「新人のアルバイトを叱ったら、次の日から来なくなった」
「アルバイトの様子を見ているとイライラして爆発しそう」
——そんな悩みを抱えている方に必要なものは、“アンガーマネジメント”かもしれません。
感情的な怒りを表出する人を見ると、それだけで「NO!」と拒否反応を示す人が増えている昨今、大事なアルバイトを失わないためには、アンガーマネジメントが必要です。
目次
アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。
アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで生まれたといわれており、当初は犯罪者のための矯正プログラムなどとして活用されていました。
現在はアメリカの司法分野へ導入されているだけでなく、さまざまなシーンに幅広く取り入れられています。
例えば、小学校やサマーキャンプなどの教育現場、人間関係のカウンセリング、夫婦(カップル)セラピー、アスリートのメンタルトレーニングなど、アンガーマネジメントの適用範囲は多岐にわたります。*1
■心理的安全性とアンガーマネジメント
近年では、ビジネスや人材育成の現場でもアンガーマネジメントが注目されるようになりました。
アンガーマネジメントと関係性の深い概念として「心理的安全性」があります。
心理的安全性とは、簡単にいえば「対人的な不安や恐れがなく、自分らしくいられるかどうか」を示す指標です。
Google社が、“効果的なチーム”を作る重要な要素として「心理的安全性」を挙げていることが話題となり、職場の心理的安全性を意識する企業が増えています。
※心理的安全性について詳しくは「アルバイトの職場環境における心理的安全性の高め方」をご覧ください。
アルバイトが多い職場も例外ではありません。アンガーマネジメントは、心理的安全性を高める具体的な手段として有効です。
アンガーマネジメントに取り組むメリット
アンガーマネジメントに取り組むと、具体的にどんなメリット・効果が期待できるのでしょうか。
3つのポイントを見ていきましょう。
(1)アルバイトの定着率が上がる
(2)怒った後の後味の悪さから解放される
(3)職場全体が明るくなって活性化する
(1)アルバイトの定着率が上がる
1つめのメリットは「アルバイトの定着率が上がる」ことです。
「最近の若い子は、叱られ慣れていない」
「ちょっとでも怒ると、すぐ辞めてしまう」
——よく聞かれる声ですが、現場で実感している方も多いでしょう。
ここからわかるのは、ただでさえ「怒り」に弱いアルバイトが増えている現実があるということ。
追い打ちをかけるように「管理者のコントロールできていない感情的な怒り」をぶつけてしまえば、アルバイトがすぐ辞めるのは目に見えています。
アンガーマネジメントに取り組むと、この悪循環から抜け出して、アルバイトの定着率を高めることができるでしょう。
(2)怒った後の後味の悪さから解放される
2つめのメリットは「怒った後の後味の悪さから解放される」ことです。
単刀直入にいって、他人を怒った後は、疲れませんか。何ともいえない後味の悪さを、帰宅後のプライベートまで引きずってしまう人も多いでしょう。
「私は怒り過ぎただろうか」
「いや、相手が悪い、私は悪くない」
「本人だけでなく、見ていた他の人にも嫌われたかもしれない」
「やっぱり怒らなければ良かった」
「いや……」
このように堂々巡りで、怒ったことを反すうしては繰り返し考え続けているのであれば、アンガーマネジメントで不毛な時間を手放せます。
アンガーマネジメントができていれば、怒りに支配されて怒り過ぎ、後悔することはなくなるからです。
(3)職場全体が明るくなって活性化する
3つめのメリットは「職場全体が明るくなって活性化する」ことです。
多くの場合、職場の雰囲気を悪くしているのは、マネジメントされておらず感情のままに発出される怒りです。
マネジメントされていない怒りは、いわば野生の猛獣のようなもの。心理的安全性どころか、職場は危険地帯となり、安心してイキイキと働くことができません。
怒りの感情という猛獣をアンガーマネジメントによって手なづけることができれば、職場は見違えるように明るくなります。
明るく活性化したお店や会社にはお客様が集まりますから、アンガーマネジメントが業績向上のカギであるといっても過言ではありません。
アンガーマネジメント 基本の3ステップ
アンガーマネジメントを身に付けたいと思ったら、書籍や講座などを通して、体系的に学ぶことをおすすめします。
ここでは学びのきっかけとなるよう、アンガーマネジメントの基本の3ステップをほんの一端ですがご紹介しましょう。
以下は、人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」からの引用です。
「カッ!」ときて、アルバイトを感情に任せて怒りそうになったとき、この3ステップを実践してみてください。
STEP-1 6秒待つ
感情のピークは最初の6秒です。大きく深呼吸したり、頭の中で6まで数えたり、まずは6秒間待つことで、怒りのピークをやり過ごすことができます。
STEP-2 自分を怒らせた正体を知る
ある人が又はある出来事が、自分を怒らせたと考えがちですが、その正体は“べき”という言葉です。仕事はこうやるべき、部下はこうあるべきなど、自分が信じている“べき”が裏切られたときに人は怒りを感じます。自分の“べき”を知ることで、怒る前に自分の怒りを察知できるようになります。
STEP-3 “べき”の境界線を広げる
どういう“べき”を信じるかは人それぞれですが、その境界線により怒る回数は増減します。自分と同じ“べき”(OKゾーン)と自分と違う“べき”(NGゾーン)の他に、少し違うが許してもいい中間(許容ゾーン)を作り、“べき”の境界線を広げることで、怒らなければいけないことが減ります。*2
参考)人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」 https://www.jinji.go.jp/sekuhara/handbook.pdf P9 を元に筆者作成*3
「怒り」自体は自然な感情であり、“自分の中に怒りの感情が発生すること”を否定する必要はありません。
発生した怒りを、無理にコントロールして抑圧するのも、アンガーマネジメントとは異なります。
アンガーマネジメントでは、
「怒りのピークをやり過ごしながら、怒りの正体を見破り、その正体に対して許容ゾーンを増やす」
という対策を行っていくのが特徴です。
さいごに
「短気は損気」ということわざもあるように、怒りがビジネスや人間関係に良い影響を与えないことは、多くの人が経験則的に知っています。
しかし「わかっていても、止められない」という人が多い中、アンガーマネジメントは私たちに具体的かつ効果的な対応策を提供してくれる、実践的メソッドといえます。
今まで怒りに振り回されていた自分が、もう怒りに振り回されなくなる。これだけでも、精神衛生上ぐっとラクになりますが、目に見えて変化するのがアルバイトとの関係性です。
ファーストステップは前述のとおり「6秒待つ」。さあ、次に怒りがやってきたタイミングで、さっそく試してみましょう。
*1
参考)
はじめての方へ | 日本アンガーマネジメント協会 https://www.angermanagement.co.jp/about
*2
引用)人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」https://www.jinji.go.jp/sekuhara/handbook.pdf P9
*3
人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」 https://www.jinji.go.jp/sekuhara/handbook.pdf P9
【著者プロフィール】
三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。
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