人材育成・マネジメント
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従業員のやる気を引き出そう!効果的で意味のあるマニュアル作成法とは

雇う人が増えてきたり、人員の入れ替わりが激しいと、仕事を教える手間を少しでも省けるようにマニュアルを準備しようと考える担当者も多くなってきます。
アルバイトの人も、マニュアルがあった方が安心して働けます。

誰もが安心して生き生きと働ける職場にするために、マニュアルはどうあるべきなのでしょうか。

目次

マニュアルに対する認識

マニュアル作りで気をつけたい安全管理に対する考え方

作業の意味をちゃんと理解できるようにする

顧客満足につながるマニュアルにするには

マニュアルに対する認識

従業員教育や現場作業の効率化のためにマニュアルの導入を思い立っても、周囲から反対されてしまうこともあるでしょう。
内容が多くなってしまうと覚えきれなくなったり、読むのを面倒くさがる人が出てくるという問題点もあります。
また、接客のような柔軟性が求められる業務においては、作業内容を画一化するのは難しいものです。

マニュアルとは、本当に分厚くて柔軟性に欠けるものなのでしょうか。

欧米では、マニュアルには「最低限守ること」が記されていると捉えられています。
そのうえで、何をするのかは個人に委ねられています。
一方、日本ではマニュアルは「けっして外れてはいけないもので、すべてその通りに実施すべきこと」が書かれていると理解されています。*1

これを見ると、日本よりも欧米の方が、仕事の進め方に柔軟性があるということが分かります。

このような違いが生じる背景には、どういった文化の違いがあるのでしょうか。

欧米では、マニュアルにおいて方向づけを行うというやり方が一般的です。
そのようにすることで、個人が自分に合うようなやり方で仕事を進めても、仕事の目的から大きくずれた方向にいってしまうのを防いでいます。

一方日本では、管理することに重点が置かれており、内容を細かく定めることで誰がやっても同じようにできるようにするというようになっています。
そのため、細かく書かれたマニュアルほど、良いマニュアルだと考えられています。

日本においてマニュアルに対してネガティブな感情が出やすい背景には、柔軟性の無さや細かすぎる決まりがあります。
裁量権を与えずに、細かく決めたルールに従って機械的に働いてもらうということだけでは、やる気や自発性は出てこなくなってしまいます。
あまりにも監視まがいの管理になってしまっては、職場の雰囲気も悪くなってしまいかねません。
やる気や自主性を引き出すためには、欧米のマニュアルの在り方を参考に、意識を変えていく必要があります。

 

マニュアル作りで気をつけたい安全管理に対する考え方

仕事の進め方については、細かいところまで規定してしまうとやる気を削いでしまうため、望ましくありません。
それに対して、安全管理に関わるものについては細かいところまで検討し、いざというときに被害を最小限に抑えられるようにしておく必要があります。
飲食店であれば、消防や食品衛生に関するマニュアルは、特に重要になってきます。

安全管理に関するマニュアルについては、欧米ではどのようになっているのでしょうか。

命や安全に関わるものについては、個人の自由な裁量に任せるというわけにはいきません。
米国や豪州のような多民族国家は、人種や価値観、宗教が多様です。
そのため、このような国においては、個人の責任・役割・業務内容を細かく規定し、その遵守を求めることにより安全を確保する「形式知」による手法が有効であるとされています。*2

一方、日本においては、徒弟制度の中で、先輩の背中を見て仕事のやり方を覚えるという「暗黙知」によるノウハウの伝達が行われてきました。
安全管理のやり方についても同様です。

しかし今や多くの企業においては、職場でのコミュニケーション密度は低下し、価値観の多様化、外国人労働者の受け入れなどへの対応が迫られています。

そうなってくると、日本の「暗黙知」型の安全管理では限界が出てきます。
必要な知識やノウハウの共有がうまく行われずに、トラブルにつながってしまう危険性もあります。

価値観が多様化し、外国人労働者を受け入れることも多くなってきている現代においては、「形式知」型の安全管理が必要になってきていると言えるでしょう。

作業の意味をちゃんと理解できるようにする

マニュアルに書かれてあることをそのまま実行させるというだけでは、従業員の自主性ややる気を引き出すのは、なかなか難しいものです。

そこで注目したいのが、「ワーク・エンゲイジメント」と呼ばれるものです。

「ワーク・エンゲイジメント」は、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らが提唱した概念であり、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義されています。
ワーク・エンゲイジメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあるとされています。*3

