「アルバイトを採用しても、すぐに辞めてしまう」
そんな悩みを抱える職場では、何が起きているのでしょうか。
──職場の雰囲気が悪い?
──店長の教え方に問題がある?
──癖のある古参アルバイトのせい?
どれも誘因とはなりますが、実はそれよりも“一歩手前”で、アルバイトがすぐ辞める職場に共通して発生していることがあります。
それは、「期待と実際のギャップ」です。
アルバイトがすぐ辞める職場は、“期待値のコントロール”ができていないのです。
目次
アルバイトがすぐ辞める職場は“期待値のコントロール”ができていない
アルバイトがすぐ辞める職場は“期待値のコントロール”ができていない
「アルバイトがすぐ辞める職場は期待値のコントロールができていない」とは、どういうことでしょうか。詳しく見ていきましょう。
期待と実際のギャップが大きいほどすぐ辞める
まず押さえておきたいのが、「アルバイトがすぐ辞めるのはなぜか」です。
アルバイトがすぐ辞める理由は、働き始める前に抱いていた“期待”と、働き始めて体感した“実際”のギャップが大きかったからです。
“期待”と“実際”のギャップが大きいほど、それはイコール“不満”となり、職場に満足できず、すぐ辞めてしまいます。
期待値を形成する3つの要素
では、アルバイトが働き始める前に抱く“期待”は、どういった要素から形成されるのでしょうか。3つのポイントがあります。
1.求人広告
2.面接
3.給与
それぞれ見ていきましょう。
(1)求人広告
「求人広告」に記載した文言は、そのままアルバイトの期待値に直結します。
▼ 求人広告の表現例
初めてでも簡単にできるお仕事ばかりです!
優しいスタッフが付きっきりでサポートしますので安心してください!
皆の仲が良く楽しく和気あいあいとしたアットホームな職場です!
これらが“実際”と合っていれば何も問題はありません。しかし、実際とのギャップがある場合には、すぐに辞める確率が高くなります。
(2)面接
次に「面接」です。
ただでさえ求人広告により高まっている期待を面接で煽る結果となれば、アルバイト応募者が抱くイメージは、いよいよ実際と離れていきます。
▼ 期待を煽る面接の例
職場の良いところばかり伝えて、マイナス面を伝えない
給与などの待遇が簡単に上がるように匂わせる
必要以上に応募者を褒めて持ち上げる
面接で応募者に良い印象を持ってもらうことは、もちろん大切です。
しかし、印象を良くすることを優先し過ぎて、虚像に近い取り繕い方をすれば、後に早期の離職という歪みを生み出します。
(3)給与
最後に「給与」が挙げられます。
私たちは、無意識のうちに“金額”から期待値を算出しています。
身近な例でいえば、「300円のラーメン」に期待することと、「1,500円のラーメン」に期待することは、異なるはずです。
アルバイトも同じで、給与の金額から、仕事の大変さ・忙しさ・難易度などを推し量っています。
例えば「時給1,000円の仕事なのに、時給3,000円に相当する仕事内容だ」と感じれば、2,000円分のギャップが不満となり、すぐ辞める原因となるのです。
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「思っていたのと違う!」を防ぐ5つの対策
期待と実際が異なる、つまり「思っていたのと違う!」とアルバイトがすぐ辞めるのを防ぐためには、どうすれば良いのでしょうか。
先に解説した背景を踏まえながら、5つの対策をご紹介します。
1.求人広告を実際にマッチさせる
2.面接時のコミュニケーションを工夫する
3.給与を適切に設定する
4.勤務初日の面談で想定されるリスクに対応しておく
5.期待を超える実際の職場を作る
(1)求人広告を実際にマッチさせる
1つめの対策は「求人広告を実際にマッチさせる」ことです。
求人の内容が誇大広告になっていないか、いま一度、見直してみましょう。
「盛った表現にしないと、応募数が増えない」
という気持ちもわかりますが、むやみに増やした応募数は、定着率とトレードオフの関係になります。
応募数がいくら増えても、すぐ辞めてしまうアルバイトばかりでは意味がありません。最終的に定着してくれるアルバイトを確実に増やすことが大切です。
なお、実際の職場に即した表現であっても、工夫すれば魅力的な文言を作成できます。
