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「高齢者は生産性が低い」は本当なのだろうか?

「高齢者は生産性が低い」
「老人は使えない」
そんなふうに思っている人は多いかもしれません。
しかし、実際には、高齢者の労働人口は増えています。

内閣府の令和元年のデータによると、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.2%と上昇し続けています。

労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇 令和元(2019)年の労働力人口は、6,886万人であった。 労働力人口のうち65~69歳の者は438万人、70歳以上の者は469万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.2%と上昇し続けている(図1-2-1-10)。(*1)

本調査によると、特に男性は60歳以上も半数以上が働いていることがわかります。70〜74歳でも、全体の41.1パーセントの男性が就業しているのです。(*1)

 

「年齢差別」が問題になりはじめたアメリカ

しかし、職場で働く高齢者は歓迎されているのでしょうか。

ベストセラー「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」の続編である「LIFE SHIFT2100年時代の行動戦略」によると、アメリカでは根強い高齢者差別が問題となっています。本書によると、アメリカの高齢者団体「AARP」が、45~74歳の働き手の3人に2人は、年齢差別を経験したことがあると報告しているそうです。(*2)

シリコンバレーの有力企業では、人種差別や性差別より、年齢差別による訴訟の件数の方が多いとも報告されています。

しかしなぜ高齢者を差別する必要があるのでしょうか。
本当に彼らは「生産性が低い」のでしょうか。

「高齢者は生産性が低く、学習意欲が乏しい」は本当なのか?
世界中で高齢者の寿命が延び、それによって、長く働く人も増えています。

私自身も70代の仕事相手と作業したことがありますが、こればかりは実に「人による」「職種による」としか言いようがありません。70代でも良い仕事をする人はたくさんいるのです。

「LIFE SHIFT2」には、こんな一節が出てきます。

1998年以降にアメリカで実現した雇用増の90%は、55歳以上の層によるものだ。企業の年齢差別的な制度が変わらないままでも、高齢層の就労者数がこれだけ増加したということは、年齢差別が解消されれば、さらに大きな前進が期待できるだろう。(*3)

確かに、高齢になれば誰でも、肉体的な部分で衰えが出てきます。
そこで、本書では高齢の人が働きやすくするために、「肉体の影響」を減らす工夫が必要ではないかと提示しています。

例えば、 BMWの工場では高齢の働き手が座って作業できるようにしたり、組み立てラインのスピードを送らせていたりするそうです。

映画「ノマドランド」ではアマゾンの倉庫で働く高齢者が紹介されました。
肉体労働以外にも高齢者にできる仕事があるだろうと思う人は少なくありません。

「LIFE SHIFT2」では高齢者の生産性は低くないとする研究を紹介しています。

たとえば、認知的な要素の大きい仕事では、高齢の働き手の結晶性知能(第4章参照)が大きな強みになるかもしれない。この点は、ドイツの自動車大手BMWの工場でおこなわれた研究からも明らかだ。その研究では、高齢の働き手のほうが若い働き手よりも生産性が高かった。(*4)

結晶性知能とは、時間をかけて蓄積されていく情報や知識、知恵、戦略のこと(*5)で、情報を処理したり記憶を保持したりする「流動性知能」と異なるものだそうです。

 

ミスを起こすのは確かに高齢者の方が多い。けれどもミスのリカバリーが得意なのも高齢者である

仕事上のミスを起こすのは高齢者の方が少し高かったそうですが、「大きなミス」は若い人の方がむしろ多かったというのです。

こう言われて、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。高齢者は経験を重ねている分、ミスのパターンも多く知っており、ミスを「小さく」することができるのでしょう。
本書は、「年齢を重ねた人たちは、長年の経験と結晶性知能のおかげで、問題に対処し、問題を抑え込む方法を心得ているのだろう(*4)」と書いています。

チーム単位でも同じで、企業のデータによると、年長のメンバーが加わっているチームほど、大きな成果を得られる傾向があるそうです。粘り強さややり抜く力も、概して年齢とともに高まるという研究結果があります。

働く高齢者といえば、「マイ・インターン」という米国映画がありました。ロバート・デ・ニーロ扮する元印刷会社の社長が、スタートアップの女性の職場を手伝うシニア・インターンとして採用されるーーそんなストーリー。

パソコンなどの機器に苦手意識を持ちながらも、持ち前の柔軟さと包容力で、会社にとってなくてはならない人材になっていくのです。

日経スタイルの記事によると、日本でも高齢者とまでは行きませんが、実際にスタートアップの補佐役として「50代の人を迎えたい」とする求人依頼が増えてきているそうです。

私が転職エージェントとして企業と人材のマッチングを行う中でも、40代後半~50代の人が「ナンバー2」「ナンバー3」の経営ボードメンバーとしてスタートアップに迎えられる事例が複数あります。「顧問」「社外取締役」といった形で参画するケースも多くなっています。(*6)

まさに日本版「マイ・インターン」が始まるかもしれません。

 

働きたい高齢者のための場所作りが求められている

内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版) の調査によると、約8割の高齢者が働きたいと思っていることもわかっています。

現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる(図1-2-4-3)。(*7)

元気な高齢者といえば、米国のドラマ「グレイス&フランキー」。高齢になってから夫に離婚を言い渡された二人の女性が第二の人生を模索していくコメディですが、二人は高齢でありながら、スタートアップを設立します。しかし一方で、アルツハイマーに苦しんだり、希望が持てない高齢者も描いています。

2021年にはシーズン7が作られ、84歳のジェーン・フォンダが主役として堂々と活躍しています。過酷であろう連続ドラマで堂々と主役を張る84歳のジェーンを見ると、誰もが人を年齢で決めつけることの難しさを理解できるはずです。

出典)

(1)内閣府 令和2年版高齢社会白書(全体版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/index.html
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_2_1.html

 


【著者プロフィール】

三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

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