それでは、このワーク・エンゲイジメントを高められるようなマニュアルとするには、どうすればいいのでしょうか。

以下に示すのは、日常業務に対する上司からのフィードバックに関して効果的であったものについて、その理由をまとめたものです。

引用)厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」P237
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

これを見ると、フィードバックは、具体的な行動について行うことと、行動した直後に行うことが重要であることが読み取れます。

マニュアル作りで大事になってくるのが、「今後の行動に関するアドバイスがあった」と「行動した内容の重要性や意義についての説明があった」の二点です。

仕事の具体的な進め方に関しては、人によってやりやすい方法というのは異なってきます。
そのため、マニュアルにやり方を細かく規定するのではなく、個人に合わせて上司から「どうすればもっと上手くできるようになるのか」のアドバイスを、その都度個別にフィードバックするようにした方がいいでしょう。

また、作業の重要性や意義について理解できるようにするということも大事です。

重要性や意義については、個人間でばらつくというものではなく、従業員間でシェアされるべきものです。
そのため、フィードバックの中で言って聞かせるだけでなく、マニュアルにも記載して従業員間でシェアされるように徹底した方がいいと言えます。

このように、マニュアルを通して作業の概要やその重要性、意義を理解させて進むべき方向を示し、日常業務で上司がコーチ役となりながら後押しすることが大事です。
細かい部分に関しては個別にサポートしていくことで、従業員が自発的に動ける環境が整い、やる気を引き出しやすくなります。

 

顧客満足につながるマニュアルにするには

マニュアルに対するネガティブな意見として、サービスが画一的、機械的になり過ぎてしまい、顧客満足度が低下するのではないか、ということがあります。

これに対して、ワーク・エンゲイジメントを上げられるように意識して作られたマニュアルにおいては、顧客満足度はどうなると考えられるのでしょうか。

以下に示すのは、ワーク・エンゲイジメントの高さと企業の顧客満足度に対する認識の関係を示したグラフです。

引用)厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」P202
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

これを見ると、ワーク・エンゲイジメントが高くなると、顧客満足度も上昇しているということが分かります。

このことからワーク・エンゲイジメントが高い状態、つまり、従業員に活力、熱意、没頭感が揃った状態を引き出せるようにすれば、顧客満足度を上げることができるということになります。

あまりにも細かくまとめられ過ぎたマニュアルでは、縛りつけ過ぎてしまい、高い活力を生み出せません。
また、マニュアルが全くないため方向性がつかめずに何となく作業しているという状態では、熱意や没頭感といったものは出てこないものです。

従来の、先輩の背中を見ながら仕事を覚えるという「暗黙知」型のやり方や、細かく決まりを作ってその通りにやらせるという管理重視のやり方では、もう時代に合わなくなってきています。

価値観の多様化やグローバル化への対応のためにも、マニュアルの在り方について、一度見直されてみてはいかがでしょうか。

*1 参考)「人事のためのジョブ・クラフティング入門」川上真史、種市康太郎、齋藤亮三著、P71

*2 参考)「日本と欧米における安全文化の比較」小山工業高等専門学校研究紀要、P18
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oyama/48/0/48_17/_pdf

*3 参考)厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」、P171,172
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

 


【著者プロフィール】

 

 

黒田貴晴
キャリア系マーケター、心理カウンセラー
脳科学や心理学に強いマーケターとして、主にキャリアに関する分野で活動しているほか、心理カウンセラーとしても、コミュニケーションに問題を抱えた方へのサポートも行っています。就職・転職系のメディアやビジネス心理学のメディアでの執筆実績多数

 

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