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履歴書は手書き?性別欄はどうする?経産省・厚労省の指針を基に最新事情を把握しよう

アルバイト募集に応募するとき履歴書をどう書けばいいのか、あるいは応募者の履歴書から何を読み取ればいいのか―そう悩む方は多いのではないでしょうか。
履歴書をめぐっては最近大きな動きがあり、それを受けて履歴書の活用や採用活動にも大きな変化が訪れようとしています。
これを機会に悩みの種だった履歴書を見直し真摯に向き合ってみることで、思いがけず新たな気づきが得られるかもしれません。

 

履歴書の基本

そもそも履歴書とは何でしょうか。
そんなこと分かりきっている、考えるまでもないと思われるかもしれませんが、もう一度、基本から考えてみましょう。

~履歴書の機能~
仕事の応募に関して履歴書を書くのはなぜでしょうか。
応募者がどのような人か採用担当者に伝えるため?
実はそうとも言い切れません。

厚生労働省による「公平な採用選考を行うポイント」には、以下の2点が挙げられています *1:p.2。

1.応募者に広く門戸を開く
特定の国や地域の出身者、難病のある人、LGBT等の性的マイノリティなどの特定の人を除外せず、求人条件に合致する全ての人が応募できるようにしましょう。

2.本人のもつ適性・能力のみを基準にして選考する
応募してきた人が「求人職種の職務を遂行するにあたり、必要となる適性や能力をもっているか」ということのみを基準にして採用選考を行いましょう。
「本人に責任のない事項」や「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」はそもそも本人の適性・能力とは関係のないことです。

以上の観点から、採用選考にあたって次のような個人情報を収集することは認められていません。

・家族の職業、収入、本人の資産などの情報
・容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報
・人生観・生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌・愛読書
・労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報

したがって、履歴書とは、「応募者がどのような人か」を伝えるものではなく、「応募者が求人職種
の職務を遂行するにあたり、必要となる適性や能力をもっているか」を判断するために必要な情報のみを提供するものです。
採用担当者はそれ以上の情報を提供するように求めてはなりませんし、応募者もそれ以外の情報を提供する必要はありません。
そのことをまず押さえておきましょう。

~履歴書の基準~
以上のように考えると、記入事項と連動している履歴書の様式は重要です。
厚生労働省は、応募用紙について次のように呼びかけています *2。

・新規中卒者・高卒者・大卒者以外は、「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」を用いること
・事業主が独自に応募用紙の項目・様式を設定する場合は、適性と能力に関係のない事項を含めないこと

 

 履歴書の最新事情:「性別欄・写真貼付欄」廃止の動き

最近、履歴書の性別欄や写真貼付欄を廃止する動きが広がってきています。
そこで、ここでは履歴書をめぐる最新動向をみていきます。

~大手企業から始まった動き~
こうした動きは企業から始まりました。

一部の大手企業は、数年前からエントリーシートの様式を変更しています。
例えば、ソニーは性別欄に「その他」を設けて、回答自体も任意としています *3。

ユニリーバ・ジャパンのブランド『LUX』は、2020年1月に「採用における、無意識に生じる性別への先入観の調査」を実施しました *4。
対象は採用において書類審査を担当することのある会社員および会社経営者です。
調査の結果、「従業員の採用過程において、男性と女性が平等に扱われていない」と答えた人の割合は26.6%(図1)、「写真の写り方の印象が採用の有無に影響する」と答えた人の割合は44%に上りました。

図1 「従業員の採用過程において男性と女性が平等に扱われているか」に対する回答
出典:*4 LUX「LUX Social Damege Care Project 「『採用における、無意識に生じる性別への先入観の調査』結果」
https://www.lux.co.jp/campaign/lux_socialdamagecare/cv/index.php

そこで、同社は2020年度の採用活動から、全ての採用選考の過程で、顔写真の提出や応募者への性別に関する一切の項目を排除し *4、名前からも性別が推測できないように名字だけを記載する様式にしました(図2) *5。

図2 ユニリーバ・ジャパンの新しい履歴書のイメージ
出典:*5 ユニリーバ(2020)「「LUX Social Damage Care Project」始動 採用選考において履歴書から顔写真の提出と性別の記入が不要に」
https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2020/lux-social-damage-care-project.html

