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フリーターに偏見をもっていたわたしが、フリーターになった話

告白する。
わたしは昔、「フリーターは就職できなかった人がなるもの」だと思っていた。

「大学に行って就職するのが当たり前」という環境だったからだろうか。一昔前、「就職できずに非正規雇用で働く若者たち」というニュースをよく見たからだろうか。

わたしのなかのそのイメージが変わったのは、実際フリーターとして働いている人たちと仲良くなり、フリーターになった理由を聞いてからだ。

そこでやっと、「フリーターだって働き方の選択肢のひとつなんだ」と気づくわけである。

そしてその後わたし自身も、フリーターの道を歩むこととなった。

アイドルの追っかけを続けるためにフリーターになった先輩

高校2年生の冬、わたしは近所の焼き肉チェーン店で、人生初めてのアルバイトをはじめた。理由は、「部活の自主練に出たくなかったから」。

部活という閉鎖空間で人間関係がこじれてしまい、もう放課後が嫌で嫌でしょうがなくて……。バイトのシフトを入れておけば、だれにも文句を言われずに自主練に出ないで済むからね。

ある日、高校生のわたしはほかの高校生2人といっしょに、22時にバイトを終えて休憩室でおしゃべりしていた。2人は高校3年生だったので、自然と進路の話になる。

「就職するー?」
「うーん……とくにやりたいこともないんだよねぇ」
「わたし美容系の専門行ってるけど、実習で向いてないって気づいちゃってさぁ(笑) アイドルの追っかけで全国飛び回りたいし、とりあえずフリーターでいいかな」
「まぁフリーターは気楽だよねー。わたしもやりたいこと見つかるまではフリーターで生活費稼ごうかなって感じ」