例えば、実際にはサバサバした雰囲気で、アルバイト同士の交流があまりない職場にもかかわらず、以下の文言を求人広告に記載していたとします。
修正前:皆の仲が良くアットホームな職場です。
このままでは、「皆の仲が良くて、アットホームな職場」を期待してきた人が応募した結果、がっかりしてすぐ辞めてしまいます。
そこで「サバサバした雰囲気で、アルバイト同士の交流があまりない職場」という“実際”に、マッチした表現に変換してみましょう。
修正後:人付き合いが苦手な方でも働きやすい職場です。
これで応募してきた人なら、アルバイト同士の交流がなくても、がっかりしません。むしろ「期待どおり」と満足度が高まるケースも考えられるでしょう。
(2)面接時にはマイナス面もバランス良く伝える
2つめの対策は「面接時にはマイナス面もバランス良く伝える」ことです。
面接時に、良いことばかりを並べて話すと、どうしても応募者の期待値が過剰に高まってしまいます。
しかし実際の仕事は、100%ポジティブなことだけではありません。過剰に高まった期待は、裏切られることになります。
そこで面接時には、大変なこと・苦労するかもしれないことなども織り交ぜながら、プラスとマイナスをバランス良く伝えましょう。
(3)給与を適切に設定する
特に、給与を人件費の予算などから自動算出している場合、仕事内容の実際に給与が見合っていないことがあります。
アルバイトがすぐ辞めてしまうのであれば、給与と仕事内容のバランスが取れているか、検証が必要です。
具体的なアクションとしては、以下が挙げられます。
求人サイトなどで同じ条件の求人をチェックする
他社・他店などと比較して従業員数が足りているかチェックする
気付かぬうちに、
「この給与で、こんなに大変な仕事、誰がやるの?」
という状況に陥っていないか、確認しましょう。
(4)勤務初日の面談で想定されるリスクに対応しておく
4つめの対策は「勤務初日の面談で想定されるリスクに対応しておく」ことです。
新しく採用したアルバイトが働き始める初日には、面談の時間を取りましょう。
その目的は「すぐに辞めてしまうとしたら、原因として想定されるリスクを、先回りしてフォローしておくこと」です。
例えば、職場によっては、以下のリスクを抱えているかもしれません。
新人に対してあたりが強い古参アルバイトがいる
厳しいクレームを言う顧客がいる
繁忙時間の忙しさが激しい
何の心構えもなく職場に放り込まれ、こういったリスクにさらされれば、離職率が否応なしに高まります。
そこで先んじて、
「こんなことがあるかもしれないけれど、困ったらいつでも相談してくださいね」
とフォローし、離職を防ぐ防波堤を作っておくことが大切です。
(5)期待を超える実際の職場を作る
5つめの対策は「期待を超える実際の職場を作る」ことです。
これは、アルバイトがすぐに辞めないようにするための本質的な解決策といえます。
働いてみてがっかりするどころか、
「こんなに素晴らしいとは思わなかった!」
という、逆のサプライズがあれば、それは高い定着率に直結します。
期待を超える職場づくりは、一朝一夕にはできません。しかし中長期的な視点に立てば、アルバイトの定着率を高める最も効率的で有力なソリューションです。
ここまでにご紹介した実践的な対策と並行して、根本的に働き続けたくなる職場づくりにも、チャレンジしていきましょう。
さいごに
人手不足が加速しアルバイトの採用が難しくなるほど、求人広告の表現には磨きがかけられ、ていのいい言葉が並ぶようになります。
しかし、実態とかけ離れて過剰に期待を煽る行為は、百害あって一利なしといっても過言ではありません。
商品の誇大広告と同じで、「だまされた!」という不信感を生み出す結果となりかねないからです。
それよりも、実際の職場環境を高めつつ、“ちょうど良い期待値”へのコントロールを意図したコミュニケーションで、定着率が高まるバランスを探してみてはいかがでしょうか。
それが、会社や店舗にとってもアルバイト応募者にとっても、有意義な結果につながるはずです。
【著者プロフィール】
三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。
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