さまざまな業界で人手不足が深刻な課題となっている現在、アルバイトの求人には「高校生歓迎」「高校生積極採用中」など、高校生の採用ニーズを打ち出した表現なども見かけるようになりました。一方、高校生を含む未成年の採用に慣れていない雇用主もいることから、厚生労働省では労働基準法の正しい理解を呼びかけています。
労働者を保護するために定められている労働基準法は、未成年の健康及び福祉の確保などの観点から、成人と比べて就業についてはさまざまな制限が設けられています。これらを知らずに採用・雇用をおこなうと労働基準法に違反してしまうおそれがあります。今回は高校生をアルバイトに雇用することを想定して、禁止事項と注意点について解説していきます。
目次
高校生が働ける条件は? 保護規定適用の範囲について
まず労働者を雇用する時の保護規定適用の範囲について確認しましょう。労働基準法で「児童(満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者)」「年少者(満18歳に満たない者)」「未成年者(満20歳に満たない者)」「満20歳以上の者」という4つの年齢区分が定められており、高校生のほとんどが「年少者(満18歳に満たない者)」に該当します。
下記のように年齢区分によって労働者の保護規定適用の範囲が異なります。
出典:厚生労働省「高校生等を使用する事業主の皆さんへ」を加工
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040330-8a.pdf
高校生をアルバイトスタッフとして雇用する際、満18歳未満であれば「年少者」の13項目が、18歳を超えていれば「未成年者(満20歳未満)」の7項目が保護規定適用の範囲です。ただし、労働者が所属する学校によって就労自体が禁止されていたり、自治体によって高校生の深夜の就業を禁止しているところもありますので、法律以外もチェックが必要です。
学生アルバイトスタッフの労働基準関係法令に違反する事項
次に、厚生労働省が学生アルバイトスタッフの労働条件の確保のために自主点検を呼び掛けている事項について紹介します。学生を対象とした意識等調査(*1)において、労働基準関係法令違反のおそれがあるという回答がみられた箇所に注目していきます。自社の雇用状況と照らし合わせてみましょう。
■ 労働条件の明示
・労働契約締結時に賃金や労働時間などの労働条件を記載した書面を交付する(労働基準法第15条)
■ 就業規則
・常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署長へ届け出る(労働基準法第89条、第90条)
■ 労働時間
・所定の労働時間は、法定労働時間の原則に則り週40時間1日8時間以内に設定する(労働基準法第32条)
(※商業や接客娯楽業などの業種のうち、常時10人未満の労働者を使用する事業場は週44時間以内)
・年少者は「深夜業の制限」があるため、午後10時から午前5時までの労働は禁止(労働基準法第61条)
・法定労働時間を超えて労働させる場合、時間外労働・休日労働に関する協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出る(労働基準法第36条)
■ 休憩・休日・年次有給休暇
・1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を労働時間の途中に与える(労働基準法第34条)
・少なくとも週1日、または4週に4日以上の休日を与える(労働基準法第35条)
・勤務日数に応じて年次有給休暇を付与する(労働基準法第39条)
■ 賃金
・賃金は毎月決まった支払日に全額を支払う(労働基準法第24条)
・給与を支払う者は、給与の支払いを受ける者に支払明細書を交付する(所得税法231条)
・都道府県ごとに定められている最低賃金以上の額を支払う(最低賃金法第14条)
・規律違反やミスをしたことを理由に、就業規則に記載なく罰金などを科さない(労働基準法第91条)
■ 割増賃金
・週40時間、1日8時間を超えた時間外労働及び深夜労働については、通常の賃金の25%以上、休日労働については35%以上の割増賃金を支払う(労働基準法第37条)
■ 解雇、退職
・解雇する場合、少なくとも30日前に通告するか、30日以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を支払う(労働基準法第20条)
*1:厚生労働省「大学生等へのアルバイトに関する意識等調査結果概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000103575.pdf
退職希望の拒否や一方的なシフトはNG! 学業とアルバイトの両立に配慮しよう
学生の本文は学業であり、雇用主はアルバイトスタッフが学業と仕事の両立ができるよう雇用主には配慮が求められます。ここでは特に配慮が必要な「退職」と「シフト」に関する留意点を解説します。
まず「退職」に関する留意点として、契約期間を定めずに労働契約を締結しているとき、原則として労働者はいつでも退職を申し入れることができます。この場合、退職の申し入れから2週間経つと労働契約が終了します。(民法第627条第1項)現場の人手不足を理由に退職を拒否してはいけません。
「シフト」に関して、労働者の同意を得ずに一方的にシフトを決定・変更してはいけません。「労働条件の明示」で義務付けられているように、勤務日や勤務時間は労働条件通知書などによりあらかじめ労働者に通知する必要があり、採用時に合意した労働条件を変更する場合には事前に労働者の同意が必要です。また、雇用主の都合で労働時間の全部または一部を休業させた場合には、労働者に対して平均賃金の6割以上の休業手当を支払います。(労働基準法第26条)
そして上記2つのポイントに加えて、高校生は試験の準備期間、試験期間中はとくにシフト設定に配慮が必要です。労働者本人の意向をしっかりヒアリングすることが重要です。
まとめ
労働基準法は雇用主と労働者がそれぞれ遵守しなければいけませんが、まず雇用主側の理解が大切です。マイナビが2019年11月に発表した「高校生のアルバイト調査」(*1)によると、アルバイトを始める際の不安要素は「学業と両立できるか」が最も選ばれていることから、高校生を雇用する際に一番配慮すべきポイントと言えるでしょう。
超高齢社会となっている日本では、生産年齢人口比率が1995年をピークに減少しており、今後さらにペースが加速する見込みです。(*2)学生のアルバイトスタッフはこれまで以上に重要な戦力となり、採用の間口を広げる重要性は増していきます。法律の理解と労働者への配慮がおろそかにならないように気を付けましょう。
*1:ナレビ「高校生のアルバイト調査」https://nalevi.mynavi.jp/download/7913/
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