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強い発信力をもつデジタルネイティブ世代とは、どんな人たち?

30年近く大学教員をしていると、学生たちの気質の移り変わりが手に取るようにわかります。

「特にここ数年、すごく変わってきましたよね?」
「確かに、そうですね。私も感じます」

同僚たちとの会話で話題になることもしばしば。

デジタルネイティブと呼ばれる世代は生まれた時から、あるいは物心がつく頃にはインターネットが普及した環境に育った人々です。
彼らはさまざまな種類のデジタルメディアの特性に精通し、SNSをたやすく使いこなし、情報を発信・シェアすることに長けています。

彼らのITリテラシーの高さを実感したのは20204月。
COVID-19感染が急速に拡大し、新学期を控えた大学はその対応に追われました。その時点でオンライン授業の経験者は教員・学生ともに皆無。
果たしてうまくいくのだろうかと気を揉みましたが、蓋を開けてみると、拍子抜けするくらいサクサクとことが進みます。ネット環境によるトラブルはあるものの、これほどスムーズにオンライン授業が成立しているのは学生たちのデジタルリテラシーゆえでしょう。

では、彼らはDX(デジタルトランスフォーメーション)に前向きなのかというと‥‥‥、意識調査からは意外な一面が窺えます。

いずれにせよ、発信力が強く、多大な影響力をもつといわれるデジタルネイティブ。
日本ではこの世代は人口が少なく、希少な人材であるため、獲得競争は熾烈です。
彼らの採用にあたっては、この世代の価値観を正しく理解しておかなければなりません。
彼らはどのような考えをもっているのでしょうか。

目次

デジタルネイティブとは

利用するSNS系・ニュース系サービス

デジタルネイティブの価値観

デジタルネイティブとは

デジタルネイティブとは、「ミレニアル世代」「Z世代」と呼ばれる2つの世代を合わせて指すのが一般的です。ミレニアル世代はデジタルネイティブ第1世代、Z世代は第2世代といったところでしょうか。

■年齢層

これらの世代の一律な定義はありませんが、だいたい以下のような年齢層だと考えていいでしょう。*1-1: p.6

ミレニアル世代:1983年から 1994年の間に生まれた人
Z世代:1995 年から2003年の間に生まれた人

では、この世代の人口はどのくらいでしょうか(図1)。*2

図1 2020年時点での人口ピラミッド
出典:総務省統計局「平成20年10月1日現在推計人口 人口ピラミッド」
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2008np/index.html

2020年時点でミレニアル世代は26歳から37歳、Z世代は17歳から25歳にほぼ該当します。
こうしてみると、特にZ世代層は人口が少ないことがわかります。

■生育期の時代背景

次に、価値観に影響を及ぼす可能性のある生育期の時代背景をみてみましょう(図2)。*3

図2 ミレニアル世代・Z世代が生まれ育った時代背景
出典:デロイト(2020)「コロナ時代にキャリアへの不安を強める日本のミレニアル・Z世代 2020年 デロイト ミレニアル年次調査日本版」p.7
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-deloitte-millennial-survey-2020-summary.pdf

図中のブルーの折れ線グラフは株価を表しています。

経済格差の拡大、社会保障に対する不安の増大、大きな事件・出来事の連続‥‥‥、デジタルネイティブの特徴に深く関わるデジタルテクノロジーの進展は別として、彼らが生まれ育った時代の特徴はあまりポジティブなものではありません。*3:p.7

利用するSNS系・ニュース系サービス

ここでは、デジタルの利用状況をみていきます。

■スマホ・タブレットの利用状況

下の図3から彼らが他の世代に比べてスマホやタブレットなどのモバイルをよく利用していることがわかります。*4:p.3

図3 年代別スマートフォン・タブレットの利用状況
出典:総務省(2021)「令和3年版 情報通信白書のポイント」p.3
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01point.pdf

 

■SNS系サービスの利用状況

次にSNSの利用実態はどうでしょうか(図4)。*5

図4 主なSNS系サービス/アプリ等の利用率(2019年度)
出典:総務省(2020)「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」p.15
https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdf

図4をみると、デジタルネイティブはどのサービスの利用率も他の世代を上回っていますが、他の世代がLINEやYouTubeなど特定のサービス利用に偏る中、彼らは機能の異なるSNSを目的に合わせて使いこなしている様子が窺えます。

次の図5は、テキスト系ニュースサービスの利用状況を表しています。

図5 利用しているテキスト系ニュースサービス(2019年度)
出典:総務省(2020)「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」p.17
https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdf

20代から50代までに共通しているのは、新聞社の有料・無料サイトやキュレーションサービスの利用率が低いこと、ポータルサイトによるニュース配信の利用率が比較的高いことですが、デジタルネイティブに特徴的なのは、SNSによるニュース配信の利用率が高いことです。
同じようにスマホでニュースを読んでいたとしても、必ずしも情報源が同じとは限らないのです。

デジタルネイティブの価値観

デジタルネイティブはどのような価値観をもっているのでしょうか。
特にビジネスに影響を及ぼす可能性のあるものについてみていきます。

■DXに対する意識

彼らは組織が成功するために従業員に必要なスキルは何だと考えているのでしょうか(図6)。*1-2

図6 組織が成功するために従業員に必要なスキル
出典:デロイト(2021)「世界を変える意思表明と行動を求める声 デロイト グローバル
調査レポート」https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey.html

