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リファラル採用はうまくいくのか?抱えるリスクと導入時の注意点とは

近年注目されている採用手法に「リファラル採用」があります。

リファラル採用とは、自社の従業員に入社候補となる人を紹介してもらい採用する手法です。米国では広く実施されており、最も多い採用経路のひとつとなります。

採用の質向上やコスト削減など、企業にとってメリットの多いリファラル採用。しかしながら、日本企業での導入では、失敗ケースも多い現実があります。

本記事では、ネガティブな面にも目を向けながら、リファラル採用を解説します。

目次

リファラル採用とは何か?

リファラル採用とはお客様紹介の従業員版

注目されるようになった背景

リファラル採用が抱える3つのリスク

リファラル採用を導入する際の注意点

さいごに

リファラル採用とは何か?

まず、リファラル採用の基礎知識からご紹介しましょう。

リファラル=「紹介・推薦」

リファラル採用の“リファラル(referral)”とは、「紹介・推薦」という意味の英語です。

リファラル採用とは、直訳すれば「紹介採用」のこと。冒頭でも触れたとおり、自社の従業員に採用候補者を紹介してもらう手法です。

縁故採用」とのニュアンスの違い

「リファラル採用って、縁故採用のこと?」
と思われるかもしれません。

確かにリファラル採用は「縁故採用(いわゆるコネクション入社)」の一種として分類されることもあります。

ですが、両者のニュアンスには以下の違いがあることを押さえておきましょう。

●縁故採用のニュアンス

「縁故採用」は、“採用される側(入社する社員)”に利があるニュアンスを持つことがあります。

例えば「有力者である役員の子・甥姪・後輩などの関係者が、通常の採用フローを経ずに入社する」といった具合です。

会社が優秀な人材を獲得するよりも「縁故ある人物に便宜を図る」ことに重きがあれば、「公正な採用選考が行われていない」と批判されるケースもあります。

●リファラル採用のニュアンス

一方、リファラル採用が目的とするのは、「いま会社に所属している従業員たちの人脈をフル活用して、優秀な人材を効率的に獲得すること」です。

「関係者だから便宜を図って採用する」のではなく、「会社が求めている人材を探すルートとして、従業員のコネクションを利用する」というニュアンスがあります。

▼ まとめ:縁故採用とリファラル採用のニュアンスの違い
縁故採用…求職者がコネクションを利用して希望の会社に入るリファラル採用…企業が既存の従業員のコネクションを利用して希望の人材を獲得する

※注:上記はあくまでも言葉が持つニュアンスの違いを述べたものです。縁故採用であっても、優秀な人材獲得を目的に実施されるケースはあります。

リファラル採用とはお客様紹介の従業員版

縁故採用とも異なるリファラル採用を具体的にイメージするためには、「お客様紹介制度」に近いと捉えると良いでしょう。

お客様紹介を活用するマーケティング手法を「リファラルマーケティング」といいます。簡単にいえば、“リファラル採用=お客様紹介制度の従業員版”なのです。

お客様紹介制度は、既存顧客から友人・知人を紹介してもらい、紹介者に商品券やポイントなどをバックするシステムです。

米国のリファラル採用も、従業員紹介制度(Employee Referral Program、ERP)として運用されていることが多く、紹介者には紹介料が支払われます。

 

注目されるようになった背景

「なぜ急にリファラル採用が注目されるようになったのか?」といえば、背景として2つのポイントがあります。

●シリコンバレー企業の導入をきっかけに拡大

1つめはシリコンバレーのIT企業が導入したことです。

Google、Facebookなどの急成長企業は、事業拡大のスピードに合わせ、生産性の高い人材を早く大規模に確保する必要がありました。そこでリファラル採用に着目したのです。

実際に導入企業が増えると、リファラル採用にはさまざまなメリットがあることが見えてきました。

▼ リファラル採用のメリット

・採用の質の向上
会社にどんな人物が必要か知り尽くしている内部の人間(従業員)による紹介なので、マッチング率が高く、採用の質が上がる。

・従業員の定着率の向上
既存の従業員とのつながりを持つ人物を採用するため、入社後の離職率が低く定着率が高い。

・採用コストの削減
採用広告の費用や採用プロセスにかかる時間を削減できる。

現在では、米国企業でメインの採用経路のひとつがリファラル採用となっています。

●国内の採用難とリンク

2つめのポイントは、国内の採用難です。

米国のIT系企業から広がりを見せたリファラル採用ですが、日本国内では少子高齢化や人材の海外流出によって、採用の難航を実感する企業が増えている現状がありました。

以下は、中小企業における業種別の人手不足感を表したグラフです。2009年をピークにマイナスに転じ、2014年以降はすべての業種で人手不足感が深刻化していることがわかります。


引用)中小企業庁「中小企業白書 2018」 P116
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf

このような背景にあって、リファラル採用が一躍脚光を浴びることとなったのです。

しかしながら、実際に導入してみると、予期せぬトラブルを経験する企業も出ています。リファラル採用には利点だけでなく、リスクもあることが露呈しつつあるのです。

 

