マネジメント・育成
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メンター制度は本当に無駄?厚生労働省の資料を元に上手な活用法を検討してみよう

アルバイトの定着が悪い。そんな悩みを抱える職場は多いのではないでしょうか。
最近の調査結果によると、調査対象者のうち離職を経験したことのある現役アルバイトは大学生で半数弱、主婦層では7割近くを占めることがわかっています *1:p.26、*2:p.22。
仕事に対してプレッシャーや不安を抱えているアルバイトは少なくないでしょう。悩みが高じて離職に至る前に打つ手はないのでしょうか。

こうした問題の解決策のひとつにメンター制度があります。

アルバイトが抱えている問題

まず、アルバイトの不安材料と早期離職の要因をみていきましょう。
ここでは、アルバイトの代表的な属性として大学生と主婦にフォーカスし、マイナビの調査結果を基に現状をみていきましょう。

アルバイトの不安材料

まず、大学生の現役アルバイトが不安に思っていることは何でしょうか *1:p.18。

割合が高かったのは、「職場の人間関係」(44.2%)、「シフトの融通がきくか」(40.3%)、「学業と両立できるか」(37.8%)、「職場の雰囲気が自分に合うか」(37.7%)です。

このうち、「学業と両立できるか」は「シフトの融通がきくか」とも関連しますが、そうした不安を把握することができれば、例えば試験期間中は就業時間を減らし、長期休業中は逆に増やすなどの配慮によって、アルバイトの不安を軽減することができるでしょう。

次に、主婦の現役アルバイトが仕事をする上で何に悩んでいるのかみていきましょう *2。

図1 主婦の現役アルバイトが悩んでいること
参考)マイナビ(2021)「主婦のアルバイト実態調査(2021)」 p.14の図表を筆者抜粋
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf

図1のうち、ブルーの2021年の調査結果をみると、最も割合が高いのは「急な休みに対する職場への罪悪感」で、次いで「家事がおろそかになる」、「自分の時間が十分にとれない」の順になっています。

こうした悩みの中にはアルバイトの個人的な問題も含まれますが、もしそうした悩みに寄り添う人が職場にいれば、アルバイトの悩みが低減する可能性もあります。

アルバイトの早期離職の要因

同調査によると、現役アルバイターのうち早期離職経験者は、大学生で13.9% *1:p.26、主婦で18.8%に上ります *1:p.26、*2:p.22。

では、その要因はどのようなものでしょうか。
まず、大学生からみていきましょう(図2)。

図2 学生アルバイトの早期離職要因
参考)マイナビ(2021)「大学生のアルバイト実態調査(2021)」 p.26の図表を筆者抜粋
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf

グレーの折れ線が示す現役アルバイトに注目すると、最も高い割合を示すのは「想定よりも仕事がきつかった」で(36.7%)、次いで「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」の(31.3%)、「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」の(29.7%)となっています。

次に主婦の場合をみます(図3)。

図3 主婦アルバイトーの早期離職要因
参考)マイナビ(2021)「主婦のアルバイト実態調査(2021)」 p.22の図表を筆者抜粋
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf

最も割合が高いのは「想定していた仕事内容ではなかった」、次いで「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」で、どちらも40%以上となっています。

こうした要因をいち早く把握してアルバイトに寄り添い、改善策を講じれば、早期離職を防ぐことができるかもしれません。

メンター制度とは

ここからは、アルバイトの不安や悩みを軽減し、成長を促すといわれるメンター制度についてみていきたいと思います。

企業内メンター制度の概要

厚生労働省はメンター制度を以下のように説明しています *3:p.3。

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ) に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。

メンター制度は「斜め上からの支援」といわれます。
それはなぜでしょうか。

職場には、仕事の指示・命令を下し評価を行う直属の上司や先輩がいます。でも、メンターになるのは、そのような利害関係のある人ではなく、異なる職場の先輩社員がなることが一般的です(図4)。

図4 メンター・メンティの関係イメージ
引用)厚生労働省(2012)「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」 p.3
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf

これが「斜め上」の意味ですが、メンターは役員・管理職層から数年先輩まで、目的によって様々な立場の人が担当します。

メンター制度とは、通常、職場で自然発生的に生じる先輩・後輩間の育成的な人間関係を制度化したものなのです。

メンターとメンティが話し合うテーマは、先ほどみたアルバイトの不安や悩みだけでなく、「将来的なキャリア目標」や「問題解決のアプローチ」「能力向上のための学習」なども含まれます。

メンター制度とOJTとの違い

ここで、メンター制度とOJTの違いを押さえておきましょう。

OJTとは、「日常の業務のなかで、従業員に仕事を効果的に覚えてもらうために行っている取り組み」 *4:p.6 で、その目的は従業員の能力開発をすることによって、生産性をアップさせることです。