図中の「グローバル」とは世界45か国の同世代の人々を指します。*1-1:p.6
日本もグローバルも、「柔軟性・適応性」と答えた人が最も多く、日本は2位の「インクルーシブ」の約2倍の回答率です。
一方、グローバルと異なる傾向は、オレンジ枠の「クリエイティビティ」と「テクノロジーへの精通」で、日本はいずれもグローバルを下回っています。
このことは何を表しているのでしょうか。

図7 第4次革命に必要だと思うスキル・知識の保有状況
出典:デロイト(2020)「コロナ時代にキャリアへの不安を強める日本のミレニアル・Z世代 2020年 デロイト ミレニアル年次調査日本版」p.12
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-deloitte-millennial-survey-2020-summary.pdf

上の図7は「第4次産業革命(DXがもたらす産業革命)に必要だと思うスキル・知識が自分に備わっているか」という質問に対する回答割合を表しています。
この図をみると、日本のデジタルネイティブはグローバルに比べて否定的な回答率が高いことがわかります。

さらに、「第四次産業革命は、あなたの現在の仕事にどのような影響を与えると思うか」という質問に対する回答で「影響はない」と「わからない」を合わせると、ミレニアル世代が61%、Z世代が59%に上ります。*3:p.11
ここからみえてくるのは、世界的なビジネスの潮流や、それが自分の仕事におよぼす影響について明確な認識を抱いているとはいい難い状況です。

以上のことから、デジタルネイティブはモバイルを自在に操り、SNS系のサービスを使い分け、情報の共有・発信力によって大きな影響力をもつ世代ではあるものの、DXに対しては必ずしも前向きとはいえない姿勢をもつことが窺えます。

■企業に望むこと

最後にデジタルネイティブが企業に望むことを把握しましょう。

まず、離職意向とメンタルヘルスの関係をみます(図8)。

図8 2年以内の離職意向とストレスレベル、雇用主のメンタルヘルス対策の関係
出典:デロイト(2021)「世界を変える意思表明と行動を求める声 デロイト グローバル
「調査レポート ミレニアル・Z世代 悲観の時代で成功する鍵は『柔軟性・適応性』?」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey.html

図の左( )内のパーセンテージはそれぞれ「できれば2年以内に離職したい」と回答した人の割合を表しています。全体の平均はミレニアル世代24%、Z世代32%です。

ところが、左図のストレスレベルが高いミレニアル世代は、平均より12%(オレンジの楕円)、「雇用主がメンタルヘルス対策を効果的に実施していない」と答えたZ世代は平均より25%(同)も離職意向率が高いのです。

このようにデジタルネイティブにとっては、メンタルヘルスが就業上重要な位置づけであるという認識が必要です。

最後に、彼らは企業のウェルビーイングへの対応状況をどのように評価しているのでしょうか(図9)。
ウェルビーイングとは、一般的にWHO憲章の「健康」の定義をあてはめて「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」を指します。*6

図9 職場におけるメンタル面・ウェルビーイングに関するサポート
出典:デロイト(2021)「世界を変える意思表明と行動を求める声 デロイト グローバル
「調査レポート ミレニアル・Z世代 悲観の時代で成功する鍵は『柔軟性・適応性』?」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey.html

まず、パンデミック期間中は、日本のミレニアルの44%、Z世代の38%が「雇用主は積極的にウェルビーイングに対してサポートをしてくれなかった」と回答しています。
また、パンデミック後についても、「雇用主は身体・メンタルヘルス対策を積極的に計画していない」と回答した人がミレニアルの46%、Z世代の39%に上っています。

以上、デジタルネイティブのいくつかの特徴についてみてきました。
彼らは日常的にはデジタルリテラシーを駆使して影響力を発揮してはいるものの、DXの担い手としての即戦力が期待できるかは微妙です。
また、企業のウェルビーイング対策が企業へのロイヤリティにも影響を与えます。

採用する際にはこうした特徴を把握し、彼らを迎え入れるための方策を練ることが大切でしょう。

 

資料一覧

*1-1
デロイト(2021)「世界を変える意思表明と行動を求める声  デロイト グローバル 2021年ミレニアル・Z世代年次調査」「調査レポート ミレニアル・Z世代 悲観の時代で成功する鍵は『柔軟性・適応性』?」からダウンロード
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey.html
*1-2
デロイト(2021)「調査レポート ミレニアル・Z世代 悲観の時代で成功する鍵は『柔軟性・適応性』?」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey.html

*2
総務省統計局「平成20年10月1日現在推計人口 人口ピラミッド」
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2008np/index.html

*3
デロイト(2020)「コロナ時代にキャリアへの不安を強める日本のミレニアル・Z世代 2020年 デロイト ミレニアル年次調査日本版」
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-deloitte-millennial-survey-2020-summary.pdf

*4
総務省(2021)「令和3年版 情報通信白書のポイント」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01point.pdf

*5
総務省(2020)「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdf

*6
公益社団法人 日本WHO協会「健康の定義について」
https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/

 


プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

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