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就活や卒業後の仕事にも役立つ! 学生アルバイトの言葉遣いはここがポイント

「日本語は乱れている」
文化庁の調査によると、40代~60代の7割以上の人々がそう回答しているということです。*1:p.1
10代~20代のアルバイト経験者の約17%は言葉遣いを注意されたことがあるという調査結果もあります。*2
なかでも学生アルバイトは、職場にふさわしい言葉遣いを身につける機会がないまま職場に立っている場合も多いのではないでしょうか。

適切な言葉遣いは、上司やお客様、取引先との良好な関係につながるだけでなく、今後の就職活動や卒業後の仕事にも役立ちます。
社会人にふさわしい言葉遣いのポイントを押さえていきましょう。

目次

「あとよし言葉」を使う

失敗したときは他動詞を

言いにくいことを伝えるときには決まり文句で

ら抜き言葉

間違いやすい敬語

対面のビジネス会話はこのパターンで

おわりに

「あとよし言葉」を使う

まず、話の順番を変えるだけで印象がよくなる方法をご紹介します。
ポジティブなこととネガティブなことを言う場合、ポジティブなことの方を後に言う「あとよし言葉」の活用です。
例えば、残業の打診への答えとして感じがいいのはどちらでしょうか。

明日ならなんとかなりますが、今日は無理です。
今日は無理なのですが、明日ならなんとかなります。

2) の方が耳当たりがいいのではないでしょうか。
また、「明日」というオプションを明確に提供することにもなっています。

ついでに、順番だけでなく表現も工夫すれば、より相手に配慮した表現になるでしょう。

あいにく今日はちょっと都合がつきませんが、明日でよろしければ・・・。

失敗したときは他動詞を

アルバイト先で失敗したときは、ショックですね。
でも、人間にミスはつきもの。
大切なのは、過度に気にせず、自分の落ち度を認め、ありのままに報告することです。
その際、どちらの表現が適切でしょうか。

すみません、手が滑って、壊れてしまいました。
すみません、うっかり落として、壊してしまいました。

正解は 2) ですね。
は「滑る」「壊れる」と自動詞を使っています。
一方、2) は「落とす」「壊す」と他動詞を使っています。

他動詞を使うと、行為者の責任がはっきりします。
一方、自動詞は「(物が)自然にそうなった」というニュアンスを帯び、無責任な態度だと受け取られかねません。

「お皿を割ってしまいました」
「お客様のお洋服を汚してしまいました」

自分のミスは素直に認め、他動詞を使って報告しましょう。

 

言いにくいことを伝えるときには決まり文句で

ビジネスの現場では、言いにくいことを伝えるとき、直接的な表現は避け、遠まわしな決まり文句を使います。

例えば電話の声が聞こえにくいとき、
「すみません、もっと大きい声でお願いします」
などと言うのは、ストレートすぎて敬遠されます。
そんなときは、
「申し訳ありませんが、お電話が遠いようです・・・」
と婉曲表現に。

相手の声が小さかったとしても、そのことには触れずに電話にかこつける。なんとも日本的な表現ですね。

「~ない」という否定表現を避けて、別の言い方を探すのも大切です。
例えば、在庫などがなくなってしまったときは、
「申し訳ありません。~を切らしておりまして・・・」

「できません」は、「いたしかねます」と言い換えれば、同じ意味でも、相手に配慮した柔らかい表現になります。

 

ら抜き言葉

言葉は常に変化します。
そして、その変化はほとんどの場合、若い人たちから始まります。その一方で、その上の世代は従来の言葉遣いにこだわる傾向があります。
そこで問題になるのが、世代間格差。

「ら抜き言葉」はその典型です。
ここで、文化庁による調査の結果をみてみましょう。*3:p.17

図1 「ら抜き言葉」の使用状況
出典:文化庁(2020)「令和2年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」p.17より抜粋
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/93398901_01.pdf

図の(1)から(5)の(ア)の方が従来正しいとされていた表現、(イ)は「ら抜き言葉」です。

変化の状況は動詞によって異なりますが、(3)はどの世代も従来の(ア)が優勢です。*pp.18-20
それ以外の動詞は、年齢が上がるほど(ア)の割合が高く、それと反対に若い世代は(イ)を使う人が多いことがわかっています。学生アルバイトの世代はら抜き言葉が既にデフォルトになっているのです。
今後は「ら抜き言葉」の方が全体的に優勢になっていくでしょう。

ただ、現在のような変化の過程にあっては、どちらの方が正しいということはできせん。
したがって、若い世代に対して、より上の世代が自分たちと同じように従来の形を使うよう要求することには無理があるように思います。

こうした状況を理解し、好みは別として、他の世代の言葉遣いをできるだけ許容し、尊重する。そのような努力が大切ではないでしょうか。
「私は使わないけれど、あなたが使うのは自由」という態度です。

 

間違いやすい敬語

さて、いよいよ敬語です。

■バイト敬語

バイト敬語は、マニュアル敬語、ファミコン敬語(ファミレスやコンビニで使われている敬語)とも呼ばれ、以下のようなものがあります。*4

「(お釣りを返すときに)〇〇円とレシートのお返しです」
「こちら〇〇になります(例:こちらパスタになります)」
「〇〇円からお預かりします」
「〇〇でよろしかったでしょうか?」
「〇〇のほう(例:お弁当のほうは温めますか?)」

どれもよく耳にする言葉遣いですが、デパートやハイブランドの店舗では、逆にタブーです。
また、お客様の中にはバイト敬語に抵抗を感じる人もいることを心に留めておきましょう。

■目上に対する評価、「(さ)せていただく」の過剰使用

間違った敬語が気になるかどうかをまとめたのが、以下の表1です。

表1 間違った敬語に対する認識(1)