~性的マイノリティの問題~
性的マイノリティへの支援活動もこうした動きを促進しました *5。

トランスジェンダー、つまり、戸籍上の性と本人が自認する性とが一致しない人々は、就職活動で性別欄の記載と服装が一致しない場合があります。
そういう人々にとっては、性別の記載が必須の履歴書は大きなハードルとなります。
就職活動団体の調査では、就職活動をしたことがあるトランスジェンダーの9割が「履歴書に性別記載があって困った」と答えています *3。

2020年7月に、LGBTの労働支援を行う団体から、厚生労働省、経済産業省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われました。こうした要請を受け、2020年7月、日本規格協会はそれまで公開していた履歴書の「様式例」を削除しました。
先にみたように、この「様式例」は厚生労働省が新規卒業者以外の応募者に推奨していたもので、市販の履歴書の参考にもされていました。*6:p.1、*7。
同協会はその削除理由を以下のように記しています *8。

公務員試験、高校入試などでは性別欄をなくす動きが全国的に広がりつつある中、引き続き掲載することによって、JIS で規定されている、何らかの方向付けをしているなどの誤解を招きかねない。このことから、削除することにした。

履歴書から性別欄などを削除する動きは、このように社会の一連の流れの中で生じました。

~新しい流れ~

上述のように、日本規格協会による履歴書の「様式例」が削除されたため、今後、公正な採用選考を進める上で参考となる新たな様式が必要となりました。
そこで、厚労省は新たな様式を定め、2021年4月16日に公表しました。
変更点は以下の2点です *6:p.1。

性別欄を「男・女」の選択ではなく任意記載欄に変更。 未記載とすることも可能とする。
「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄を様式内に設けない(各欄を削除する)こととする。

図3 厚生労働省の新たな履歴書様式例
出典:*6 厚生労働省(2021)「履歴書の様式例の作成について」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000769679.pdf

この新たな様式例には写真欄がありますが、「写真をはる必要がある場合」と記されています。

ただし、この様式には法的拘束力がなく、どのような様式を使用するかの判断は個別の企業に任されています *6:p.1。

文具大手のコクヨは日本規格協会の「様式例」削除を受け、既に2020年12月から従来のラインアップに新たに性別欄のない履歴書を加えています *8。
多様な個性の尊重を求める声が高まる中、性別の開示を希望しない人々のためのニーズに応え、選択肢を増やすことがその目的ですが、今後はさらに、厚生労働省が定めた新たな様式の履歴書が市販されるものと思われます。

こうした状況から、性別欄の廃止は、今後、普及していく可能性があります。

 

手書きかパソコンによる作成か

履歴書をめぐっては、手書きかパソコンによる作成かに関する悩みもあります。
企業によってはどちらかを指定する場合もありますが、そうした指示がない場合には、どちらにするか応募者が選択しなければなりません。

ただ、この件に関しては、採用担当者によっても業界・職種によってもメリット・デメリットが食い違う可能性があり、一概にどちらがいいとは言い切れません。

まず、手書きの場合から考えてみましょう。
担当者によっては、手書きの履歴書から人柄や応募意欲を感じるという意見があります。
字がきれいなら、あるいは丁寧に書かれていると思われるものなら、いい印象を与えるかもしれませんし、逆に字形が乱れていたり雑に書かれた印象を与えるものならマイナス評価につながるかもしれません。

また、履歴書を手書きする場合には、手間暇がかかりますし、誤って記入した場合には原則としてすべて書き直さなければなりませんから、非効率的です。
スタートアップやベンチャー、IT関連の企業であれば、「今どき手書きか」と捉えられるおそれもあります。

では、パソコンで作成した場合はどうでしょうか。
パソコンで作成した履歴書は、手書きに比べて文字が読みやすく、作成も効率的にできるというメリットがあります。
ただ、その反面、「履歴書は手書きが当然」という価値観にこだわっている採用担当者はいい印象をもたないかもしれません。

では、履歴書をめぐるこうした問題をどう捉え、どのような選択をしたらいいのでしょうか。

 

