人材育成・マネジメント
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アルバイトの思考力と自発性向上のためにはワーク・エンゲイジメントがポイント!

人手不足の影響もあり、なかなか教育に時間が取れないともなると、アルバイトが自分で考えて行動できるようにするのは難しいものです。
自分で考えさせていたら時間がかかってしまうからと、ついつい指示を出してしまうという方も多いのではないでしょうか。そうはいっても、一方的に指示を出してばかりでは、いつまでたっても思考力は伸びません。

そこで今回は、アルバイトの思考力をアップさせ、自発的に動けるようにする上でのポイントについて解説します。

目次

フィードバックが重要なポイント

思考力を鍛える上で気をつけたい接し方

どんな質問やフィードバックをすればいいのか

教育現場でも注目を集めるアクティブ・ラーニングとは

フィードバックが重要なポイント

アルバイトが自分で状況を判断し、適切な判断を下すためには「思考力」が必要になってきます。思考力といっても、筋肉と同じで、適切なトレーニングを行わなければ身につきません。しかし、人手不足が続く今の状況では、教育のための時間を確保して、課題をこなしながら思考力を身につけさせるというのは、なかなか難しいものです。
どうしても教育するための時間が確保できないとなると、実際に働きながら思考力を鍛え上げていくことになるでしょう。
アルバイトが自律的に動けるようにするということを考える上で重要になってくるのが、最近注目を集めるようになった「ワーク・エンゲイジメント」と呼ばれるものです。ワーク・エンゲイジメントとは、バーン・アウト(燃え尽き)とは対極にある概念で、仕事に対して活力や熱意、没入感を持った状態です。*1

以下に示すのは、ワーク・エンゲイジメントと仕事に対する自発性の認識について調べたものです。

引用)厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」201P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

これを見ると、ワーク・エンゲイジメントが高まるほど、自発的に仕事に取り組めるようになるという様子がおわかりいただけるでしょう。このワーク・エンゲイジメントを高める要素としては、上司からのコーチングや適切なフィードバックが挙げられています。*2
アルバイトの思考力を鍛え上げる上では、適切なフィードバックをするというのは特に重要です。このフィードバックが無ければ、アルバイトは自分の判断が正しかったのかどうかの判断がうまくできません。フィードバックがあってこそ、アルバイトは自分の行動について検証することができ、どのように改善していけばいいのかを考えることができます。

それでは、どのようにフィードバックしていけばいいのでしょうか?
フィードバックのポイントとしては、「具体的な行動について、行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後に誉めること」が重要であるとされています。*3

つまり、良質なフィードバックは、この3つの条件
①具体的に指摘する
②重要性や意義をちゃんと説明する
③後回しにせずに、すぐにやる

を満たしている必要があります。

良かった点や改善してほしい点は、具体的に伝えなければ、経験の浅い人は特に、次にどうすればいいのかということの判断が難しくなります。また、重要性や意義の説明が抜けてしまうと、大事な作業をうっかりやり忘れてしまうということにつながりかねません。
フィードバックすべき点を見つけたら、即時にフィードバックするというのも大事で、後でまとめてやろうとすると、具体的な場面を思い出すという手間がかかったり、場合によっては、よく思い出せないということもあり得ます。

忙しさのあまり、フィードバックをすること自体を忘れてしまうことも考えられるので、フィードバックすべき点を見つけたら、可能な限りすぐにやるというのが重要です。

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思考力を鍛える上で気をつけたい接し方

アルバイトの思考力を鍛えるためには、自分の頭で考えてもらう必要があります。そのために大事になってくるのが、「質問」です。質問をされると、それに答えようとして、思考が働きます。
ただ、注意しないといけないのが、質問のやり方です。いい質問をすると、気づきや発想のヒントになり、思考力を伸ばすのに役立ちます。一方で、悪い質問をしてしまうと、思考力を伸ばすどころか、逆に思考を止めてしまうことにもなりかねません。

注意したいのが「なぜ」という言葉で、理由を明らかにするための質問で、必ずと言っていいほどよく使われます。
トラブルの原因を究明してそれを取り除き、問題解決に役立てるという考え方は合理的です。しかし、場合によっては原因よりも、どうしたいのかということに意識を向けた方がいいということもあります。
一見すると思考力を鍛えるには、「なぜ」という言葉は向いているように思えますが、実は使い方によっては逆効果にもなり得ます。
その理由が、次の3つです。

①相手に圧迫感を与えやすい
まるで問い詰められているかのような感じを相手に与えてしまうため、好ましくないことがあります。相手が答えにくい質問の場合には特に、相手に圧迫感を与えてしまいます。
筆者も心理カウンセリングの面談練習で、どうしてなのかと理由を深掘りするような質問は避けるようにとアドバイスを受けました。圧迫感を与えすぎてしまうと、相手がだんだんと質問に答えてくれないようになってきてしまうためです。質問によって思考力を伸ばすためには、相手との話しやすい関係に気を配るというのも大事になってきます。

