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コロナ危機下で外国人労働者たちは何に困り、どのような支援を必要としているのか そしてアフターコロナの世界では?

新型コロナウイルスの脅威があっという間に世界中に拡がり、日本国内でも多くの人々が困難な状況に置かれています。

こうした状況下、外国人労働者たちは、今、何に困り、どのような支援を必要としているのでしょうか。
それを知り支援することができれば、外国人アルバイトの確保や定着に役立ち、よりよい職場づくりにつながるはずです。

また、この機会に、アフターコロナを見据え、外国人労働者と今後どのように関わっていったらいいのかについても考えてみましょう。

目次

情報弱者をサポートする

働き方格差に目を向ける

生活者としての彼らを理解し、寄り添う

リーマンショック時の影響を繰り返さないために

アフターコロナの世界では

情報弱者をサポートする

筆者は、以前大学教授をしており、その時の元教え子にきいてみました。

「何か困っていることはない?」
「そうですね……、特にありません。日本人と同じような支援が受けられるので、ありがたいと思っています」
そう答えたのは、元留学生で大手企業に勤めるDさん。
彼女は母語の他に日本語と英語が堪能です。

確かに、現在、外国人や外国人労働者も日本人と同様にさまざまな支援が受けられるようになっています *1。

「あっ、そういえば、私は日本語が読めるからいいんですけど、日本語が読めない人は、そういう支援が受けられることがすぐにはわからなかったみたいです。でも、そのうち、誰かがSNSに母語で投稿して、その説明を読んで知ったという人もいますね」

これは、「情報弱者」、つまり、情報を得たり、理解したり、利用したりするのが困難な人々の問題です。
外国人は日本語力が不十分なため、一般的に情報弱者だと位置づけられています。

この問題がクローズアップされたのは、1995年の阪神淡路大震災がきっかけでした。
この地震で犠牲になった人の多くは、高齢者、低所得者、外国人などいわゆる社会的弱者になりうると呼ばれる人々で、外国人の死亡率は日本人と比べて高かったことが報告されています *2。

大震災の際、犠牲になった外国人の多くは、日本語、あるいは英語による情報が理解できず、例えば、「避難」ということばの意味もわからずに取り残された人々だったといわれています。

こうした痛ましい教訓から、現在では国も多言語(14言語)や外国人にも理解しやすい「やさしい日
本語」を使って情報提供を行うことが多くなりました。
新型コロナウイルスに関する支援情報の中にもそうしたものがみられます *3、*4。

ただ、すべての情報提供がそうだというわけではありませんし、どうしても日本人向けの情報提供とはややタイムラグがあり、その間の時間が長いと、せっかく受けられる支援を受けそびれてしまうおそれもあります。

また、日本語が不自由な場合には、支援を受けるための申請でも苦労します。
例えば、先日、外国人の友だちがある給付金を受給するために、申請用紙記入のサポートをしたのですが、彼は「給付を希望しない」のチェックボックスにうっかりチェックをいれそうになっていました。

このように、情報弱者や申請手続きが困難な外国人がいる職場では、一緒に働く日本人のサポートが大きな力になるでしょう。

働き方格差に目を向ける

Dさんの話は続きます。
「今はほぼテレワークで、問題なく仕事をしています。でも、仕事で下請け工場に行くことがあるんですが、そこでの仕事はテレワークができないんで、危険だとわかっていても仕事をしてる外国人が多いですね。でも、それは日本人も同じですよね?」

これは、外国人が就労している業種や職種の問題です。
以下の図1は産業別の外国人労働者の割合を表しています。

 


図1 産業別外国人労働者数
出典(図1-図3):*5 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在)
図1・図3:p.8、図2:p.10
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000590310.pdf

図1をみると、外国人労働者のうち、製造業、サービス業、宿泊業、飲食サービス業、建設業、医療、福祉など、テレワークが難しい仕事に就いている人の割合が高いことがわかります。

もうひとつ、グラフをみてみましょう。

図2 企業規模別外国人労働者の割合
出典:*5 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在)
図2:p.10
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000590310.pdf