履歴書をめぐる問題をどう捉えるか

これまでみてきたように、履歴書をめぐっては、現在2つの基準による選択の問題があります。
1つは、履歴書の様式に関する問題。
もう1つは、手書きかパソコンによる作成かの記載手段に関する選択です。

これら2つの基準とも、どのような選択をしてもメリットとデメリットがあり、どちらがいいとは一概に言い切れないのが悩ましいところです。
これから、採用担当者と応募者に分けてこの問題について考えてみたいと思います。

~採用担当者の選択~
採用担当者がこの2つの問題に関して応募者に示す方向性は、履歴書の選択、記載手段の選択とも、次の3通りが考えられます。

1.いうれかひとつを指定する
2.どちらでもいいと明示する
3.特に指定も明示もせずに応募者の判断に任せる

まず、上のどの場合にしても、なぜそうするのかを担当者間でよく話し合った上で決める必要があります。
これまでは3が多かったかもしれませんが、現在のような状況では、結果的に3にする場合にも、なぜそのような方向性にするのか考えるプロセスを経て、決める必要があるでしょう。

募集後、1の場合には応募者を同じ基準で評価することができます。
一方、2と3の場合には、応募者に複数の選択肢を与えることになりますから、その結果、応募者の選択が分かれる可能性があり、その違いを排除して公平に選考する必要があります。

「どうしてそちらを選択したのか」と応募者に問えば、その答えから応募者の適性や能力が測れる場合もあるでしょう。

~応募者の選択~
次に応募者の立場から考えてみましょう。
問題は選択を任された場合です。

まず、履歴書の選択はどのように考えるべきでしょうか。
それには、いくつか考えるべき観点があると考えます。

第1に、自分自身が性別を考慮せずに選考してもらいたいかどうか。

次に、自分自身の希望とは別に、性別を考慮しない採用選考を支持し、それに協力する意志があるかどうか。
なぜなら、性別欄を廃止した新たな様式の履歴書を選ぶ人が増えれば、そうした方向性が促進されるという社会的な側面があるからです。

最後に、自分の選択、言い換えれば自分の意思表示を採用担当者がどう受け止めるのか。
そして、その予測に対して、自分はどのように考えるのか。
採用担当者にどう思われても自分の正直な気持ちで選択するのか、あるいは採用担当者の望みそうな方、無難な方を選択するのかという問題です。

手書きにするかどうかも、何をメリットあるいはデメリットと捉えるかによって、導き出される答えは異なるでしょう。

こうした問いに答えを見出していくのは難しいことですが、それは応募者が考えるべきことです。

こう考えてくると、履歴書に真摯に向き合うことは、どのような応募者でありたいのか、あるいは採用者でありたいのかを突きつめて考えることにつながるといっていいでしょう。
現在はそのような時代であることを認識し、履歴書をめぐる問題についてじっくり考える姿勢が大切ではないでしょうか。

 

*1
厚生労働省(2020)「事業主啓発リーフレット:あなたの会社は大丈夫? 人権に配慮した公正な採用選考ができているかチェックしてみましょう」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/dl/saiyo-03.pdf
*2
厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
*3
読売新聞オンライン(2021)「性別欄ない履歴書…トランスジェンダーらの要望で登場」(2021年1月18日)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20210118-OYO1T50009/
*4
LUX「LUX Social Damege Care Project 「『採用における、無意識に生じる性別への先入観の調査』結果」
https://www.lux.co.jp/campaign/lux_socialdamagecare/cv/index.php
*5
ユニリーバ(2020)「「LUX Social Damage Care Project」始動 採用選考において履歴書から顔写真の提出と性別の記入が不要に」(2020年3月6日)
https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2020/lux-social-damage-care-project.html
*6
厚生労働省(2021)「履歴書の様式例の作成について」(2021年4月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000769679.pdf
*7
一般財団法人日本規格協会「帳票の設計基準 備考:解説が改訂されています」
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Z+8303%3A2008
https://webdesk.jsa.or.jp/
*8
コクヨ(2020)「性別欄のない履歴書を発売 多様な個性の尊重を求めるお客様の声に対応」(2020年12月21日)
https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category/20201221st.html

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 






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