リファラル採用が抱える3つのリスク

では、リファラル採用が抱えるリスクとは具体的に何でしょうか。大きく3つ、挙げられます。

(1)人間関係への悪影響
(2)人材の多様性の喪失
(3)組織のパワーバランスの変化

(1)人間関係への悪影響

1つめは「人間関係への悪影響」です。具体的には、以下のトラブルが挙げられます。

紹介したが不採用になった場合
「紹介者 ⇔ 友人知人」や「紹介者 ⇔ 不採用を決定した経営陣」の人間関係が悪化する

採用になった後
「紹介者 ⇔ 採用された友人知人」が不仲となり職場での生産性が下がる

離職するとき
紹介者、友人知人のどちらかが離職すると一方のモチベーションが低下する

仕事とプライベートの線引きがはっきりしている米国企業と比較すると、日本企業では、仕事とプライベートの線引きが曖昧なことも一因として挙げられるでしょう。

プライベートのつながりを、リファラル採用によって職場に持ち込んだ結果、人間関係がこじれるケースは少なくありません。

従業員自身に心理的負荷がかかるのはもちろんですが、企業にとっても生産性の低下につながるリスクです。

(2)人材の多様性の喪失

2つめは「人材の多様性の喪失」です。これは現状の企業風土によって、真逆ともなるポイントです。

例えばGoogleは、ダイバーシティ(多様性)を重んじる企業理念を掲げています。

すでに多様性ある既存の従業員を基点として人脈を広げれば、多様化は促進され、失われることはありません。

しかし逆に、既存の従業員に多様性がない場合、リファラル採用によって、ますます多様性が失われるリスクがあります。

「類は友を呼ぶ」という言葉があるとおり、既存の従業員と似た属性を持つ人材が集まりやすくなるためです。


(3)組織のパワーバランスの変化

3つめは「組織のパワーバランスの変化」です。

極論をいえば、リファラル採用を悪用すれば会社を乗っ取ることも不可能ではありません。

会社に対して好ましくない思いを抱いている人物が、リファラル採用によって自分の味方となる従業員を増やして派閥を形成し、社内クーデターを起こすこともできるのです。

これは極端な例とはいえ、特に中小企業では注意しておきたいリスクです。

リファラル採用で数名を採用したことをきっかけに望ましくない派閥ができる、紹介者に忖度する従業員が増える、といったパワーバランスの変化は、決して珍しくありません。

 

リファラル採用を導入する際の注意点

リスクを回避しながらリファラル採用を導入するために、どうすべきでしょうか。注意したい点をお伝えしましょう。

(1)採用フローを簡略化し過ぎない
(2)採用手法は分散する
(3)リファラル採用は急がない

(1)採用フローを簡略化し過ぎない

1つめの注意点は「採用フローを簡略化し過ぎない」ことです。

リファラル採用だからといって、特別に厚遇したり、通常行っている採用選考をスキップしたりすると、後々で人間関係のトラブルを誘発しやすくなります。

リファラル採用で、紹介者の従業員が関わるのは「候補者を紹介するまで」で、その後に契約する・しないは、「候補者と企業との間で判断されるもの」という線引きが重要です。

具体的には、候補者と企業との間の正規の採用フローを、きちんと維持して運用しましょう。

フローを簡略化する場合でも、他の採用手法で設けている採用基準を満たしているか、適正に審査しなければなりません。候補者が冷静に入社判断するための情報提供や時間も必要です。

これらができないほどフローを簡略化するのは、簡略化のし過ぎといえます。

補足として、不採用の判断をした場合の伝え方にも、注意が必要です。紹介者と候補者の人間関係が悪化しないよう、双方に不納得感が残らない理由の伝え方に配慮しましょう。

 

(2)採用手法は分散する

2つめの注意点は「採用手法は分散する」ことです。

ここまでご紹介してきたとおり、リファラル採用にはメリットもデメリットもあり、偏り過ぎればリスクとなります。

「すべてリファラル採用から採用する」といった極端なことはせず、ほかの採用手法と織り交ぜながら、リスクを分散させましょう。

▼ 採用手法のリスク分散の例
リファラル採用:20%
自社サイト:20%
求人サイト:20%
ハローワーク:20%
その他:20%

(3)リファラル採用は急がない

3つめの注意点は「リファラル採用は急がない」ことです。

人間関係や組織のパワーバランスといったセンシティブな問題に発展する可能性があるため、リファラル採用は慎重に、じっくり検討できるスケジュール感で取り組むことが大切です。

リファラル採用を導入したばかりの企業では、「●月末までに●人採用」といった目標を掲げての取り組みはおすすめできません。

最初はデッドラインを設けずに、「本当に合う人が現れたら採用する」くらいのスタンスで構えておくのが良策といえます。

少しずつリファラル採用の成功実績を作りながら、徐々に自社に合う仕組みを積み上げていきましょう。

 

さいごに

リファラル採用だからこその人間関係の難しさは、筆者も体験として実感するところです。例えば、大学時代の友人たちがリファラル採用で一緒に仕事をした結果、絶縁してしまいました。

ですが、あらかじめリスクを知ったうえで導入すれば、リファラル採用は非常に有力な採用手法といえます。特に、スタートアップ・ベンチャー企業にとっては、欠かせない手法となるはずです。

ぜひ注意点を踏まえながら、自社に合うやり方を探っていただければと思います。

 

 


【著者プロフィール】

三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

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