労働政策研究・研修機構が行った調査によると、OJTの具体的な取り組みで多かったのは、「とにかく実践させ、経験させる」(59.3%) 、次いで「仕事のやり方を実際に見せている」(57.5%)となっています。

これに対してメンター制度とは、上述のように、先輩社員や上司との交流・支援を通じて、キャリア形成や職場の悩みに関する問題の解決を図ることです。

メンター制度の効果

次にメンター制度の効果をみてみましょう(図5)。

図5 メンター制度の効果
引用)厚生労働省(2012)「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」 p.5
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf

この図をみると、メンター制度はメンティばかりでなくメンター自身、あるいは職場全体にも効果をもたらすことがわかります。

まず、メンティへの効果として、以下のことが挙げられます。

モチベーション向上
職場環境への適応
知識・スキル獲得
定着率の向上
視野拡大
個人のニーズに合ったキャリア開発
リーダーシップ発揮

次にメンターへの効果として「人材育成意識の向上」が、また職場全体に生じる効果としては、「コミュニケーションの活性化」が挙げられます。

この他に、「人材育成を重視するという会社のメッセージとなる」などのメリットもあります *3:p.5。

メンター制度の導入・推進と課題

ここでは、実際にメンター制度を導入する際の流れと課題をみていきたいと思います。

メンター制度導入の流れ

メンター制度の導入では以下のようなステップを踏みます *3:p.9。

<STAGE1.対象者の選定(メンター・メンティ)とマッチング>
<STAGE2.事前研修の開催>
<STAGE3.メンタリングの実施>
<STAGE4.振り返りと改善に向けた課題の整理>

このうち、STAGE1のメンターとメンティとのマッチングの留意点は、以下のようなものです *3:p.11。

メンティの期待とメンターの特性が合うか
メンティ、メンターが直属ライン以外か
メンティの能力開発ポイントを補強できるメンターか

メンタリングの実施と途中での振り返り

メンタリングの実施は、通常、以下のように進めます *3:p.13。

図6 面談テーマ、進行の例
引用)厚生労働省(2012)「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」 p.13
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf

図6にはテーマ例が示されていますが、それ以外にも冒頭でみたアルバイトの不安や悩みなどが参考になるでしょう。

あまり堅苦しくならないように、例えば就業時間中にコーヒーを飲みながら実施すれば、リラックスした気分で本音が言いやすくなるかもしれません。

ただ、メンターは職場の先輩や上司であり、コンサルティングのプロではないのが普通ですから、メンター制度を成功させるためには、初期段階が終わった時点で、振り返りをすることが有益です。

メンターとメンティが以下のようなチェックリストの項目について、当てはまるかどうかをチェックし、チェックがつかなかった項目に留意をしながら、残りの期間のメンタリングを進めます。
そして、最終的には全ての項目にチェックが入ることを目指すのです *3:p.15。

表1 メンタリング実施の後の振り返りチェックシート

引用)厚生労働省(2012)「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」 p.15
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf

メンター制度による効果はどこまで及ぶのか

最後にメンター制度の効果が及ぶ範囲を把握しましょう(図7)。

図7 メンター制度の効果が及ぶ範囲
引用)独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2018)「労働政策フォーラム:メンター制度導入とその効果」 p.8
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20181030/resume/04-jirei3-ninomiya.pdf#page=8

図7はメンター制度の効果が及ぶ範囲をマズローの欲求5段階説にあてはめて示しています。

この図からもわかるように、メンター制度は「精神的欲求」の範囲に留まります。
そして、それより下位の「物質的欲求」を満たさなければ、離職を食い止めることはできません。

したがって、アルバイトの離職を食い止め、定着を促進するための抜本的な対策は、時給や休憩などの待遇改善や労働環境の整備、マネジメントなどを充実させることであって、それらを抜きにしては、メンター制度の効果は限定的です。

メンター制度を活用するにあたっては、この制度の特徴を理解した上で、職場のあり方を見直しつつ実施していきましょう。

 

*1
参考)マイナビ(2021)「大学生のアルバイト実態調査(2021)」
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2021_daigaku-baito.pdf
*2
参考)マイナビ(2021)「主婦のアルバイト実態調査(2021)p.14
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/06/shufu-baito-2021.pdf
*3
引用・参考)厚生労働省(2012)「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf
*4
引用・参考)労働政策研究・研修機構(2021)「3割の企業が人材育成・能力開発の方針を定めず」
https://www.jil.go.jp/press/documents/20210205.pdf
*5
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2018)「労働政策フォーラム:メンター制度導入とその効果」
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20181030/resume/04-jirei3-ninomiya.pdf#page=8

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 

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