「アルバイトはいい社会経験になる! 就活でもアピールできるぞ!」
学生のころ、そんな言葉を聞くたび「バイトで社会経験っていってもねぇ」と苦笑していた。
アルバイトと正社員では求められるものが大きくちがうのに、それで社会を知った気になっていいものか……と懐疑的だったのだ。
しかしアラサーになり多少社会に荒波に揉まれたいま思い返せば、たしかに学生時代のアルバイトはいい経験だったと思う。
「自分ができないことを知る」という意味で。
目次
就活に活かすためにバイトしている学生は15%のみ
大学生がアルバイトする理由を調べてみると、「貯金をするため」が59.8%とトップで、「趣味のため」が48.8%、「自分の生活費のため」が47.4%と続く。「就職活動に活かすため」と答えているのは、15.6%しかいない。
「将来のキャリアのため」にアルバイトをしている学生に至っては、たったの12.1%である。
アルバイト就業中の学生の79%が「就職先候補にしたいアルバイト先は無い」と答えているように、「アルバイトはあくまでお金のため」であり「就活やキャリア形成はまた別」と考えている学生が多いようだ。*1
まぁ、気持ちはわかる。
大学に通っていたころのわたしも、「アルバイトで多少社会経験ができたとしても、実際に就職したらそんな経験はたいして役に立たないだろう」と思いながらアルバイトしていたから。
しかし、いまの考えはちがう。
アルバイト経験は、想像以上にいまのわたしの糧になっている。「アルバイトのおかげで仕事選びに失敗せずに済んだ」と言えるくらいには。
だってアルバイトは、将来の職選びに必要な「自分の不適正を自覚する」ために、とても有益な働き方だから。
即時判断や臨機応変が苦手なことに気づいたきっかけ
わたしは学生のころ、いろいろな場所でアルバイトをした。
そのおかげで「自分はこれができない」「これがめちゃくちゃ苦手」という弱みが明確になり、キャリアを考えるうえですごく役に立った。
たとえば、一番長く働いていた、居酒屋をはじめとした飲食店。
合計5軒、4年くらいやっただろうか。
わたしは愛想だけはいいので接客は得意で、すぐお客様と仲良くなれる。
おしゃべりしながら新メニューを勧めたり、路上で客引きしたりはお手の物、なんなら「次のシフトが入ってる日にまた来るよ」と言ってもらうことも多々あった。
がしかし、いかんせんそれ以外がまったくダメ。
残念なことに、仕事自体はまったくできなかった。
呼ばれたら注文を取りに行く、料理を運ぶ……なんて作業はできるのだが、厨房やドリンカー(飲み物をつくる場所)ではとにかく役立たず。
ダダダダダ~っと注文表が並ぶと頭が真っ白になり、「これとこれを同時に作る」「こっちの注文のほうが早かったからこっちが優先」という判断ができない。
「こっち先に作って」と言われたものを作ると、さっきなにをしていたのかが頭から飛んでしまう。料理しながらキッチンを整理することもできず、作業スペースがどんどんぐちゃぐちゃになる。
膨大な注文を整理して効率的にさばいていく作業が絶望的に苦手で、あまりにも料理が上がらず、見かねた先輩が交代を申し出るレベル。
実は(いま思えば失笑ものだが)高校生になってアルバイトするまで、自分のことは「そこそこ仕事ができる人」だと思っていた。
とくに根拠はないけど、「しっかりしてる」って言われるし、学級委員とかやるタイプだったし……。
まさか、仕事において重要な「優先順位を決めて臨機応変に対応する」という能力が、自分にはカケラも備わっていないとは思わなかったのだ。
その時点で、「自分にバリキャリは無理だ」と悟ってしまった。
いや本当、そう思わざるを得ないほど仕事ができなかったんだよね……。
アルバイトをするたびに「自分の適性」を学んでいく
アルバイトで学んだ「自分の適性」は、それだけではない。
大学生のときわたしは、ホテリエにあこがれていた。そこで将来に向けた社会経験として、結婚式場でアルバイトをはじめたわけだが……
わたしはホテリエには向いていない、という結論が出た。残念なことに。
まず、ヒールの靴でずっと立っていることが苦痛で、耐えられない。
8時間勤務のあとは帰宅後玄関で倒れこみ、毎回お父さんに抱えてもらうくらいへとへとだった。
そのうえホテルとなれば、夜勤がある可能性も高い。そんな体力勝負の仕事、わたしにできるのだろうか。結婚式場で朝6時出勤ですらユウウツになる根性なしなのに?
