「シフトの時間帯、あの人とは被らないようにしてほしいです」
こんな不満や悩みを部下や従業員から相談されたことはありませんか?
実はこれは、私がラーメン店で店舗責任者をしていたときに主婦のアルバイトスタッフから寄せられた声でした。
飲食店では、「何とかしていい人材を」と試行錯誤されている管理者の方は多いと思いますが、中でも主婦(夫)人材には、特に需要があるようです。
残業や深夜残業に対応できる人もいますし、家庭での経験値や年齢的なところからも、リーダーシップや行動力を期待できるからです。
しかし、この行動力は時に、揉めごとや人間関係の悪化につながることもあります。
職場の人間関係の構築に苦心されている方も多いと思われます。
少なくとも私は、その一人でした。
大きく外していた私のリーダーシップ
前の店長が他店へ異動になり、店のマネジメントを引継いだときのこと。
私は、同期のだれよりも早く店舗責任者(店長代行職)を任され、意気揚々とていました。
自分の能力が認められたような感じがしてうれしかったのです。
しかし、うまくいっているような気がしていたのは最初だけでした。
今思えば、「スタッフに任せるのがマネジメントの真髄だ」という言葉をどこかで聞き知り、また、リーダーとしての「余裕」を見せたいという気持ちもあったのでしょう。
いつの間にか「了解! 」、「いいよ、任せる! 」というのが口ぐせになっていたのです。
今でも覚えています。
店を引き継いでから1、2か月もすると「〇〇さん(前の店長)だったらこうしてた」という声を聞くようになっていました。
しかも、「二人三脚で頼り、頼られる仲」だと思っていた主婦のアルバイトリーダー(Aさん)は、店での悩みを前の店長に相談していたのです。
問題が起きたのはそのようなときでした。
Aさんから「BさんとCさん、どうします?」と聞かれたのです。(Bさん、Cさんとも主婦のアルバイト)
「何かあったんですか?」
「知らないんですか? Bさん、辞めるって言ってますよ、もうCさんとは一緒に仕事できないって」
「え・・・? 」
続けて、Aさんからこう言われました。
「話は変りますが、もっとスタッフのこと考えてくださいよ。何て言うか、私たち、『人』なんですよ。〇〇さん(前の店長)は、私たちのこと、もっと大事にしてくれましたよ。店のやり方を変えるときは意見を聞いてくれたし、仕事を任せるときも、不安なことや困っていることはないかと聞いてくれました。××さん(私)のやり方は、速いし大胆だけど、愛がない」
「………」
「店のことを第一に考えるってことですよ、自分のことじゃなくて」
「………」
「××さん、第一に考えてますか?店のことを」
この問いに即答はできませんでしたが、自分の中でこう結論付けました。
■ 店のことを第一に考えるとは、店の存在意義にもとづいて行動すること
■ 店の存在意義とは、お客さんにおいしいラーメンを提供し、最高のひと時を過ごしてもらうこと
■ だから、何をするにも店としてのパフォーマンスを下げてはいけないということ
私は、Aさんにも相談した上で、BさんとCさんの揉めごとに、このような方針で当たることにしました。
■ 1人ずつ、直接、事情を聞く
■ 私を含め、3人で話し合いの場を設ける
■ そこで2人の思いを腹を割って話させ、お互いに納得させる
■ 解決できない場合、2人の退職、シフト変更も視野に入れて処置する
これは、「店としてのパフォーマンスが下がらないかどうか」を判断基準にしたからです。
結局、3人での話し合いの場は設けられませんでした。
しかし、2人に「この件はなかったことにし、これまで通りに仕事をすること。そして、店のことを第一に考え、周りに迷惑をかけないこと」を約束させ、Bさんを深夜の時間帯、Cさんを昼の時間帯に固定することで事なきを得ました。
職場の良好な人間関係は「現場リーダーの行動」から生まれる
私は当初、大きな間違いをしていました。
「人は肩書についてくる」、そして、「『リーダーが決めないこと』が自由で働きやすい職場を作る」と思っていたのです。
しかし、現実は違いました。
人は肩書ではなく、「肩書に見合った、もしくは肩書以上の行動をする人の姿」についてくるということだったのです。
また、問題を解決するのは、「本質的価値(店の存在意義)に基づいた断固たる行動」だということにも気づきました。
特に、職場の人間関係の問題においては、「現場リーダーの初動」こそが解決のカギだということがわかりました。
そのメリットは多方面にわたります。
■ 人間関係の問題自体を早期に解決できる
■ リーダーが店の価値観を行動で示すことで、各スタッフの行動規範を問題の当事者以外にも与えられる
■ リーダーへの信頼が高まり、チームワークが生まれる
いかにも概念的ですが、具体的な数値としては、離職率の低下、シフトイン率の向上、サービスの質の向上(覆面調査による採点制度から考察)などがありました。
働きやすい職場は、行動しないリーダーのもとには生まれません。
まずは、リーダーが行動すること。
そして、それによってスタッフがリーダーを信頼して行動するからこそ、良好な人間関係ができるのです。
