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「これって、セクハラ?」と悩まないために。線引きが難しいハラスメントを判断するポイントとは

パワハラ、モラハラ、カスハラなど、世間にはハラスメントと名の付くものが多く存在します。対策するためにどこで線引きをすべきなのかや、どう対処すればいいのかは悩ましいところです。とりわけセクハラともなると男女間の意識の違いもあり、対応を難しく感じることもあるでしょう。

セクハラによるトラブルを起こさないようにするためには、何に気をつければいいのでしょうか。

 

近年のセクハラ事情とは

男女雇用機会均等法が施行され、男女差別が法律で禁止されるようになったのは平成11年のことです。募集、採用、待遇において性別による不利益な取り扱いはしてはならないとされました。

セクハラについても、男女雇用機会均等法の第11条において、働く人が不利益を受けたり、労働環境を害されることのないように、事業主は必要な措置をとらなければならない旨が定められています。

しかし、セクハラについては、対応するのが難しい一面があるというのが現状です。

以下に示すのは、平成30年度の都道府県労働局に寄せられた男女雇用機会均等法に係る相談件数の内訳です。


参考)厚生労働省「平成30年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」P2を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000521502.pdf

セクハラに関連した相談件数が7,639件あり、全体の38.2%を占めています。これを見ると、セクハラに関連した相談がいかに多いかというのが分かります。
社会の意識は高まっているにも関わらず、依然として多数の事案が発生していることからも、対策の難しさが浮き彫りになっているといえるでしょう。

またセクハラは、件数の多さだけが問題ではありません。
職場内で問題が起こってしまえば、従業員全体の士気の低下を招くだけでなく、多額の損害賠償が発生するケースもあります。

平成4年の福岡地裁の判決では、性的な噂を流した上司に対して、会社と連帯して慰謝料150万円と弁護士費用15万円の支払が命じられました。また、平成14年の岡山地裁の判決では、肉体関係を迫った上司に対し、会社と連帯して被害を受けた女性従業員二人にそれぞれ約1,500万円の支払を命じる判決を出しています。*1

このように、セクハラとは会社にもさまざまな不利益をもたらすため、単純に件数だけで比較するというわけにはいきません。

さらに、継続されて行われたものでなく一回だけでもセクハラに該当してしまうこともあるので、注意が必要です。こちらが何気ないつもりで言った一言でも、相手は激しく傷ついてしまうことも有り得るため、行動は慎重にならなくてはなりません。

ただ、過度にセクハラを恐れるあまり、職場の雰囲気がピリピリしてしまっても、生産性を低下させてしまいます。適切に対処するためにも、何に一番気をつければいいのかを知ることが重要です。

 

どう対応すればいいのかという悩み

セクハラの問題で難しいのが、どこで線引きをすればいいのかということです。例えば、髪を短くカットした女性従業員に対して、そのことを話題にするのはセクハラになると考えられるでしょうか。

たとえ同じ言葉であったとしても、誰が、どんな状況で、どのようなニュアンスで言うのかによって、相手の受け止め方というのは、かなり変わってきます。よって、これをやればアウトになるという統一された基準を作るというのは非常に難しいわけです。

セクハラの状況は多様であり、判断にあたっては個別の状況を考慮する必要があるとされています。*1

したがって、基準に当てはまて考えようとするのではなく、相手をよく観察して判断するということがポイントです。

職場におけるセクハラには、被害者が抵抗したことで不利益を受けてしまう「対価型」と、労働環境が悪化することで働きにくくなってしまう「環境型」と呼ばれるものがあります。*1

ただ、セクハラはそのような第三者から見て客観的に判断できるものばかりでもありません。

判断にあたっては、『受け手の主観』が重視されますので、受け手がどのように感じるのかを把握することが重要になります。自分の一方的な考えで相手の心の中を推測しようとしてしまうと、相手が実際に思っていることとズレが出てきてしまうので注意が必要です。

筆者は心理カウンセラーとしても活動していますが、自分の思い込みによって相手を見てしまった結果トラブルになってしまうケースというのをよく目にします。とりわけ、自分の過去の知識や経験に基づいて作り上げられた固定観念は、心理学的にはビリーフと呼ばれています。人は無意識的にこのビリーフに基づいて物事を考えてしまいます。

