労働者を雇い入れる際には、これまでは労働条件に関して書面で交付する必要がありました。つまり、紙媒体に印刷したものを、すべての労働者に渡す必要があったということです。これが法改正にともない、紙以外の方法での明示も認められるようになりました。今回は法改正により変更になったポイントと、そもそもの労働条件の明示について解説します。
目次
法に定められた労働条件の明示とは
労働基準法では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と決められています。
労働条件として明示されなければいけない内容は以下の通りです。
(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
(3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
(4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
(7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(9)安全及び衛生に関する事項
(10)職業訓練に関する事項
(11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(12)表彰及び制裁に関する事項
(13)休職に関する事項
FAXや電子メール、SNSでの明示が可能に
これまでは、労働契約の際、雇用者は労働条件を明示するため、書面にして労働者に交付する必要がありました。しかし、今回の法改正により、平成31年4月から、書面以外での方法についても明示したと認められることになりました。
今回新たに認められた交付方法は以下の通りです。
(1)FAX
(2)メール(Yahoo!メールやGmailなどのWebメールを含む)
(3)SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセージ機能 例)LINEやメッセンジャーなど
※ SMS(ショートメッセージサービス)に関しては文字数制限があること・ファイルの添付ができないことから望ましくないとされています。
ただし、あくまで印刷して利用することを前提としており、メールやメッセージを利用して送る場合も、PDFファイルなどで添付ファイルとして送ることが推奨されています。
改正された労働条件の明示について、注意が必要なポイント
前項では改正された電子媒体による明示方法について紹介しましたが、これらの方法で明示する場合、注意しておかなければいけない点があります。
今回新たに認められたようにFAXや電子メールなどで労働条件を明示するには、「労働者が希望した場合」という条件があります。
つまり、雇用者側の都合で一方的にこれらの方法を利用すると、違法になるということです。
これらの方法を利用する場合、労働者の希望があったということを証明するため、メッセージのログなど、何かしらの形で記録として残しておくことが推奨されています。
また、電子媒体を利用して公布する場合、次のポイントも留意しておくことが推奨されています。
・送付したファイルが確実に相手に届いているか確認する
・なるべく印刷しておくよう労働者に伝える
・労働条件は細切れではなく一続きで確認できるファイルで送付する
・明示した日付・送信した担当者氏名・事業所や法人名・労働者の氏名等を明記しておく
まとめ
デジタル端末やサービスの発展・普及に伴い、ペーパーレス化の流れは徐々に大きくなってきています。ライフスタイルや働き方の変化に伴う今回の法改正は、雇用者・労働者共に便利になる可能性が高いものです。特に、採用担当者においては、これまで一人ひとりのために体裁を整えて印刷し、まとめて配布していたものが、電子媒体での送付が可能になることで、工数が大きく削減できるというメリットもあります。一方、これらの方法での交付には労働者の希望が必須であるといった、気をつけるべきポイントもあります。また、メールがスパムと認識されて削除されてしまった、あるいはメッセージサービスのファイル保管期限が切れてしまい自動で削除されてしまった、などといった、電子媒体特有のトラブルのリスクもあります。実施の際には、トラブルにつながらないよう、注意して運用する必要があります。
新しい制度の運用には戸惑うことも多いかと思いますが、効果的に運用することができれば、採用に関わる煩雑さがひとつ解消され、雇用者・労働者共に快適に手続きが可能となります。今回の改正のポイントを理解し、上手に活用していくことが大切です。
参考データ:
厚生労働省「よくある質問」
厚生労働省「事業主向けリーフレット」
厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」
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