職場の人間関係がアルバイトの長期就業意向に及ぼす影響と現場リーダーへの期待の高さ
各種データからも、「職場の人間関係は、現場リーダーの行動による」ということがわかります。
当たり前だと思われるかもしれませんが、マイナビの主婦アルバイト調査*1 によれば「人間関係がアルバイトの長期就業につながる」のは、間違いありません。
引用:株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
「(今の職場が)人間関係がよい職場である」と答えた主婦の40.1%が「長期就業意向あり」であるのがわかります(赤枠)。
他にも、青枠「職場の雰囲気が自分に合っている」(24.5%)や「自分が好きな事を仕事にできる」(31.7%)も、人間関係がいいかどうかに大いに影響を受けることでしょう。
また、これは驚きなのですが、同調査*2 によれば「主婦が人間関係に不満を感じる時、その不満の主な対象は上司だ」というのです。
引用:株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
アルバイトスタッフが上司と揉めたのなら、これは当然でしょう。
しかし、それ以外の人間関係で問題があったときにも、主な不満の対象は上司だというから衝撃です。
これは、人間関係だけでなく、職場や仕事全般のコントロールの責任が上司にあるのをスタッフが無意識に認識していることの現れでしょう。
さらに、アルバイトスタッフは、「的確に指示が出せ、責任感と行動力のある上司」を求めています*3。
引用:株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
これは、主婦のアルバイトに限ったことではありません。
大学生、高校生にもまったく同じ傾向があることがわかっています*4 *5。
職場の人間関係はアルバイトスタッフの長期就業に影響し、それに関して果たすべき上司の役割には高い期待が寄せられているのです。
まとめ
職場の人間関係というのは、厄介なものです。
アルバイトスタッフを指導する場面では、
■ 職場の空気が悪くならないか
■ シフトに入ってくれなくなったらどうしよう
■ ただでさえ忙しいのに、時間がかけられない
と気にされる方が多いと思います。
しかし、店舗運営の本質が「お客さんが満足のいくサービスの提供」にあるとすれば、リスクを払う価値は十分にあるでしょうし、問題を放置しておく方がデメリットは大きいかもしれません。
ただし、人がいなくなってしまっては、サービスの質云々と言ってはいられないというのも一理あります。
職場の人間関係とは、常にこのような葛藤を抱えているものなのです。
ただ、間違いないのは、問題を解決するのも、解決できないまでも影響を最小限に抑えるのも、現場リーダーの行動にかかっているということです。
そして、その行動がスタッフからの信頼を集め、信頼がさらなるリーダーの行動を呼ぶのです。
もしかしたら目の前にある問題は、この好循環の入り口なのかもしれません。
*1 引用)株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
*2 引用)株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
*3 引用)株式会社マイナビ「主婦アルバイト調査」2019年5月
https://nalevi.mynavi.jp/data/6671/
*4 引用)株式会社マイナビ「大学生アルバイト調査」2019年4月
https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_19843.html
*5 引用)株式会社マイナビ「高校生アルバイト調査」2019年11月
https://www.mynavi.jp/news/2019/11/post_21721.html
【著者】
めんおう
専業ライター。大学卒業後、防衛省、民間企業を経てフリーランスへ転向。インターネット、働き方、英語、取材などを中心に活動。
ブログ:めんおうブログ(https://www.zinseitanosiku.com/)
Twitter:https://twitter.com/mennousan
マイナビバイト掲載のご依頼や採用に関するお悩み、お気軽にご連絡ください!
新しくスタッフ採用をご検討している方、「マイナビバイトの掲載料金が知りたい」「マイナビバイトに掲載する流れを知りたい」という採用担当の方は以下よりお問い合わせください。
マイナビバイトでは、応募の先の採用・定着まで伴走して、課題の解決に寄り添います。
「アルバイト・パート採用を考えているけど、どのように広告を出したらいいかわからない」
「これまでのやり方ではなかなか人材が集まらなくて困っている」
「同じ業界の採用事例を知りたい」など、掲載よりもまずは採用に関して相談をしたいという採用担当の方も、ぜひ以下よりお問い合わせください。