図2からわかるのは、外国人労働者の多くが中小企業で働いていることです。
また、厚生労働省が行った調査では、いわゆる高度人材(「専門的・技術的分野に就労する外国人」)にかぎっても、外国人就業者に占める
非正規従業員の割合は69.2%と、日本人の2倍以上であることがわかっています *6。

現在、推奨されているテレワークによって、働き方格差が広がったといわれています。
その格差の要因は2つ―ひとつは企業規模、そしてもうひとつは雇用形態です。
外国人労働者はこの両方に該当する人が多いということになります。

現在、「労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならないこと」が定められています *7。
しかし、業種や職種、そして労働形態によって、外国人労働者は日本人との労働格差が生じやすい状況にあるのです。

これは、コロナ危機によって顕在化した問題のひとつです。
外国人にかぎった問題ではありませんが、同じ職場の中で、職務や雇用形態、属性などによって労働格差が生じていないか常に点検し、マネジメントすることが大切です。

 

生活者としての彼らを理解し、寄り添う

非常事態は弱い立場にある人をさらに追いこみます。

困窮した外国人の支援をしているYさんに話をききました。
彼は、外国人支援を目的とするNPOから派遣され、困窮した外国人家庭を訪れて子どもの学習支援をしています。
例えば、ひとり親世帯の子どもや病気や障がい害を抱えている親をもつ子どもなどが対象です。

「今、一番困っているのは、感染リスクがあるので今までのように家庭訪問ができないことなんです。心配で、時々スマホで連絡するんですが、つながらないことも多くて」
そのNPOでは、オンラインの学習支援も視野に入れたのですが、そうした貧困家庭にはパソコンがないため断念したそうです。

子どもの教育は、日本人家庭でも大きな問題になっていますが、外国人家庭の場合にはより深刻です。
外国人の家庭では、貧困家庭に限らず、学校から出された宿題を親がみてやることが難しいからです。
言葉の問題だけでなく、自身が受けた教育の学習内容も日本とは違います。
今回、自粛生活での家庭学習によって日本人間でも学習格差が生じたのではないかといわれていますが、日本人と外国人の間でも格差が拡がる可能性が大きいといえます。

新型コロナの影響で、こうした支援活動が休止に追い込まれるケースが増えています。
ボランティア教室も会場となる公共施設が借りられず、学校が休校の間は学校での支援も休止せざるを得ません。

子どもへの支援を通じて、その親が抱えている問題に気づくチャンスも失われています。
地域コミュニティーとのつながりが弱い外国人も多くいます。
最も支援が必要なときに支援を必要としている人にアクセスできないというジレンマ。
こうした深刻な事態が訪れているのです。

外国人労働者は私たち日本人と同じ生活者です。
日本人と同じように、家庭を営み、子どもを育て、働いています。
彼らを労働者としてだけ捉えるのでなく、彼らが生活者としてどのような問題を抱えているのかにも目を向け、まるごとの人間として理解し、寄り添う―そんな姿勢が必要ではないでしょうか。
それがきっと彼らとの信頼関係の基盤になるはずです。

 

リーマンショック時の影響を繰り返さないために

「そういえば、知り合いが早速、派遣切りに遭いました。なんかリーマンショックのときのことを思い出しませんか」
Yさんは静かにそう言いました。

彼と筆者とはリーマンショックをはさんで2年半、ある外国人集住都市で外国人支援に関わるプロジェクトにともに取り組んだ元同僚です。

リーマンショックの直後、製造業が盛んなその都市では、町の様子が一変しました。
製造業の労働力として産業を下支えしていた外国人労働者は真っ先に派遣切りや雇止めに遭い、支援を求めて行政のワンストップ窓口に長蛇の列を作っていました。
その多くは失業と同時に、派遣会社が提供していた住居も失っていました。

筆者も彼らの就労支援に関わりましたが、日本語教育を受けてこなかった彼らはひらがなを書くことさえままならず、いつになったら漢字で住所が書けるようになるのかと気が遠くなる思いでした。