この会話を聞いていたわたしは、心底びっくりした。

当時のわたしは、「フリーターは就職できなかった人がしかたなくなるもの」だと思い込んでいたから。

でも目の前の2人は、自分の意思でフリーターになるという。
そのほうが自分に合っているから、自分がそうしたいから、と。

なるほど、どうやらわたしは「フリーター」というものを誤解していたらしい。
望んでその道を選ぶ人だっているのだ。

正社員で働くよりもやりたいことがあるバンドマンたち

大学生になったわたしはベースにハマりこみ、バンドを組むようになった。
授業の合間やライブ前などでスタジオに入り浸っていると、自然と顔見知りも増えてくる。

プロのミュージシャンを目指している人もいれば、自作CDをライブハウスで売るプロアマのような人もいて、今までわたしがかかわったことがないタイプの人たちだ。

そして、スタジオにいる人たちはやたらとフリーターが多かった。

彼・彼女たちが口々に言うのは、「正社員として働くのは無理」だということ。そりゃそうだよね、寝る間を惜しんでずーっと音楽をやってるんだもの。

とくにバンドとなれば、メンバーで時間を合わせて練習しなきゃいけないし、ライブをすれば撤収も含め深夜まで食い込むこともめずらしくない。

とにかく「音楽最優先」。
その生活を望むのであれば、たしかに正社員としてフルタイムで決まった時間働くのは無理だろう。

残業してライブに遅れる、なんてなったら、バンドメンバーにも対バン相手にもライブハウスにも、みんなに大迷惑かけることになっちゃうしね。

「大人になったら就職して仕事を優先」がふつうだと思っていたわたしは、ここでも自分の勘違いに気づく。

大人になったからといって、だれしもが「仕事が一番」なわけではないのだ。
夢を追いかける人もいれば、趣味をメインにする人だっている。別に、ふしぎなことじゃない。

夢のために、自分もフリーターになることを決意

その後もわたしは、いろんな「フリーター」に出会った。

たとえば、新卒で入った企業が超絶ブラックで休職からの退職、メンタルが落ち着くまでフリーターとして働き社会復帰を目指す人。

たとえば、ダイビングが趣味で夏を丸々沖縄で過ごすため、それ以外の期間はバイト掛け持ちでひたすら働く人。

たとえば、大学受験がうまくいかず浪人するも、勉強ばかりだと気が滅入るから気分転換にアルバイトをする人。

焼肉屋でフリーターになったアルバイト仲間の2人と同じように、自分らしい生き方をするためにフリーターを選ぶ人だって、たくさんいるのだ。

そしてわたし自身、ドイツ移住に向けて、大学卒業後の半年間はフリーターとして働くことを選んだ。

移住にはお金が必要だし、正社員じゃ忙しくて移住準備や語学の勉強ができるかわからないし……そこで、フリーターがベストだという結論に至ったのだ。

とはいえそこには、多少の葛藤もあった。
自分自身は納得していても、「フリーター」を見る世間の目は冷たいのでは……と心のどこかで思っていたから。

でもいざフリーターになってしまえば、そんなものはどうでもいいのだと気がついた。

目の前の仕事をちゃんとやっていればどんな雇用形態だろうと文句を言われる筋合いはないし、たとえ何か言う人がいても、その人はわたしの人生に責任を取ってくれるわけではないからね。

自分がそれでいいと思ったのなら、それでいい。それだけの話。

結果的に、フリーターとしてフルタイムで働きつつしっかりと移住準備ができたので、中途半端に就職して半年で辞めるよりもよかったと思っている。

ビザ申請に行く日は休めたし、残業もないから家に帰ってからも十分ドイツ語の勉強ができたしね。

正社員では仕事一辺倒でそこまで準備に時間がとれなかっただろうから、正しい選択だったと思う。

その選択肢に気づかせてくれた先輩フリーターたちに、心から感謝だ。

 

働き方が多様化する現在、フリーターだってひとつの選択肢

2016年のデータではあるが、フリーターになった理由で1番多いのは「やむを得ず型(正社員になれない、または家庭事情など)」だが、その次に多いのは「ステップアップ型(つきたい仕事のための勉強や準備、修業期間として)」となっている。*1

そのうえ、フリーターとして働いている人のなかで今後正社員になることを希望しているのは、47.1%。意外にも半分以下しかいない。

「正社員になれなくてやむを得ず」フリーターになる人がいる一方で、自ら望み、そして今後もフリーターとして働くことを希望する人も多いのだ。

また、現在フリーターで正社員経験がある人の正社員経験期間を見ると、1年から3年が41.4%、半年以下が20.2%となっている。正社員の働き方に合わずフリーターに……という人もかなりいるらしい。*2

フリーターは多種多様な働き方のひとつであり、積極的にその選択肢を選ぶ人たちだっている。なんでわたしは、そんなこともわかっていなかったんだろう。

とはいえ、だからといって「フリーター最高!」というつもりはない。

フリーターは収入面での不安が大きかったり、福利厚生など正社員と待遇がちがったり、ローンが組みづらかったり……と、デメリットもあるから。

しかしフリーターだろうが正社員だろうが、フリーランスだろうが経営者だろうが、どういう働き方でもメリット・デメリットがあるのは当然だ。

大事なのは、そういった良し悪しを冷静に比較し、どんな働き方が自分にとってベストなのかをしっかりと見極めること。そして、まわりの声に惑わされず、自分らしい働き方を見つけること。

もちろん、ほかの人の意見を聞くことも、時には必要だけどね。

自分がより幸せになれる道に進むため、選択肢は多いほうがいい。

だから選択肢のひとつとして、あなたの人生設計図の端っこに、「フリーター」という道もちょこっと書き加えておくといいかもしれない。

 

*1 労働政策研究・研修機構「フリーター経験者の高学歴化と正社員化減少ー「第4回 若者のワークスタイル調査」ー」p4
https://www.jil.go.jp/press/documents/20171020.pdf

*2 マイナビ「フリーターの意識・就労実態調査(2020年)」p30,p61
https://dugf25wejf35p.cloudfront.net/wp-content/uploads/2020/08/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8-%E5%9C%A7%E7%B8%AE%E6%B8%88%E3%81%BF.pdf

 

 


雨宮紫苑

ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。twitter→@amamiya9901

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