「家族を養うのは男の役目」「この仕事は女性には無理」といった考えもビリーフに基づくものです。

「男らしい」「女らしい」など固定的な性別役割分担意識に基づいた言動は、セクハラの原因や背景になってしまう可能性も指摘されています。*1

ビリーフといっても、それは過去の知識や経験に基づくものです。変化の激しい時代にあっては、頭の中のビリーフと目の前の現実にズレが生じることも出てきます。そんなズレに気づかずにビリーフに基づいて判断してしまうと、トラブルのもとになりかねません。

セクハラを防止するためにも、相手をよく観察することと、ビリーフに縛られてしまわないように注意することが重要です。

 

こんなケースもセクハラに該当する

セクハラというと、男性上司が女性部下に対してするケースを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし実際には、立場の上下や職場内の人であるかは関係が無く、同僚、部下、取引先も加害者になり得ます。*1

さらに、男性が加害者になるイメージの強いセクハラですが、女性が加害者になることもあります。

立場が上の人がやったことなのかや、加害者側は男性なのかということでは、セクハラになるかどうかの判断材料の決め手にはなりません。

また、セクハラには、同性に対するものも含まれます。同性同士であれば分かりあえるので特に問題ないのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。

たとえ同性であったとしても、性的な内容の発言で受け手が不快になってしまえば、セクハラになってしまいます。同性に対してであれば問題ないという考えは誤りですので、注意しましょう。

また、恋愛の対象をいずれの性別とするのかという「性的指向」や、性別に関する自己意識である「性自認」が他の多くの人とは異なる人もいるため、配慮が必要です。

固定的な性別役割分担意識に基づいた言動をしてしまうと、セクハラの原因になってしまいます。

被害を受ける人の性的指向や性自認に関わらず、性的な言動であればセクハラに該当するとされるのです。*1

このように、加害者や被害者の立場、性別などに基づいて判定するというのは難しいというのがお分かりいただけるのではないでしょうか。

いくら自分が、これはセクハラに該当しないのではないかと思ってやったことでも、相手がセクハラだと感じてしまえば、それはセクハラに該当することになります。

重要なのは、発言や行為の内容が性に関わるものであり、それを受け手はどのように感じるのかということです。

 

義務化された対策と注意すべきポイント

セクハラの防止にあたっては、事業主は雇用管理上の措置として、厚生労働大臣の指針に基づき、以下の10項目を実施しなければならないとされています。*2

1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 ⑴ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
 ⑵ セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。
 ⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
3 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
 ⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
 ⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
 ⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
 ⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
4 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
 ⑼ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
 ⑽ 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

問題が発生した際に迅速に対応するというのは大事ですが、セクハラは未然に防止するというのが重要です。
一回の発言や行為でもセクハラになることもありますし、さらに損失金額も決して小さくはありません。起こってから対応していたのでは、その対応に多大な時間や労力もかかってしまいます。
セクハラを未然に防止するうえで大事になってくるこのが、性的な発言や行為が行われた際に、受け手がどのように感じるのかです。
普段からコミュニケーションが取れていなければ、相手はどのように受け止めそうなのかということは、なかなか分かりません。
セクハラになってしまわないだろうかということを判断するためには、まずは相手のことをよく知るということが重要です。
客観的な基準も参考になりますが、基準に当てはめて考えていたのでは、うまく対応できないケースというのも出てきます。

立場の弱い女性が被害者になるということを想定してセクハラ対策をしても、男性が被害者になるケースが出たり、上司が被害者になるケースが出たりとなってくると、そのたびに基準を作り変えないといけなくなってしまいます。
相手の主観が重視されるということからも、相手がどう感じるかを知ることが大事です。
相手がどう感じるのかを知るためにも、職場のコミュニケーションのあり方を見直されてみてはいかがでしょうか。

 

 

*1 参考)厚生労働省「職場におけるハラスメント対策マニュアル~予防から事後対応までのサポートガイド~」P9,10,11,12
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf

*2 引用)厚生労働省「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」P6
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf

 

 

【筆者】
黒田貴晴
コミュニケーションの問題や発達障害を専門的に扱う心理カウンセラー、フリーライター。NLPマスタープラクティショナー。職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決をサポートしています。

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