居酒屋では「フレンドリー」として好評だった接客も、結婚式場では「フランクすぎる」とたびたび注意された。もっとお客様との距離を縮めたいし、笑ってもらいたいと思うけど、それはダメだったのだ。
結婚式場バイトを通じて、「ホテリエになりたいかどうか」ではなく、「ホテリエとしてやっていけるか」を冷静に考えた結果、ホテリエの道を断念。正しい判断だったと思う。
さてさてホテリエをあきらめたわたしは、インテリアの道に進もうと、家具屋の販売員としてアルバイトをはじめた。
お客様といろんな家具を見て回って、過ごしやすい生活空間をともに作り上げていく作業はとても楽しく、「これは向いてるかも!」と確信。
……しかし販売員として致命的なことに、わたしはノルマというものにどうしても馴染めなかった。
「うまい」人は、食器棚にさりげなくオプションをつけたり、便利グッズとして小物を追加したりして、売り上げを増やしていく。原価率が低く、より自分の売り上げになる家具を勧める人もいた。
販売員としては、それが正しいのだろう。
でもわたしはそういった数字に熱くなれず、「お客様が満足してくれればいいじゃん」と思ってしまうのだ。
どうやらわたしは、数字を追う仕事が向いていないらしい。
(「ではインテリアデザイナーに」とも考えたが、空間認識能力が低く絵がヘタすぎてどうにもならなかったのは余談である)
さまざまな場所でアルバイトをしたおかげで、社会に出る前に自分の適性を知ることができて、本当によかった。それがなければ、うっかり「誤った道」に進んでいたかもしれない。
得意を伸ばす前に、自分の苦手を自覚することが大切
アルバイト経験や就活の自己分析などで重視されるのは、「どの仕事が向いているか」だ。
お仕事チャートのようなものでも、Yes/Noを選んでいくと、最終的に「あなたに向いている職業」が提示される。
だからみんな、「自分はどの仕事に向いているのか」「どこで働けば活躍できるのか」を見定めるのに躍起になるわけで。
でも実は、それよりも大事なのは、「自分にできないこと」「自分に向いていないこと」を知ることじゃないだろうか。
たとえば、英語が得意なバイリンガルが英語を使わない仕事に就いたとしても、困りはしない。でも英語ができない人が英語を使う仕事に就いたら、「無能」のレッテルを貼られてしまうだろう。
接客が得意な人が裏方に回ってもソツなくこなせるが、接客が苦手な人が表に出たら、ストレスでどうにかなってしまうかもしれない。
そう考えると、「向いている仕事」を把握するより先に、まず「向いていない仕事」を把握するほうが大事だと思うのだ。
わたしの居酒屋バイトのときのように、「接客」というプラスポイントがあっても、それを上回るマイナスポイントがあれば、総合的に見て「使えない」と判断されるしね。
仕事をするにあたって、得意を伸ばすより、苦手を避けるほうが優先度が高いのだ。
アルバイトは自分の適性判断に最適な手段
「できないことを自覚しろ」という言葉は、ある意味優しくないというか、消極的というか、なんだかネガティブに聞こえてしまうかもしれない。
でも苦手なこと、できないことは、めちゃくちゃ時間を使って神経をすり減らして努力しても、せいぜい到達するのは「人並」。それならそこに労力をかけるのではなく、得意なことを楽しく伸ばしていったほうがいい。
とはいえその「得意」に時間と労力を割くためには、そもそも「苦手」をやらなくていい環境に身を置く必要があるわけで。
だからまず、「自分ができないこと・向いていないこと」を自覚する必要があるんじゃないか、と思うわけだ。
ではその「苦手」を把握するためにはなにをすればいいのか?
それはかんたんで、実際にいろんな仕事をやってみること。実際に働いて、自分ができるかどうかを見極めればいい。
しかし、正社員でいろいろな業種を渡り歩くのは、現実的にむずかしい。
同業種ならともかく、いろんな分野で短期間で転職を繰り返すのは、履歴書映えしないからね。
だからこそ、アルバイトで「社会経験」することが大事なのだ。
もちろん、バイトだからすぐ辞めてもいい、というわけではない。
とはいえ、少なくとも「ちょっとやってみる」に対して、正社員よりハードルが低いのは事実。職歴を求められないこともほとんどだし。
だから、「アルバイト」という立場をうまく使って、いままでやったことのない仕事ができる場所に飛び込むことをおすすめしたい。
きっと、自分の適性を知る、いいきっかけになるから。
*1 マイナビ「大学生のアルバイト実態調査(2020年)」p44,p59
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雨宮紫苑
ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。twitter→@amamiya9901
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