②言い訳を引き出しやすい
まるで責任追及されているかのような印象を相手に与えやすいため、言い訳が出やすくなってしまいます。
そうなってしまうと、問題解決に向けて思考を働かせるどころか、責任回避の方向に意識が向きやすくなってしまいます。先ほどの圧迫感を与えやすいことと合わせて、この二点に関しては、やり過ぎてしまうとアルバイトの離職を招きかねないので、「なぜ」という言葉の使い方には注意が必要です。

③できないことを理由づけてしまう
できていないことに関して理由を考えてしまうと、できない理由にばかりに意識が向きやすくなってしまいます。そうなると、どうすればできるようになるのかというアイデアが出にくくなります。
場合によっては、できないことを理由づけてしまい、それ以上思考が進まなくなってしまうということにもなりかねません。これは心理カウンセリングも同じで、悩み事の理由づけをしてしまうと、そこで考えが止まってしまい、それ以上は前に進みにくくなってしまうということがあります。
このように、質問のやり方に問題があると、思考力を鍛えるどころか逆効果にもなりかねないので、注意が必要になってきます。

どんな質問やフィードバックをすればいいのか

それでは、思考力を鍛えるためには、具体的にどのような点に気をつければいいのでしょうか。
ポイントとしては、3つあります。

①5W1Hの「Why」と「Who」以外を使って質問する
「Why」を使うのは好ましくないということは、先ほどの説明からもお分かりだと思います。また「Who」を使うというのも、人に責任をなすりつけるということにつながりかねないので、できれば避けた方がいいでしょう。よって、5W1Hの中から上記の二つを除いたものを使って質問すればいいということになります。

例えば、

What:「何が問題になっているのか?」

Where:「どこに問題があるのか?」

When:「どんな時に問題が起きているのか?」

How:「どのようにして問題が起こっているのか?」

という具合です。

筆者も心理学系のセミナーで、「Why」よりも「What」を使うようにと講師よりアドバイスを受けました。そうした方が、具体的なイメージが頭に思い浮かびやすく、答えやすいというメリットもあるからです。

②「良い点・悪い点・良い点」のサンドイッチ形式でフィードバックする
フィードバックが重要であるということはすでに述べましたが、そのやり方にも大事なポイントがあります。それが、「良い点・悪い点・良い点」のサンドイッチ形式でフィードバックするということです。

悪い点だけしかフィードバックしないでいると、アルバイトは、何がOKで、何がNGになるのかという境目がどこにあるのかということを判断するのが難しくなります。境界線がどこにあるのかということが分かるようになってくれば、アルバイトは自分で判断を下せるようになります。

③なるべく断定的な表現は避ける
断定的な表現は、相手に対してきつい印象を与えてしまうため、場合によっては、こちらからのフィードバックを受け入れてもらいにくくなってしまいます。こちらからのフィードバックを受け入れやすくするためにも、先ほどのサンドイッチ形式でフィードバックするというのが大事になってきます。

教育現場でも注目を集めるアクティブ・ラーニングとは

一方的に教えるというだけでは、思考力や自発性は、なかなか育ちません。
教育現場においても、人工知能時代を見据え、自ら考え行動できるようにするために、アクティブ・ラーニングと呼ばれるものが重要視されるようになってきています。
それでは、アクティブ・ラーニングとは、どのような考えに基づくものなのでしょうか?
アクティブ・ラーニングでは、自ら目標を設定し、自分の頭で考え、他者と協働しながら、答えの無い問題に対して最適な解を導き出せるようにするというのが目的です。その目的を達成するために大事になってくるのが、「主体的・対話的で深い学び」の実現です。*4
児童・生徒が主役となり、周囲の人と協力し合いながら、自分の考えを深めていくというがアクティブ・ラーニングです。
これは、ワーク・エンゲイジメントにも通じるところがあります。裁量性やコントロールがあれば、ワーク・エンゲイジメントは高くなるとされています。*2このことから、アルバイトに一定の裁量権を与え主体的に動けるようにするというのが、大事になってくると考えられます。

また、対話的で深い学びという点においても、仕事のパフォーマンスにおける周囲からのフィードバックは、ワーク・エンゲイジメントを高めるとされています。単に任せるということだけでなく、フィードバックもしっかり行うということも大事になってくるでしょう。
アクティブ・ラーニングやワーク・エンゲイジメントの知見をまとめると、アルバイトにある程度仕事を任せるようにすること、それに対してフィードバックをしっかり行うこと、効果的な質問によって考えを深められるようにすることの3つが重要になってくると考えられます。

アルバイトの思考力と自発性を高めるために、ご参考にされてみてはいかがでしょうか。

*1)参考 厚生労働省 「令和元年版 労働経済の分析」172P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

*2)参考 厚生労働省 「令和元年版 労働経済の分析」192P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

*3)参考 厚生労働省 「令和元年版 労働経済の分析」236P
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

*4)参考 文部科学省「平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料」22P
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf

黒田貴晴

コミュニケーションの問題や発達障害を専門的に扱う心理カウンセラー、フリーライター。NLPマスタープラクティショナー。職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決をサポートしています。

 

 

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