障害者雇用促進法では、一定数以上の従業員を雇用する事業主に対して、障がい者の雇用を義務付けています。
法定雇用率を満たしているかどうかで、金銭的なメリットやペナルティが発生するので、助成金などを活用して、計画的に雇い入れましょう。
今回は、障害者雇用促進法に基づく障がい者雇用のルールや、事業主が利用できる雇用関連の助成金、雇用に当たって事業主が留意すべきポイントなどを紹介します。
目次
障がい者雇用に関する法律上のルール
障がい者雇用に関するルールは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」において定められています。
●総従業員の2.3%以上の障がい者を雇用する義務がある
事業主は、常時雇用する労働者の総数に対して、2.3%以上の障がい者を雇用することが義務付けられています(障害者雇用促進法43条1項、同法施行令9条)。
雇用が義務付けられる障がい者の数
=常時雇用する労働者の総数×2.3%(端数切捨て)
端数は切り捨てとなりますので、43.5人以上の従業員を雇用している場合は、1人以上の障がい者を雇用することが必要です。
なお「0.5人」が発生するのは、後述するように、短時間労働者を「0.5人」とカウントすることによります。
●重度障害者と短時間労働者(パート・アルバイト)のカウント方法
重度障害者と短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)については、障害者雇用率の計算上、人数のカウント方法が以下のとおり定められています。
①重度身体障害者・重度知的障害者のカウント方法
重度身体障害者・重度知的障害者を雇用している場合、雇用する障がい者の数をカウントするに当たって、その労働者は「2人」と数えられます(障害者雇用促進法43条4項、同法施行令10条)。②短時間労働者のカウント方法
短時間労働者を雇用している場合、総従業員数をカウントするに当たって、その労働者は「0.5人」と数えられます(障害者雇用促進法43条8項、同法施行規則6条)。
また、雇用する短時間労働者が障がい者である場合、雇用する障がい者の数をカウントするに当たっても、その労働者は「0.5人」と数えられます(障害者雇用促進法43条3項、同法施行規則6条)。③短時間労働者である重度身体障害者・重度知的障害者のカウント方法
短時間労働者である重度身体障害者・重度知的障害者を雇用している場合、総従業員数をカウントするに当たって、その労働者は「0.5人」と数えられます(障害者雇用促進法43条8項、同法施行規則6条)。
その一方で、雇用する障がい者の数をカウントするに当たっては、その労働者は「1人」と数えられます(障害者雇用促進法43条5項、同法施行規則6条の2)。
<計算例>
・所定労働時間が20時間以上の従業員数:200人(そのうち、短時間労働者は50人)
・雇用する障がい者は3人(そのうち、重度身体障害者が1人、短時間労働者である重度知的障害者が1人)→障害者雇用率の計算上、総従業員数は175人(短時間労働者は1人当たり0.5人とカウント)。
したがって、雇用が義務付けられる障がい者の人数は4人(∵175×2.3%=4.025)。雇用する障がい者は4人(重度身体障害者を2人、短時間労働者である重度知的障害者を1人とカウント)。
したがって、障害者雇用率を満たしている。
●障がい者雇用の目標を達成した場合のメリット・達成できない場合のデメリット
障がい者雇用について、障害者雇用率などの目標を達成した場合、以下の金銭的メリットが得られます。
①障害者雇用調整金
常時雇用する労働者数が100人を超え、かつ障害者雇用率を超えて障がい者を雇用している場合は、超過人数1人当たり月額2万7000円が支給されます。②在宅就業障害者特例調整金
常時雇用する労働者数が100人を超え、かつ在宅就業障害者やその支援団体に仕事を発注し、業務の対価を支払った場合には、以下の金額が支給されます。
在宅就業障害者特例調整金=2万1000×支払総額÷35万(円)
(例)在宅就業障害者に105万円を支払った場合、6万3000円が支給される③報奨金
常時雇用する労働者数が100人以下で、各月の雇用障がい者数が一定数※を超えている場合には、超過人数1人当たり月額2万1000円が支給されます。
※当該月の常時雇用労働者数の4%または72人のいずれか多い数④在宅就業特例報奨金
常時雇用する労働者数が100人以下で、かつ在宅就業障害者やその支援団体に仕事を発注し、業務の対価を支払った場合には、以下の金額が支給されます。
在宅就業障害者特例報奨金=1万7000×支払総額÷35万(円)
(例)在宅就業障害者に105万円を支払った場合、5万1000円が支給される⑤特例給付金
所定労働時間が10時間以上20時間未満の障がい者数に応じて、常時雇用する労働者数が100人超の事業主には1人当たり7000円、常時雇用する労働者数が100人以下の事業主には1人当たり5000円が支給されます。
アルバイトとして障がい者を雇用する場合に、ぜひとも受給したい給付金です。
これに対して、常時雇用する労働者数が100人を超え、かつ障害者雇用率を下回る人数の障がい者しか雇用していない事業主は、不足人数1名当たり5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければなりません。
障がい者雇用に関する目標を達成できるかどうかは、上記のとおり、金銭的なメリット・デメリットに直結します。
そのため、できる限り目標を達成できるように、計画立てて障がい者雇用を推進していきましょう。
障がい者雇用に関して利用可能な助成金
障害者雇用促進法に基づくルール作りに加えて、国はさまざまな助成金を用意し、事業主による障がい者雇用の取り組みを促進しています。
以下の厚生労働省のページで、障がい者雇用に関して利用できる助成金がまとめられていますので、ぜひ積極的にご活用ください。
助成金についてわからない点があれば、都道府県労働局とハローワークが質問を受け付けています。
参考:
障害者を雇い入れた場合などの助成|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html
参考:
事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
参考:
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html
参考:全国ハローワークの所在案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html
障がい者雇用を進めるうえで、事業主が注意すべきポイント
障がい者を雇用する際には、事業主は、その能力を適材適所で活用することに努めるべきです。
障がい者には何らかのハンディキャップがある一方で、それを別の能力で補って生活しているため、一部の能力が健常者よりも優れているケースがあります。
その能力の優れた部分をうまく活用できれば、自社の業績アップへと繋げることができるでしょう。
それと同時に、障がい者の苦手分野について、事業主が積極的に理解・配慮することも大切です。
特に、障がい者が職場に馴染めるように、配属先の環境を整えることが重要になります。
必要に応じて、従業員に対する研修を行ったり、フォロー役の従業員をアサインしたりして、障がい者が働きやすい環境づくりに取り組みましょう。
まとめ
障がい者を積極的に雇用することにより、国のルールに基づいて、調整金などの金銭的なメリットを受けることができます。
アルバイトとして障がい者を雇用する場合にも、受給可能な給付金が存在するので、漏れなくチェックしておきましょう。
さらに、障がい者の長所をうまく活用することで、健常者と同等以上に、自社の業績に貢献してもらえる可能性があります。
健常者・障がい者という括りに縛られることなく、人材を適材適所で活用することで、売上・利益の向上に繋げてください。
【著者プロフィール】
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw
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