今回、その再来をおそれるのには理由があります。

図3 労働者派遣、請負業を行っている事業所で就労している外国人労働者数
出典:*5 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在)
図3:p.8
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000590310.pdf

この図をみると、外国人派遣社員は、製造業に就いている人が最も多く、サービス業がそれに続いています。
現在、コロナショックの影響が強いといわれている業種です。

リーマンショック当時は、失業し新たな職を得ることもできず、生活に困窮して帰国を余儀なくされた外国人労働者が多くいました。


図4 在留外国人の推移
出典(図4・図5):*8 国土交通省(2019)「国土に係る状況変化③について (増加する外国人との共生、ライフスタイルの多様化等) 図4:p10.、図5:p.12
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001319649.pdf

図4をみると、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災後は、その影響を受けて在留外国人が減少している状況がみてとれます。
しかし、現在、感染防止のために多くの国が入国制限をしています。
したがって、母国に帰ろうにも帰れないというさらに厳しい問題を抱えている外国人もいるのです。

もちろん、日本人の中にも、仕事を失い、あるいは休業を余儀なくされ、あるいは経営破綻に陥るなど、苦しんでいる人々がたくさんいます。
だからこそ、外国人労働者の苦境にも共感し、痛みを分かち合い、お互いの生活が成り立つような方策をともに考えて、支え合っていくという姿勢が大切ではないでしょうか。

 

アフターコロナの世界では

Yさんは最後にこんなことを言いました。
「日本人の人手が足りない現場で外国人は精一杯、働いています。僕らが普通に使ってるスマホだって、彼らがいなければ作れないんですよ。僕は彼らに感謝しています。だから彼らをサポートするのは当然だと思っているんです」

少子高齢化の中、貴重な労働力の一端を担ってきた外国人労働者。
政府はそうした外国人労働者の受入れを積極的に進める方向に舵をとり、2019年には高度外国人材確保のために新しい在留資格を創設しました。
また、それに伴い、外国人労働者を受け入れるためのさまざまな施策や法律が整えられつつあります。

そんなさなかに生じた非常事態ですが、今回のコロナ禍もいつかは収束します。
長期的にみれば、少子高齢化が進行し、このままでは人手不足で経済が回らなくなるのは目に見えています。

2065年には外国に由来する人口が総人口の12.2%を占めるという推計もあります(以下の図5)。


図5 外国に由来する人口の推移

こうしたさまざまな状況は、外国人との共生、協働をさらに推進していく道筋を指し示しています。

総務省は多文化共生を「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、 地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義しています *9:p.5。

コロナ危機は私たちの社会にさまざまなパラダイムシフトをもたらしつつあるといわれています。
日本人労働者と外国人労働者が理解し合い、支え合って、ともに豊かな社会を生きていく―アフターコロナはそんな世界への扉を開く、絶好のチャンスかもしれません。

エビデンス
【以下、すべて2020年5月17日に閲覧】

*1
法務省(2020)外国人生活支援ポータルサイト(医療)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00052.html
*2
内閣府「防災情報のページ:阪神・淡路大震災教訓情報資料集【02】人的被害;教訓情報資料集」
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-2.html
*3
厚生労働省(2020)「外国人の皆さんへ(新型コロナウイルス感染症に関する情報)」(14言語対応)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page11_00001.html
*4
厚生労働省(2020)「会社で働いている外国人のみなさま(やさしい日本語版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page11_00002.htm
*5
厚生労働省(2020)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000590310.pdf
*6
厚生労働省「専門的・技術的分野で活躍する外国人就業実態調査:第5章調査結果から得られた示唆」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin03/05.html
*7
厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(抄)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other16/dl/index04_0002.pdf
*8
国土交通省(2019)「国土に係る状況変化③について (増加する外国人との共生、ライフスタイルの多様化等)」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001319649.pdf
*9
総務省(2006)「多文化共生の推進に関する研究会 報告書 ~地域における多文化共生の推進に向けて~ 」
https://www.soumu.go.jp/kokusai/pdf/sonota_b5.pdf

 

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。

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