厚生労働省では、企業が魅力ある職場づくりのために、労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合を対象に、各種の助成金を設けています。
中小企業労働力確保法に基づく「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」も、労働環境の改善に役立つ助成金の一つです。
今回は、「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」を受給するために必要な手続きなどを中心に、企業が労働環境を改善するために利用できる各種の助成金を紹介します。
目次
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)とは?
「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」は、事業協同組合等が、参加の事業者の人材確保・職場定着を支援するための事業を行う場合に、必要な費用を助成する制度です。
参考:
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199317.html
●人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)の受給要件
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)の支給対象者は、以下のいずれに当てはまる「事業協同組合等」(中小企業労働力確保法2条2項)です。
会社が1社単独で助成金の受給を申請することはできないので注意しましょう。
・事業協同組合 ・事業協同小組合 ・協同組合連合会 ・その他特別の法律により設立された組合およびその連合会のうち政令で定めるもの ・中小企業者を直接または間接の構成員とする一般社団法人 |
事業協同組合等が人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)を受給するには、以下の3つのステップを経る必要があります。
①改善計画の認定 雇用管理の改善に係る計画を策定し、都道府県知事の認定を受ける必要があります。 ②実施計画の認定 ③中小企業労働力向上事業の実施 |
さらに、雇用関係助成金共通の要件等を満たすことが必要です。雇用関係助成金共通の要件等の詳細は、下記資料をご参照ください。
参考:
各雇用関係助成金に共通の要件等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000761746.pdf
●人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)による助成金額
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)による助成金額は、中小企業労働環境向上事業の実施に要した費用の3分の2です。
ただし、認定組合等の区分に応じて、1年間当たりの限度額が以下のとおり設定されています。
大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上) 1,000万円 中規模認定組合等(構成中小企業者数100以上500未満) 800万円 小規模認定組合等(構成中小企業者数100未満) 600万円 |
助成金の受給に必要な「改善計画」「実施計画」について
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)の受給を申請する際、大きなポイントとなるのが「改善計画」と「実施計画」の作成・認定です。
改善計画・実施計画を作成する際に、盛り込むべき内容は以下のとおりです。
●改善計画に盛り込むべき内容
改善計画の内容は、以下の4つを満たしている必要があります。
①以下の基本指針7項目のうち、事業協同組合等の実情に照らして、必要な項目に取り組むものであること。ただし、「募集・採用の改善」のみを選択することはできません。
(a)労働時間等の設定の改善 ②構成中小企業者の3分の1以上が、基本方針7項目のうち、「募集・採用の改善」を除くいずれかの項目について取り組むものであること。 ③改善事業の内容・実施期間(5年以内が目安)・事業実施に必要な資金額・資金調達方法が、改善事業の目標を達成するために適切であること。 ④事業協同組合等が、構成中小企業者から委託を受けて労働者の募集を行う場合は、募集を行うための体制等が整備されているものであること。 |
●実施計画に盛り込むべき内容
実施計画の期間は原則として1年間で、計画期間の開始予定日の1か月前までに、労働局長に提出する必要があります。
ただし、改善計画の計画期間の範囲内であれば1年間の延長申請が認められます。
実施計画には、以下の4つの内容を盛り込まなければなりません。
そのうち、①と④については必ず実施し、②と③については、事業実施期間内にいずれかを実施する必要があります。
①計画策定・調査事業 ・事業の実施方法に関する計画の検討、計画 ・労働環境に関する調査 ・事業成果の分析、検討 ・事業の実施前後の比較分析、厚生中小企業者の実態調査 ②安定的雇用確保事業 ③職場定着事業 ④モデル事業普及活動事業 |
助成金の申請手続きに関する相談窓口
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)の受給申請については、各都道府県労働局の窓口で相談を受け付けています。
以下の厚生労働省ウェブページから、最寄りの労働局の所在地を確認できますので、申請手続きについて不明な点があれば、各労働局の窓口へご相談ください。
参考:
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html
雇用環境改善のために利用できるその他の助成金
厚生労働省は、「中小企業団体助成コース」以外にも、人材確保等支援助成金として以下の各コースを設けています。
①雇用管理制度助成コース 手当・研修・健康づくり・メンター・短時間正社員の各雇用管理制度を導入・実施して、従業員の離職率の低下に取り組む事業主を対象とした助成金です。 ②介護福祉機器助成コース ③人事評価改善等助成コース ④雇用管理制度助成コース(建設分野) ⑤若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) ⑥作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) ⑦外国人労働者就労環境整備助成コース ⑧テレワークコース |
各コースの受給要件は、以下の厚生労働省ウェブページから確認できます。
労働環境の改善を目指す企業は、各要件をご確認のうえ、利用可能な助成金があれば積極的にご利用ください。
参考:
人材確保等支援助成金のご案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07843.html
【著者プロフィール】
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。