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ココに気をつけよう!高校生アルバイトの雇用で知っておくべき注意点

ダイバーシティの推進により、働き方の多様性が身近なところでもみられるようになりました。特に、上も下も労働者の年齢層が広がったことを強く感じます。
なかでも若年層の就労に関して、「学生の本分は学業」であるのは当然ですが、さまざまな体験活動を通じて心身の成長を促すことも、人間として大切なことです。

企業は学生を雇用し、労務提供の対価として賃金を支払います。学生はアルバイトという社会活動から、働くこと・報酬を得ることを学び、将来のビジョンの組み立てに生かすでしょう。

今回は「高校生」にフォーカスし、雇用する上での法律上の注意点を解説します。

目次

法令による「子ども」の定義

労働基準法にみる高校生アルバイトのルール

高校生のアルバイトは社会人の第一歩

法令による「子ども」の定義

「子ども」について、法律や年齢によりいくつかのカテゴリーに分かれます。
たとえば児童福祉法では「児童」という呼称を用いており、その中でも
■乳児・・・満一歳に満たない者
■幼児・・・満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
■少年・・・小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者
など、細かく定義されています(児童福祉法第4条)。

ほかにも「児童に類する者」を法律上明記している法律として、
■少年(少年法)・・・20歳未満の者
■子ども(子ども・子育て支援法)・・・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者
■刑事責任年齢(刑法)・・・満14歳
このように定めています*1。

では、法律により「子ども」とみなされることもある高校生をアルバイトとして雇用するにあたり、年齢による制限はあるのでしょうか?

労働基準法にみる高校生アルバイトのルール

労働に関する法律といえば労働基準法です。同法では「子ども」に関する3つの呼称が登場します。
■児童・・・満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまでの者
■年少者・・・満十八歳に満たない者
■未成年者・・・満二十歳に満たない者

そして就労に関して、同法第56条第1項によると、
「使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。」
と定めており、中学生以下の労働を禁止しています。

しかし例外があり、
「(前略)児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。」
とされています(同条第2項)。
子役などの芸能活動がこの条件に該当します。

次に、高校生(満18歳未満)のアルバイトに従事させてはいけない業務の確認です。
労働基準法第63条は、
「使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。」
としており、地下通路でのトンネル工事や鉱山の採掘を禁止しています。年少者の健全な発育に影響を与えないための配慮とみられます。

また、同法第62条で「危険有害業務の就業制限」が定められており、その詳細として
■重量物を取扱う業務(年少者労働基準規則第7条)
■安全上の有害な業務・・・ボイラー、クレーン・デリック、エレベーター等の運転業務や火薬等の取扱い、足場の組立・解体作業など
■衛生上有害な業務・・・水銀・ヒ素等の取扱いや水銀・鉛等の有害ガスを発散する場所、強烈な騒音を発する場所、異常気圧下などでの業務
■福祉上有害な業務・・・焼却・清掃又はと殺、酒席に侍する業務、刑事施設又は精神科病院、特殊の遊興的接客業における業務など
このように、満18歳に満たない者を就業させてはならない業務が細かく列挙されています(年少者労働基準規則第8条)。

上記の業務に従事する一般従業員の交代要員などで、一時的に高校生(満18歳未満)を就かせることもできませんのでご注意ください。

●高校生との労働契約
高校生を雇用する際、労働契約の締結は必ず「本人」と行わなければなりません。
代理人の労働契約締結は法律上禁止されており、たとえ親であろうが後見人であろうが、本人(未成年者)以外は認められません(労働基準法第58条第1項)。

先日、私が顧問をする企業で開催されたアルバイト説明会でのことです。
本人不在のため母親が代理で訪れ、
「娘の代わりに契約をします」
と申し出がありました。そこで法の趣旨を説明し、ご理解いただいた上で契約を保留としました。

契約に伴い、賃金の支払いについても注意が必要です。
通常、賃金の支払は金融機関等の口座振込が多いと思いますが、口座名義が本人でなければ賃金を支払うことはできません(同法第59条)。なぜなら、年齢等に関係なく賃金は労働者へ直接支払う必要があるからです(同法第24条第1項)。

もしも本人から、
「親の口座へ振込んでほしい」
と依頼があっても、会社としては断らなければなりません。
そして銀行口座を持っていない場合は、現金で直接支払うことになります。

また、高校生(満18歳未満)の入社時には「年齢を証明する書類」の確認も必要です。
同法第57条で、
「使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。」
と定めており、学生証や健康保険証ではなく、戸籍抄本(謄本)や住民票記載事項証明書による年齢証明と保管が義務付けられています。

●高校生の労働時間
実際の就労時に高校生のアルバイトに対して注意すべき点は「労働時間」についてです。
労働基準法第61条では、
「使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。(後略)」
と定めています。

この時間帯は「深夜業」と呼ばれ、18歳以上の労働者に対しては2割5分以上の割増賃金を支払わなければならない時間帯でもあります(同法第37条)。
例外規定はありますが、一般的に「高校生の深夜労働は禁じられている」という認識でのシフト作成をお勧めします。

そしてもう一つ、高校生(満18歳未満)のアルバイトに対して、休日出勤をさせることや法定労働時間を超えて働かせることはできません。同じく、変形労働時間制やフレックスタイム制の適用もありません(同法第60条第1項)。
原則として一日8時間、一週40時間を超える労働は禁止されています。

ただし高校生(満15歳以上で満18歳に満たない者)の特例として、
■一週40時間以内で、一日の労働時間を4時間以内に短縮する場合、他の労働日を10時間まで延長可能
■一週48時間、一日8時間の範囲内で、一か月または一年単位の変形労働時間制の適用が可能
という弾力的な運用が認められています(同法第60条第3項)。

法律上「18歳未満」という年齢で区分されていますが、高校生であれば学業を疎かにはできません。労働時間の管理については、18歳以上であっても高校生には同様の配慮を心がけましょう。

●もし違反すると?
高校生(年少者)を雇用する場合にさまざまな制限がありますが、これらに違反した場合、企業はどのような罰を受けるのでしょう。

労働基準法第118条では、
「第六条、第五十六条、第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
と定めています。
同法第119条でも「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」と示されています。

これらの罰則を知り、
「大した金額ではない」
などと思わないでください。
違反による処罰のみならず、企業の社会的地位を脅かし、従業員からの信頼を損ねる可能性が高く、想像以上の重い代償となるでしょう。

 

高校生のアルバイトは社会人の第一歩

高校生にとってアルバイトは、すなわち社会人としての第一歩です。
「働くこと」から学ぶルールの厳しさや「お金を得ること」のありがたさ、年齢幅のある従業員同士の交流など、学校生活では学ぶこと・触れることのできない貴重な体験の場でもあります。
未来ある高校生の後押しができるよう、企業側はコンプライアンスの維持に努めましょう。

*1:厚生労働省/(参考資料)各種法令による児童等の年齢区分
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000096703_1.pdf

浦辺里香(うらべりか)
特定社会保険労務士、ブラジリアン柔術紫帯。
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞社を経て社労士として開業。
「活字離れのリハビリ」にちょうどいいコラムを、毎日公開中→ https://uraberica.com

 

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