出典:文化庁(2019)「令和元年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」p.13より抜粋
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/92531901_01.pdf

(1) はどこが問題なのでしょうか。先生を褒めているのですし、問題があるようにはみえませんね。
ところが、日本語の世界では、職業上当然身につけているべきスキルや能力に対する評価を相手に直接伝えるのは、それが高評価であっても、失礼なこととされています。特に相手が目上の場合には、評価自体が失礼なのです。

ただ、その感じ方には個人差があり、それが「気になる」の32.4%という微妙な数値に表れているのかもしれません。
「安全な表現」にするとしたら、「大変勉強になりました」といったところでしょうか。

(2) は、主語が人ではない「就職」なのに、「お~になる」という尊敬表現を使っているところが問題だと感じる人が多いようです。

(3) は、「~(さ)せていただく」の過剰な使い方ですね。
この表現は、本来、「自分の行為を相手に許可してもらって実行し、そのことで自分が恩恵を受ける」ということを表します。
ところが、「反省」は相手の許可を必要としませんし、反省して得られることは他者からの恩恵でもありません。それで、「反省させていただく」は適切な表現とはいえないのです。

最近、こうした過剰な表現に時々遭遇しますが、表1にあるように、違和感を覚える人が半数程度いることから、注意が必要です。

■尊敬語と謙譲語

もう少し、敬語についてみていきましょう。*5:pp.14-15

表2 間違った敬語に対する認識(2)出典:文化庁「平成25年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」p.14
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf

は、目上の先生に対して、「お~する」という謙譲表現を使っている点が問題です。
謙譲表現は、基本的に自分(あるいは自分が属するグループ内の人)の行為にしか使えないと覚えておきましょう。
一方、尊敬語は必ず自分以外の人を対象とします。ここは、先生の行為ですから、尊敬表現の「お~になる」の方を使わなければなりません。

謙譲表現:自分の行為、「お(ご)~する」
尊敬表現:自分以外の人の行為、「お(ご)~になる」

これだけ覚えれば、とりあえずだいじょうぶです。

も、目上のお客様の行為に謙譲語「申す」を使ってしまった誤りです。
「言う」の尊敬語は「おっしゃる」ですね。

「とんでもございません」は「気にならない」という回答の方が多くなっています。
文化庁「敬語の指針」でも「相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現」として使うことは 問題がないとされ、現在では広く使われています。*6:p.47

しかし、実は「とんでもない」の「ない」は、「だらしない」「みっともない」などの「ない」と同じで、否定表現ではなく、これ全体で1語なのです。*7

ところが、「とんでもございません」は、「ない」を否定と捉えてより丁寧な否定の表現「ございません」に置き換えている点が、従来の使い方とは違います。
従来の表現は、「とんでもないです」あるいは、「とんでもないことでございます」。

(4) は二重敬語です。「見える」は「来る」の尊敬語ですが、さらにそれを「お~なる」という尊敬表現にしています。ただし、これも既に習慣化しているようです。

(5) は、先ほどみた「ご~する」という謙譲表現に「~れる」をつけて尊敬表現にしていま
す。ベースになっている「ご出発する」は謙譲表現なので、自分以外の人の行為に用いるの
は誤りです。

(6) は二重敬語ですね。「おっしゃる」だけで尊敬語なのですが、それに「れる」をつけて、二重に尊敬表現にしてしまっています。

(7) はお客様の行為を謙譲語「いただく」で表現している点が問題です。「食べる」の尊敬語は「召し上がる」ですから、こちらを使うべきですね。

図2をみると、従来の使い方と違う敬語表現に対しては、表現によって、気になる人と気にならない人の割合が違います。
その割合も使用する際の参考になるでしょう。

 

対面のビジネス会話はこのパターンで

最後に、覚えておくと便利なビジネス会話の流れをご紹介します。

  呼びかけ   「チーフ、」
  ⇓
相手の都合確認 「今、ちょっとよろしいでしょうか/今、少しお時間をいただけますか」
    ⇓ 
クッション言葉 「お忙しいところ申し訳ありませんが/お手数おかけしますが」
    ⇓
  本題 「これで間違いないか、チェックしていただけますか」
    ⇓
  あいさつ  「よろしくお願いします」

ここでのポイントは以下の3つ。

相手の様子をみて、忙しそうなときには別の機会を待つ。
本題に入る前に、クッション言葉(前置き表現)を使う。
依頼は、「〜てください」ではなく、「~ていだけますか」「〜ていただけませんか」「~ていただけますでしょうか」など、丁寧な表現を使う。

 

おわりに

本記事では社会人にふさわしい言葉遣いのポイントをみてきました。
共通するのは、相手を尊重するという姿勢。それは、ビジネス・マナーにも通底する、基本中の基本です。

これまでみてきたように、基礎的な知識とちょっとした工夫だけでも相手への伝わり方は大きく変わります。そうした意識をもって身につけた言葉遣いは、アルバイト先の職場での人間関係を豊かにするだけでなく、就活や卒業後のキャリア形成にもきっと役立つに違いありません。

 

資料一覧

*1
文化庁(2019)「令和元年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/92531901_01.pdf

*2
マイナビバイト(2017)「バイト経験者に聞いた!言葉遣いは何に気をつけたら良い?」
https://baito.mynavi.jp/times/baito/knowhow/20171130-2247/

*3
文化庁(2020)「令和2年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/93398901_01.pdf

*4
マイナビ学生の窓口(2017)「大学生が間違って使っていた「バイト敬語」Top5! 第2位「こちら〇〇になります」
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/51438

*5
文化庁(2013)「平成25年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf

*6
文化庁(2007)「敬語の指針」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

*7
NHK放送文化研究所(2010)「『とんでもない』→『とんでもございません』という言い方は?」
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/183.htm


プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

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