだけのセリフでもあります。

場合によっては「じゃあ自分はゆとりだから周囲のようにできなくて当然だ」と開き直られてしまい事態は改善しないほか、「ゆとりじゃないこの人には何を言っても無駄だろうな」という諦め、ひいては対立心を抱くこともあるでしょう。

アルバイトは学生だとか女だからとか男だからとかいう「属性」で仕事をしているとは限りませんし、何かしらの興味があるから自社の仕事を選んでくれているのです。
その心の中にはどんな欲求を持っているのか、相手の立場に立って考えてみることが重要です。

 

 

著者
清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
https://twitter.com/M6Sayaka

 

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